|
荒木一成さん 恐竜造形師
1961年大阪府生まれ。 |
恐竜復元の歴史を遡る Vol.1 Dinosaur Oldies
今回フェバリットコレクションとのコラボレートで、1950年代のティラノサウルスとイグアノドンの立体復元が実現することになった。原型制作を担当した荒木一成氏に、Dinosaur Oldiesについて尋ねてみた。
- ティラノサウルス 50'sとイグアノドン 50'sが姿を現したわけですが、ノスタルジーを感じる反面、何かこう新しい印象もありますね。
-
私たちが今日目にする恐竜の復元画や復元模型は、新しい化石の発見や研究によって、描かれ、作られたものです。
しかし、その礎になったものには、まさしく過去の画家たちが描いた、かつての恐竜像があったことは間違いありません。
いった画家たちが、当時、考えられる限りに再現した恐竜やその世界に影響を受けなかった人はひとりもいないでしょう。
そして、改めてその復元を見ると、現在の洗練された恐竜には無い、生々しさや恐ろしさに満ちあふれ、未知の生命を再現しようとした画家のエネルギーまでも伝わってきます。
その魅力を立体模型という形で伝えたい!!
かつての復元画で恐竜に目覚めた人には懐かしさと再認識、全く知らない若い世代には古きを知る新たな発見を、このシリーズで感じていただけたらと思います。 -
荒木さんが恐竜の世界に入っていかれたのは小学校時代で、直接的なきっかけは、少年誌のグラビアだったと聞いています。
Dinosaur Oldiesのような恐竜だったのでしょうか……。 -
私はN・パーカーやZ・ブリアンの絵で恐竜に目覚めました。
私が子供の頃に見た、N・パーカーやZ・ブリアンの絵が載っていた少年誌は、1969年〜1970年に載っていたものだったと思います。
1976年の少年マガジン30号にはN・パーカーのイラストがカラーで掲載されています。考えてみると1976年って30年もたっていないのですね。
「ティラノサウルス 50's」は確かにN・パーカーのイラストを基本にしています。
イラストは一方向なので、仁王立ちしているような印象を受けますが、しかしよくイラストを確認していくとブリアンのイラストと同じように前傾姿勢をとっていたようです。
これは当時のティラノサウルスの骨格展示を基本にしていたからでしょう。 凶暴な顔付きは、まさに悪役ティラノの面目躍如です。
残念なのは、稚拙なイラストレーターのコピーが繰り返されてきたおかげで、どんどん不細工に変えられてしまいましたが……。 - 「イグアノドン 50's」は?
-
ティラノサウルス50'sもイグアノドン50'sも平面である復元画をディテールにこだわりながら、見えていない部分をどう作り込んでゆくかはとても難しい作業のように思うのですが……。
過去の復元画がどんどんヘンテコに改ざんされていった原因が、実はそこにあると思います。C・ナイトもN・パーカー、Z・ブリアンもちゃんと見えない部分、つまり骨格を見て、復元画を描いているんです。
ティラノサウルスの頭骨はどんな形状をしているか、理解した上で、側面や下から見上げた方向で描いている。
ところが、巷に溢れた、ヘンテコな模造イラストは、オリジナル、あるいはオリジナルのコピー、そのまたコピーのコピーという、一番肝心な頭骨の形や骨格を無視したまま描き続けられました。
結果、幅の広いカエルやゴリラの様な顔のティラノが氾濫し、その批判が、罪もないオリジナルにまで及びました。
この失敗は私自身も初期の模型で犯しています。ですから、今回のシリーズで一番気をつけたのは、かつての先達たちが、その復元画を描く時に、思い描いていたであろう、その恐竜を様々な方向から見た姿を想像することでした。もちろん、基本となる骨格を考慮してです。
もともと、先達たちが描いたオリジナルの復元画は科学的に恐竜の姿を再現したものですから、立体化はしやすいです。ただ2次元のイラストを3次元に立体化する過程で、復元画を描いた画家と同程度以上の化石や骨格に関する知識持っていないと、先述のへんな失敗を犯すことになるでしょう。 - 音楽の分野で50's(フィフティーズ)といえば何となくそのサウンドをイメージできるのですが、恐竜にとって50'sはどんな時代なのでしよう?
-
50'と言われても、私はまだ生まれておりませんので(笑)。しかし、私が思うに、当時の恐竜復元の状況は、現在とよく似ていたのではないでしょうか。つまり、恐竜と言う未知の絶滅動物の化石が最初に発見され180年、そしてアメリカでティラノサウルスが発見され100年。
おそらく、この史上最大の肉食動物がアメリカで発見されたことがその後のT-REXを特別な恐竜にしたのでしょう。
この史上最大の肉食動物の科学的な復元画を、H・オズボーンの骨格復元を元に、C・ナイトが1920年代に描いた有名な復元画の数々を見た若い世代が影響を受け、その後の恐竜の後継者、つまり、1950年代に活躍する、N・パーカー、Z・ブリアンを育てたのではないでしょうか。
そして、1980年代のR・バッカー、G・ポールはその直系でしょう。日本では少しタイムラグがあり、先のN・パーカー、Z・ブリアンの恐竜画が1960〜70年代に紹介されました。私などはその(少し遅れた)模倣者です。
そして今、2000年代は復元画、復元模型というワクを越え、「ジュラシックパーク」 など、映像で恐竜の姿が見ることができるようになりました。
その意味では、恐竜に関しては、私はいつも、その時々の「古き良き時代」と感じます。 - 恐竜発見の歴史もワクワクしますが、恐竜復元の歴史というのも面白そうですね。「Dinosaur Oldies by 荒木一成」シリーズは恐竜復元の歴史をコレクションするものと言えるかもしれませんね。
-
確かに、恐竜の復元の変遷に関しては一冊、本が必要でしょうね。
時間さえあれば、是非私がやってみたい分野です。
化石の研究という最新の科学を駆使した恐竜の復元は、日々更新されます。
それとは別に恐竜を描く、作るという作業は、たまたまその研究の節目に出くわした、その時々の学説を作家が具現化したものです。
その復元は時代を経るにつれ、古い、間違ったと言う評価を受けてきました。
しかし、今回あらためて、オールディーズの原型を作る機会を与えられ、実は過去の先達たちが、いかに恐竜という動物を「再現」しようとしていたか、またそれが、当時の実に理にかなったものであったか思い知らされました。
これからも、私は私の恐竜を作っていきますが、今回のオールディーズでの経験は、ともすれば忘れてしまいがちな、私の恐竜原体験をはっきり意識する機会になると思います。
(インタビュー:フェバリット編集部)
















