Vol.18 秘宝館の全貌〜其の拾弐 青春ジオラマ編番外
去年の10月末、リニューアルの為閉鎖を数日後に控えた上野の科学博物館本館に、長年慣れ親しんだ本館の恐竜達に別れを告げに行って参りました。世界一格好良い復元では…と密かに思っているタルボサウルスも見納め、そして普段は軽く流してしまう恐竜展示室の恐竜達は私が子供の頃から鎮座している物も多く、念入りにお別れしました。幼年期の記憶を奪われる様な、やりきれない気持ちになりつつも「始祖鳥を追うオルニトレステス」だったら我が家にも飾れるな放出しないかなと妄想したり。
そして…何十年も通っているのに背景画を殆ど見ていなかった事実に気付き愕然としました。何が描かれているのかまるで覚えていなかったのです。最後の最後になって、白亜紀の風景は樹の陰が長く伸びていて夕刻の設定で、恐竜時代の黄昏を表現しているのだという大発見をしました。
と、長い前振りになってしまいましたが、前回の続き、背景画のお話です。この絵は当初から計画していた訳ではなく、ジオラマ完成の時点で思い立って行き当たりばったりに描いた物。参考にした絵があるではなくインスピレーションだけで描いたにしては良くまとまっているかなと。という以前に、小学校以来まともな絵など描いた事が無く、筆を持つのは模型を塗る時のみという人間の作品としては奇跡に近いのではないかと思います。当時のアイドルLPなどを聞きながらいい気分で描いていたのを思い出します(写真1)。
この項の最後に珍しいジオラマキットを紹介しましょう。ジオラマ模型と言えば古くはオーロラ社のプレヒストリック・シーン・シリーズ(Vol.10 秘宝館の全貌〜其の四)、最新ではフェバリットコレクションにも加えられていますが、ここで紹介する物はなかなかユニークです。
写真2は1977年にライフライクというメーカーが出したプラモデルで、稚拙この上ない出来ですが、おまけとして当時の植物や小動物(良く見ると木登りヒプシロフォドンがいます)がモデル化されているのが楽しいです。他にティラノとステゴサウルスの計3種類が、それぞれ別の植物、小動物、それに猿人・原人付きで売られていました。
写真3はアメリカのガレージキットメーカー「ルナモデルズ」から出ている物で、ブリアン、ナイト、ザリンガー等の名画を3D化したシリーズのひとつ、私の恐竜人生の発端となったブリアンの画集からのティラノサウルスvsトラコドンです。
写真4は1976年にADDARというメーカーから発売されたボトルシップならぬボトル恐竜シーン組み立てキットです。まだ作っていません。この様な貴重なキットを組むのは、マニアとしてはなかなか勇気がいる事です。
田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。