Birth of Tyrannosaurus Master Craft Edition
Vol.1
ティラノサウルス
" マスタークラフト エディション "

ダイナソービニールモデルシリーズは、今やフェバリットの代名詞とも言えるモデルとなり、多くの方に親しまれています。恐竜の特徴をしっかりと表現しつつもデフォルメしたデザインと、柔らかな素材を使用したビックスケールのフィギュアは、お子様がたくさん遊び、もっともっと恐竜を好きになっていただけるきっかけになればと願っています。
その中でもティラノサウルスは、ビニールモデルシリーズの販売当初からラインナップしているロングセラーモデルです。長年親しまれてきたティラノサウルスを「新しいコンセプトの下、現在の技術で進化させるとどんな姿になるのだろうか」と、フェバリットではその姿を日々思い描くようになりました。これまでのビニールモデルにはない新しい要素を模索していき、「よりリアリティーのある表現」「2本脚で自立できること」を具現化したいと開発が始まりました。
ビニールモデルの世界観のなかで、本格的な要素が盛り込まれることとなった新しいティラノサウルスは、マスタークラフトエディションと名付けられ、通常のビニールモデル、ベビーエディション、プレミアムエディションに続き、新たにラインナップされます。
フェバリットの想いを、恐竜造形師・荒木一成氏に託し、荒木氏が今考えるティラノサウルス像に落とし込まれていきます。荒木氏によって描かれるイメージから開発がスタートしたマスタークラフトエディション。記事は隔週で更新されますので、完成までの道のりをお楽しみください。
Vol.2
命が吹き込まれていくティラノサウルス
荒木氏が描いたスケッチによって、イメージがカタチになり始めたティラノサウルス。
ここから、いよいよ平面から立体での表現に移り変わり、より鮮明にティラノサウルスを実体化していきます。荒木氏の手により作られていく様子を少し覗いてみましょう。
まず、スケッチを元に、石膏粘土を使ってティラノサウルスの大まかなポーズやバランスの核となる部分を作ります。
少しづつ肉付けされ、全体のバランスが整えられていきます。頭部の表情も現れ始めました。
筋肉の表現や皮膚のディテールが作り込まれ、命が吹き込まれていきます。
最後に、指先や爪などの細かな部分も整えられ、プロトタイプが完成しました。コンセプトの「よりリアリティーのある表現」「2本脚で自立できること」が見事に造形に反映され、マスタークラフトエディションに相応しい"かっこいい"ティラノサウルスが出来上がりました。
Vol.3
プロトタイプから1/1モデルへ
今回のプロトタイプの造形には、近年のティラノサウルスの復元イメージが採用されており、頭部のウロコのディテール、太い首や口周りの表現など、見どころ豊富なティラノサウルスに仕上がっています。

完成したプロトタイプを3Dスキャンし、データ化します。3Dデータ上で、ハンドクラフトでは 造形しきれない部分の微調整を行い、より高い精度で荒木氏のイメージを表現することを目指しています。
調整された3Dデータを使用して、樹脂製のサンプルを3Dプリンターで作成します。金型の分割部分や、後脚のみで自立可能となるためのバランス感や安定性を確認しながら、金型の作成を進めていきます。
金型完成後に、出来上がったサンプルです。ボリューム感と共に、全体のディテールもはっきりと確認することができます。また、安定した姿勢は、本モデル最大の特徴でもある尾を使わず2脚で自立可能となっています。
次は荒木氏によるカラーパターンを元に、彩色イメージを確定させていきます。製品サンプルに塗装した姿は、どのようなイメージとなるのでしょうか。
Vol.4
完成したティラノサウルス

製品サンプルに塗装を施し、ティラノサウルス ビニールモデル マスタークラフト エディションの完成した姿が現れました。数パターンのカラーイメージの中から、ティラノサウルスらしさを感じられるカラーリングが採用され、アクティブな黄色を基調としながら、深みもしっかりと現れています。リアルでかっこいいティラノサウルスの誕生です。

尾を使わず2脚で自立する構造となったことで、これまでのビニールモデルとは一線を画す、本格的で洗練されたスタイルが実現しました。さらに、細部にまでこだわったディテールと、近年の復元イメージを取り入れた造形が融合することで、恐竜ビニールモデルにおける表現の幅がより広がっていきました。

今回のマスタークラフトエディションで進化を遂げたティラノサウルスビニールモデル。遊びを通じて子どもたちの好奇心や探究心を刺激し、恐竜とともに過ごす時間がもっと特別なものになりますように——そんな願いを込めてお届けします。
発売時期:2025年7月中旬以降
Vol.5
マスタークラフトエディション インタビュー

開発を共に進めてきた、総合監修者・荒木一成氏にティラノサウルス ビニールモデル マスタークラフトエディションについて伺いました。
――ダイナソービニールモデル マスタークラフトエディションは、荒木氏制作のプロトタイプの再現性を高めるための従来の手法に加え、3Dデータ上でより細部にわたる調整を行うという新たな制作方式を取り入れました。精度を高め、より忠実に荒木氏のイメージを表現することを目指して開発してまいりましたが、実際に完成した商品をご覧になったご感想をぜひお聞かせください。
今回のモデルは私の原型をデジタルスキャンし、データ調整することで、ほぼそのまま大きく再現でき、原型ではゆがんでいた箇所を修正して、より精度を上げて造形されていますね。また、これまではビニールモデルの素材の関係で、尻尾を付けた三点支持のゴジラ立ちでしか自立できませんでしたが、このモデルでは後脚の素材の強度を上げるなど新しい技術で尻尾を浮かせた状態で2足で自立できていて、より活動的なティラノサウルスになっていると思います。他にもこれまでに培った技術が色々取り入れられ、プロポーション、ポーズのカッコよさと遊びやすさが融合した画期的なモデルですね。
――ビニールモデル最初期のラインナップの中にもあったティラノサウルスですが、今回のマスタークラフトエディションにおいて、ティラノサウルス ビニールモデルやプレミアムエディションとの造形の違いを表現するためにこだわった部分はございましたか?
ティラノサウルスは一番人気のある恐竜なので、どのシリーズでも最初にラインナップされるので、まだそのシリーズの造形上の使い勝手や特性が分からない時点での制作が多くなります。例えば後足の広げ具合や、安定のために足を大きく作る必要があるなど、プロトタイプの原型を制作するときに気を付けないといけないことを後から気づくことがありました。今回のモデルはそういった経験から培ったデザインを入れつつも、現在の最新のティラノサウルスの復元、例えば顔のウロコや口を閉じた時のくちびる、太い首、恥骨の目立たない腹などをモデリングしたものが、そのままの形で製品になったと思います。
――彩色はティラノサウルス ビニールモデルやミニモデルでも使われているイエロー系の色を採用しましたが、彩色について意識された部分はございましたか?
彩色はこれまでのフェバリットのティラノサウルスでも使われている色や模様で、私が一番ティラノらしいと思えるカラーリングで、違和感なく多くの人に受け入れられやすいと思います。ただあまり冒険していないことも確かなので、特別バージョンのカラーリングやコンテストを開催して投票して選ばれたカラーリングを採用したバージョンなんかもあると面白いですね。なんと言っても恐竜の色は分かりませんから。
――最後にティラノサウルス ビニールモデル マスタークラフトエディションについて、一言お願いします。
マスタークラフトエディションでは最新技術で原型をそのまま大きくして、部分的に素材を変えることによって、それまでのビニールモデルで表現できなかったポーズやディテールを付けられるようになったので、よりリアルで大きな「遊べる恐竜フィギュア」が誕生したと思います。これからも仲間がどんどん増えるように、まずティラノサウルス マスタークラフトエディションを一家に一頭お迎えください!
荒木 一成
(あらき かずなり)
自然史系博物館での恐竜復元模型製作、恐竜図鑑などの原型製作を手がける日本を代表する恐竜造形師。