新恐竜秘宝館

Vol.34 始祖鳥化石≪レプリカ≫の謎

80年代に、イギリスの天文学者にしてSF作家、フレッド・ホイルが「始祖鳥化石の謎」と題する本を書いて、始祖鳥のロンドンとベルリンの両標本を「コンプソグナトゥスの化石に羽を描いたまっかな贋作」と決め付け物議を醸し出した(さほど相手にされなかった気もしますが)事件がありましたが、今回のお題は、始祖鳥ベルリン標本に関する私のささやかな(多分ドーデモいいような)疑問についてです。

思えば20年近く前、模型雑誌の広告で見て思い切って大枚8万円をはたいて買った「始祖鳥ベルリン標本」レプリカこそが、それまで地道に恐竜模型作りや小物を集めていた私を、桁違いに高価なレプリカや更に高価な実物化石の収集という身の程知らずコレクター地獄に引きずりこんだ元凶だったわけで、今でもライトアップされてひときわ目立っています(写真 1)。 買った当初から気になっていたのですが、我家の始祖鳥の前肢の爪の部分に円形の掘り込みが無い(写真 2)。フンボルト大学の実物は勿論、大抵のレプリカには掘り込みがあります(写真 3)。さては出来の悪いレプリカを掴まされたか…と思って諦めていたのですが、最近ふとその気になって調べてみると、古い図鑑の写真の物は掘り込が無い様に見えます。実際に見た博物館のレプリカの中にも掘り込み無い物がありました。

現在の物とは大違いです。
ベルリン標本は何度かクリーニングしなおされていて(ロンドン標本はそうだと、ホイルは書いています。)古いバージョンのレプリカが存在するという事なのでしょうか?それに円い掘り込みの意味もいまひとつ判然としません(爪を際立たせる為?)。「ベルリン標本の変遷と円形掘り込みの謎」についてどなたか真相をご存知ではありませんか?
ベルリン標本は今では3万円位から手に入り、〈困った事に〉様々に彩色された物が巷に溢れています。決定版と言える物をもう一枚欲しいなという衝動をかろうじて押さえてはいるのですが…。
締めは秘宝館らしく、ベルリン標本限定の始祖鳥グッズ紹介です。

写真 4 葉書大サイズの石膏製ミニチュア。なかなか良く出来ています。ゾルンホーフェンの石を材料に使っているとか。

写真 6 旧科博ショップで購入した科博オリジナルのハンカチーフ。ロンドン標本とセットで売られていました。とても気が利いた土産だと思うのですが、今もあるのかどうか…。

写真 8 悪い冗談としか思えない中国の工芸品。どうせなら羽も生やせば良かったのに。かってヤフオクに実物恐竜化石!と称して出ていた事があります。さすがに買手はつかなかった様ですが。

写真 10 アウトドア・ブランドのARCTERYXの帽子とTシャツ。しっかりベルリン標本してます。

写真 5 秘宝館Vol.13でも紹介した紙製レターセット。本物のレプリカ(?)と見紛うばかり!

写真 7 ガシャポンの「ぼくの小学校」と言うシリーズのアイテム。4cm程。理科室の備品という設定らしい。尻尾が無いのが残念。

写真 9 レジン製1/2サイズのガレージキット。随分前にワンダーフェスティバルで購入。この様な渋い物を作るモデラーがいるとは!


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田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。