新恐竜秘宝館

Vol.13 納涼・海の怪物大会

この夏、ダイオウイカが大ブレーク。書店の店頭にはずらりと新刊書が並び、科博で開催中の特別展も大盛況、グッズもかなり出回りはじめて、今年ばかりは恐竜もマンモスもちと分が悪い…(とはいえ、恐竜関係の本も例年以上に出版されていますが)。確かにダイオウイカの見た目のインパクトは絶大で、私などもこの1月放送のNHKスペシャルであの驚愕の映像を見た時は、金色に輝く体と圧倒的な眼力(どこかあの昭和ガメラと戦ったバイラスに似ていませんか?)の前に金縛り状態。しかもここに至るNHKのダイオウイカ番組は全てチェックしていたので、感動もひとしおでした。あんなに映像でびっくりしたのは、同じNスぺの「突如エイリアン化するミツクリザメ」以来です。

さて今回は、かつてクラーケンとして恐れられたダイオウイカにあやかって、海や湖の水棲UMA特集です。何気に涼しげだし。


書籍
先日、若い頃に手放して以来気になっていた「図説・海の怪獣」(大陸書房1974年刊)をようやく再入手しました。味わいが有る図版が多く、内容も濃くて、このジャンルの本としては最良の一冊。表紙も渋くていい感じです。(写真1)
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「湖底怪獣」(KKベストセラーズ1976)も水棲UMAに的を絞った好著。(写真2)
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大陸書房からはネッシーファンのバイブルとされる「ネス湖の怪獣」(1973)も出版されています。(写真3)
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UMA本は現在に至るまで星の数ほどもありますが、最新とうたっていてもネタのほとんどは手垢がついた物ばかり。イラストも稚拙な物が大半でがっかりさせられます。そんな中で2009年のコンビニ本「衝撃映像コレクションUMA編780」(メディアボーイ)は胡散臭い写真満載でけっこう楽しめます。(写真4)
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2004年刊のムック本「世界UMA探検記」(ミリオン出版)はちょっと距離を置いた“UMAの楽しみ方”みたいな本で、UMAグッズから関連本、小説や映画まで紹介してマニア心をくすぐります。(写真5)
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新・秘宝館Vol.7でご紹介した「科学画報」(1934)はネッシーの初写真撮影が1933年なので、日本最古のネッシー記事かも知れません。UMAファンに是非とも見せびらかしたいところです。


水棲UMA映画
大ダコ映画は数々ありますが、あまり触手が動かないし(洒落たわけではないです)、大イカ映画は何故か数少ない…
大ダコ・大イカの登場する作品一覧]

この中で印象に残っているのは、ディズニー版『海底2万マイル』の大イカ、ハリーハウゼンの『水爆と深海の怪物』の大ダコ。そして『メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス』。これにはバカ負けしました。

やはり私としては「骨無し」はコレクト対象外なので、家にある水棲UMA映画の殆どは首長竜系、ネッシーとその眷属です。内容は血みどろ系とほのぼの系に分けられますが、どちらにしてもそれなりの出来です。

『怒りの湖底怪獣・ネッシーの大逆襲』
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=1749
これぞZ級映画!ポリ袋で作った様なネッシーの頭に噛みつかれているこのおじさん、1分以上悲鳴を上げて手をバタバタさせ苦しんでいるのですが、その間ネッシーは瞬きもせずユラユラしているだけ。あの最低映画との誉れ高いエド・ウッドの『怪物の花嫁』での大ダコ(作品リストにある『怒濤の果て』で使われたぬいぐるみを無断流用したらしい)との、俳優の自作自演格闘シーンへのオマージュか?(写真6)
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『永遠の夢 ネス湖伝説』
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=54870
こちらはほのぼの系。ネッシーの造形はなかなか。最後のシーンではネッシーの親子3匹が楽しそうに泳いでいてメデタシメデタシ。(写真7)
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『ロック・ネス』
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=1657
映画の半ばで、首長竜の死体が湖畔に上がるのに、「こんな小さいのは(それでも5m位有りそうですが)ネッシーじゃない」と相手にしてもらえないのが悲しい。その首長竜を襲ったメインのネッシーは最後まで全体像が判らなくて(少なくとも首は短い)、フラストレーションが残ります。(写真8)
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『ジュラシック・レイク』
http://curse.jp/scifi-movie/20080415180109.html
ネス湖出身なので怪獣はネッシーを名乗っていますが、主な舞台はスペリオル湖。このネッシーは水かきがある立派な足が有り、地上をかなりすばやく歩いて殺戮の限りをつくします。ところで日本版DVDのパッケージのT-rexやヘリコプターにだまされて腹を立てた方、この手の映画を見るにはまだまだ修行が足りませんよ。(写真9)
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『ウォーターホース』
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=328626
これは例外的にお金をかけた真っ当なファンタジー映画で、第2次大戦中のスコットランドを舞台に少年と怪獣の交流を描いた心温まる作品。と、もうそれだけで私の苦手とするところなのですが、不可解な点も多いのです。例えば場所。イギリス軍に追われた怪獣が潜水艦侵入防止網を飛び越えて海に逃げて大団円になるのですが、そもそもネス湖は海に面していない!(ロケ地はニュージーランド)もしやこの湖、ネス湖という設定では無いのではないかと思って改めて見てみると、画面のどこにもネス湖の表記は無し。怪獣もネッシーではなくウォーターホースと呼ばれています。なるほどこれならば納得、と思ったのもつかの間、パブでの会話で「このネス湖が」みたいなセリフが出てきてしまい…やはり“架空”のネス湖だったのです。有名な外科医の偽造写真も村人がでっち上げた写真として小道具に使われていますし、真摯なネッシーファンは憮然としたのでは?「表情豊かな怪獣は断じて我らが首長竜では無い。いっその事ディズニ―ぽく喋らせちゃえば良かったのに」と言うのが私の感想です。

『恐竜伝説 オーキーからのメッセージ』
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=51193
ほのぼの系。舞台はアメリカの何処かの湖。感想は、登場する日本人の男の子の胸に日の丸が縫い付けてあって判りやすいという位。(写真10)
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『UMA 2002レイク・モンスター』
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=22323
DVDのタイトルは巨大ワニ映画の「UMAレイク・プラシッド」の続編みたいですが、だまされてはいけません。こちらは1977年制作の『魔の火山湖・蘇った巨大生物の恐怖』(The Crater Lake Monster)という全くの別物。長い事日本では見る事が出来ず、デビッド・アレン、ジム・ダンフォース、フィル・ティペットというモデルアニメーション界の大物が参加している映画として、ごく一部のマニアの間でカルト人気を博した作品です。もっともネットの映画評では「金返せ!」みたいに言われていますが。前年1976年のアレン、ダンフォースが参加した「恐竜時代」にもモデルアニメーションの首長竜が出てきますが、こちらの場合はUMAでは無いですね。(写真11)
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首長竜系UMA映画は他に、クライマックスの富士山噴火のシーンのバックに流れる能天気な音楽だけが印象に残る『恐竜・怪鳥の伝説』(東映1977)やアニメの『遠い海から来たCOO』(1992)など多数ありますがきりが無いのでこれ位にします。(ピー助はUMAでは無いな…)


UMAではない首長竜映画
先日、映画化された『完全なる首長竜の日』を見てきました。ストーリーが原作とは大幅に変えられていて、良くも悪くも刺激的になっていました。原作では影のようにしか出てこない首長竜がクライマックスシーンで大暴れ。CGの出来も良くここだけは大満足でした。ところで、原作に、子供の頃の主人公たちが一生懸命描いた首長竜の絵を、嫌われ者で粗暴なお爺さんが「こんな恐竜、いるわけないやろが」と言って、ヒレを足に描き替えてしまったのがトラウマになるという、タイトルに関係する重要な場面が有るのですが「ジジイやるじゃないか!アンタは正しい。」と思ったのは私だけでしょうか。

さて最後にUMAフィギャア展覧会です。


ネッシー物
アーカート城ミニチュア・ネッシー添え(写真12)
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バグパイプ・ネッシー(写真13)
いずれもネス湖で購入した物。
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メーカー不明のソフビモデル(写真14)
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キャストというメーカーの「聖コロンバVSネッシー」(写真15)
このメーカーは他にも「極底探検船ポーラーボーラ―」の「ティラノサウルス・投石機付」など変わった物を作っていました。
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RCネッシー(写真16)
本当は風呂で泳がせて撮影しようと思ったのですが、残念ながら死んでいました。You Tubeに泳ぐ映像がありましたのでご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=t0BSVCXK_7c
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その他のネッシー(写真17)
左から「食玩:ムー未確認動物」「ツクダ:ダイビングネッシー」「ネス湖土産?」
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ニューネッシー食玩(写真18)
「ムー未確認動物」「大神秘博覧会」
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モササウルス系食玩(写真19)
「ムー未確認動物」「大神秘博覧会」
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バシロサウルス系(写真20)
左からオゴポゴ「食玩:ムー未確認動物」ヴァン湖の怪物「食玩:大神秘博物館」バシロサウルス「サファリの絶滅海棲動物セット」
バシロサウルスは好きな動物で、フィギュアや骨格模型が欲しいのですが、何故かサファリの小さな物しかありません。あのチョコラザウルスですら取り上げませんでした。クジラなのに“サウルス”なんてかっこいいじゃないですか!(ゼウグロドンという呼び名も有りますがバシロサウルスが正式名称)
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おまけ
ディズニーシ―で購入した「ノーチラス号VS大イカ」(写真21)
今回撮影されたダイオウイカ同様触腕が失われていました…悲しい。
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海洋堂製「ミツクリザメ」(写真22)
かなり昔のガレージキットです。
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田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。