Vol.15 冬の恐竜展
今年もあとひと月で終わりというこの時期に、何故か上野の科博で恐竜展をやっています。恐竜と言えば夏のイメージ、さては地球温暖化の影響がこんなところにもなどと馬鹿を言いつつ行ってみると、これが大当たり!
『大恐竜展―ゴビ砂漠の驚異』と銘打たれた特別展は、林原自然科学博物館のプレパレーターの手で見事にクリーニングされた貴重な実物化石(例えば初めて目にするハドロサウロイド―ハドロサウルス人ではありません念のため―など)がてんこ盛りで、しかも平日だったせいか見学者も少なくかぶりつきで見放題。アッと言う間の閉館時間に、これはあと2度は通わねばと気合が入りました。林原関連以外の古い物でも、私の持っている『ゴビ砂漠の大恐竜展(1985年仙台)』の土産、プロトケラトプス幼体レプリカ(秘宝館Vol.47で紹介―①)の実物との思いがけない出会いなどもあり、これで夏に1時間半も並んだあげくホルマリン漬けの貝やらカニやらを見せられた『深海展』に倍返しできたとニンマリしたのでした。
実はこの展示会、昨年の11月から今年の6月までの実に半年以上も大阪自然史博物館で開催されていた『発掘!モンゴル恐竜化石展』とほぼ同じ内容で、大阪まで行く余裕が無かった私は心待ちにしていたのです。ただ双方の図録(何故か大阪の図録は持っています)は全くの別物で、おそらく展示のスタイルが違っているのだと思われます。来年の2月までやっていますので、東京近郊の方は是非とも御自分の眼で素晴らしさを味わっていただくとして、秘宝館として気になるのはグッズです。
恐竜造形家、徳川広和さん原型のフェバリット製タルボサウルス、サウロロフスのフィギュアが、『モンゴル恐竜化石展』に引き続き会場限定フィギュアとして販売されています。
どちらも、さすがと言う出来なのですが、個人的には毛無しタルボが欲しかった…。
フェバリットの会場限定フィギュアは、『世界最古の恐竜展』(2010)のフレンゲリサウルス骨格や『恐竜王国2012』の羽毛ティラノ等、本当に“会場限定”なので要注意です。
やはりモンゴルと関係の深い、群馬県の神流町恐竜センターのオリジナルフィギュアも売っていました。タルボサウルス(②―羽毛バージョンも有りましたが迷うことなくこちらを買いました。)とサイカニア、ヴェロキラプトル、テリジノサウルス(③)です。限定試験販売中という事で正規販売のための感想を求めていますので、この場を借りて一言。ベース(台座)も手を抜かず作り込んでください。だいぶ印象が変わると思います。ベースの裏やパッケージに記された「Made in Kanna」はやる気が伝わってきていい感じです。
珍しい林原のオリジナルグッズも売っていました。そそられるパッケージのサウロロフス骨格ダンボールクラフトですが、中身はいたってシンプル(④)。プロポーションは良いので、腕に覚えのある方は骨格を描き込んでみては。プロトケラトプスのオリジナル骨格図ポスターもあり、これは買いです!
会場で買ったグッズはこれ位ですが、折角なので、モンゴル関連のフィギュアを並べてみました。
2005年に味覚糖から発売された食玩、「コレクト倶楽部 恐竜・古生物編Ⅰ」は全9種のうちジュンガリプテルスとプラティベロドンを除く実に7種が、今回の恐竜展に来ています。オピストコエリカウディア、タルボサウルス、サウロロフス、タルキア頭骨(サイカニアと思えば)、プロトケラトプス、ヴェロキラプトル(⑤)、そしてシークレットの格闘化石(⑥)。まさに超先行販売オフィシャルフィギュアですね。(ちなみに恐竜・古生物編Ⅱは世に出ていません。)
プロトケラVSヴェロキ宿命の対決ジオラマは、フェバリットの物をはじめいくつかありますが、格闘化石をモチーフにした物は、上記の食玩以外は、大きくて重くて高価なサイドショウの物(⑦)位しか思い浮かびません。
最後に紹介するのは今回唯一のお宝、謎のタルボサウルス木製骨格です(⑧)。今年のはじめ、ヤフオクで3000円位で落札した物でモンゴル土産のようです(⑨)。40cm程のガラスケースに入っていて、取り出す事はできません。頭蓋骨(⑩)は鼻が妙にとがっているのを除けばなかなかタルボしていて、ちゃんと口の周りの小孔も表現されています。歯はいただけませんが。前足が何故か3本指ですが中足骨は立派にアークトメタターサルです(⑪)。台座にtarbosaurusの文字とシルエットが浮き彫りされていて土産物感満点(⑫)。この写真など、一瞬、かっての科博のタルボを思い出してしまいます(⑬)。とまあ結構気に入っているのですが、いつ頃の物なのかも判りません。いったい何処のどなたが誰のためにはるばるモンゴルから携えてきたのか…。何かドラマがありそうですね。
季節はずれの恐竜展は勝山の恐竜博物館でもやっています。『ボクらの恐竜・怪獣時代〜ようこそ!!恐竜ファンタジーの世界へ〜』と題した催しで、荒木さん、木製骨格模型のタブリンさん、ブリキのオモチャの北原さん等に混じって、私も以前秘宝館で紹介した明治・大正の恐竜本や、アンティーク・トイなどを出品しています。
お近くの方は是非足をお運びください。
ところで話は変わりますが、雑誌「ムー」の12月号に驚愕の記事が載っていました。毎度おなじみUMA特集の中の「羽毛恐竜現存を極秘KGB映像が証明」という記事によると、冷戦時代、KGBがアフリカで撮影したとされるダチョウ恐竜が疾走している映像がYouTubeで公開され、世界中のUMAファンや未確認動物学者(っているの?)の度肝をぬいたそうです。執筆者の南山宏氏は、映像には羽毛が認められ、これは最新の恐竜像に合致すると胸を張っています。しかしながら残念なことに、これは誰でも知っているジュラシック・パークのガリミムス疾走シーンを左右反転してモノクロにしただけのもの(⑭)。勿論JPのガリミムスは羽毛など生やしちゃいません。未確認動物学者先生たちの無知さとお人よし加減には、驚愕せざるをえません。
田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。