Vol.79 ハリーハウゼンの恐竜
最近、様々なSF映画のキャラクターフィギュアを手掛ける模型メーカー「エクスプラス」から「原子怪獣現わる」の名シーン、リドサウルスVS灯台を再現したプラモデルが発売されました。レイ・ハリーハウゼン大好きな私としては作らずにはいられません。勢いあまって、スターエーストイズから発売されていた巨大なソフビキットのリドサウルスとグワンジも一気に作ってしまいました。
というわけで今回はこの3体と、我が家に意外なほどたくさん棲息していた、ハリーハウゼンの恐竜や恐竜ではないモノをご紹介。
リドサウルス
ゴジラの1年前,1953年に制作された「原子怪獣現わる(The Beast from 20,000 Fathoms)」の主役。北極で氷漬けなっているところを核実験で目覚めさせられニューヨークで暴れまわります。特に被ばくしているわけではない様でゴジラと違い放射能は吐かないのですが、代わりに未知のウィルスをまき散らします。
リドサウルスが恐竜であることは、劇中、古生物学者が明言していますので間違いありません。前年(1952年)にハドソン川河口近くの海底で化石が発見された新種の恐竜だそうです。その博士は潜水調査中にリドサウルスに襲われ命を落とすのですが、その今際の際まで潜水球の窓から冷静に観察を続け電話で助手にその特徴を報告します。研究者の鏡です。曰く「想像図に似ているが、背びれは一列」「鎖骨は一本に繋がっている」そして最後に「驚くべき相違点が!」というセリフを残します。それが何か気になる所ですが、永遠の謎です。
「原子怪獣現わる」の原作は一般にレイ・ブラッドベリの傑作短編小説「霧笛」(1952年作・悠久の孤独の時を過ごしてきたクビナガリュウがたまたま耳にした灯台の霧笛を仲間の咆哮と間違えて喜び勇んで逢いに来るのだが…という実に切ない話)とされていますが、どうもそうではないようです。
たいへん為になる、聖咲奇著「聖咲奇の怪物園―レイ・ハリーハウゼンの世界」(同人誌ですがネットで購入できます)によると、実は映画の企画の方が小説よりも1年早く、ブラッドベリのアイデアで灯台のシーンが付け加えられたのではないかとの事。映画のクレジットにはブラッドベリの小説よりの着想と記されているそうです。余談ですが、今回「原子怪獣」のDVDを見直したところ、おまけの映像として2003年のブラッドベリとハリーハウゼンの対談が収録されていて(すっかり忘れていました)、ブラッドベリが「今どきの恐竜はみんな尻尾をあげているが、あれは恰好良くない」みたいなことを発言していました。
さて、その灯台シーンのプラモデル、映画がモノクロなので彩色をどうするか悩ましいところです。ちなみに映画でのこのシーンは全くのシルエット、影絵なので参考になりません。結局黒と白の間の色で気の向くままに塗り分けました。せっかくなので簡単なジオラマ写真も撮ってみました。波はクシャクシャにしたポリ袋、電飾は組み込んだわけではなく反対側からペンライトを当てただけです。そして右の写真は「霧笛」のイメージです。登場願ったのはサファリのエラスモ。
その他のリドサウルス。大きいのは今回制作したスターエーストイズのソフビキット。1/72と明記されているエクスプラスのプラモの倍以上ありますから1/35位でしょう。丁度良いサイズのジープのオモチャを見つけたので添えてみました。彩色は前記の「怪物園」に載っていたカラー写真(オリジナルのアニメーション用モデル?)を参考にしました。
青いのは80年代のビリケン商会のソフビキットで当時作った物。あの頃は南青山の店に良く通ったものです。我家には、後程紹介するハリーハウゼン物以外にもメタルナミュータントや金星蟹、シンジェノア、レーザープラストのトカゲ宇宙人などといったビリケン製洋物モンスターが結構揃っています。
その隣はワンフェス辺りで購入したガレージキット。記憶はもはや闇の奥ですが、何かの事情で歯を作る根性が無かった事が伺えます。
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「恐竜100万年」(1966)の恐竜たち
これらは全て紹介済み。新秘宝館Vol.58/Vol.66/Vol.70をご覧ください。スターエーストイズの高価なレジンキャスト完成品です。どういうわけか、恐竜100万年の恐竜達は、私の知る限りほとんどフィギュア化せれていません。以前見掛けたのは「翼竜にさらわれるラクウェル・ウェルチ」や「ポスターのポーズをとるラクウェル・ウェルチ」のガレージキットなどで、確かにラクウェル・ウェルチのインパクトありすぎの映画ではありましたが。
*映画公開当時、マルサンから「恐竜100万年」を名乗るソフビシリーズが発売されましたが、映画に登場する恐竜とはかけ離れていました。アーケロンはいましたが…。
グワンジ
「恐竜グワンジ」は1969年の映画。こちらもフィギュアの数は多くは有りませんが、海外のガレージキットメーカーからはVSカウボーイやVSサーカスの象の名シーンを再現したキットが発売されている様です。意外にもスティラコサウルスとのバトルシーンは見つけられませんでした。日本では頭骨と死体でグワンジに花を添えています。
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大きな物はスターエーストイズのソフビキット。今回組んだものです。その隣は80年代?の海洋堂ソフビキット。当時の商品名は「グワンジ風アロサウルス」だったと思います。ポスターのグワンジによく似ています。下は以前、秘宝館Vol.64で紹介した静岡のガレージキットメーカー「うなぎ工房」のレジンキット、スティラコ頭骨付きと、DVD BOXに付いていたスティラコ死体付き。制作はエクスプラスです。そしてこちらも新秘宝館Vol.9で紹介済みのアッカーマン・コレクション(証明書付き)の2体。スティラコがグワンジバージョン(特に尻尾辺りが)なので、きっと獣脚類はグワンジなのでしょう。Vol.9では「時代無視の対決シーン」とか書いてしまいましたが、この組み合わせ、グワンジでしたら納得いきます。実はグワンジは3本指のティラノ類という設定だったとする説もあります。
ハリーハウゼン映画の恐竜以外の古生物
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いずれもエクスプラスの「レイ・ハリーハウゼン・フィルムライブラリー」のもので、左から「SF巨大生物の島」のアンモナイト(映画では巨大オウムガイとなっていますが)とフォルスラコス、そして「シンドバッド虎の眼大冒険」のサーベルタイガー。
その他の魅力的な怪物たち
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左上はビリケン商会のソフビキット、イーマ竜(地球へ2千万マイル)とサイクロプス(シンドバッド七回目の航海)
左下はエクスプラスの8インチソフビフィギュアの「七回目の航海」のドラゴンとサイクロプス。
右は「レイ・ハリーハウゼン・フィルムライブラリー」のドラゴン、サイクロプス、イーマ竜、2段目は「アルゴ探検隊の大冒険」のハーピーとヒドラ。3段目は「七回目の航海」のグール、「SF月世界探検」のムーンカーフ、「虎の眼大冒険」のミナトン。
下段はフルタの食玩で「水爆と深海の怪物」の巨大ダコ、イーマ竜、サイクロプス、そして「アルゴ探検隊」のタロスと有名な骸骨剣士です。
まだまだ魅惑的なハリーハウゼンキャラのフィギュアは沢山あるのですが(例えばメドューサとか)、恐竜以外にそうそう出費はできません。
さて、夏恒例の「博物ふぇすてぃばる」が今年も開催されました。目当てのハサミックワールドさんからはスピノサウルスとステノプテリギウスの骨格、その他小品を購入。相変わらずすごい出来です。特に魚竜の膨大な数の椎骨、肋骨がちゃんと作られているのには唖然としました。小さな両生類は1.5cmほどの大きさでコーティングされてリングが付いています。毎年お願いしている即興切り紙、今年はフタバサウルス頭骨をリクエストしました。スマホの画像を見ながら3分くらいでこの完成度です。
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焼き物恐竜の「たかを窯」さんでは、ミニサイズのスピノ、旧イグアノドン、ズール、ケントロサウルスを手に入れました。どれも味わいが有ります。特にズールは昨年予告されて1年待っていたものです。
会場の一角にガチャがありこんなものが!
サカバンバスビス、今人気絶頂なのだそうです。
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横浜パシフィコの「巨大恐竜展」にも行ってきました。展示されているのは目玉のパタゴティタンとその相方のティラノティタン以外は2015年の「メガ恐竜展」(新秘宝館Vol.26)、2017年の「ギガ恐竜展」(新秘宝館Vol.37)でお目にかかったものが殆どでした。パタゴティタンは確かに大きいですが、印象としては、同じくらいの長さのギガ恐竜展、ルヤンゴサウルスの方が大きさのインパクトはあったように思います。巨大恐竜に目が慣れてしまったのかもしれません。
やはりギガに来ていたティラノサウルスの「Yレックス」は食いちぎられていた尾がなぜか治療されて繋がっていました。
そして私は初見なのですが、福井で常設展示されていたというクライトンペルタはアンキロサウルスの背中にステゴ型の縦長の皮骨板が生えているという、正にハイブリッド恐竜みたいな不思議な姿でしたが、解説には(図録でも)その辺りには触れていませんでした。鎧竜マニアのASAさんに会ったら聞いてみようと思います。
グッズはというと、限定と言われれば逆らえずフィギュア付きチケットを購入。さらに会場限定パタゴティタンのレリーフ骨格を、ちょっと高いなあとぼやきながらも家に連れ帰ったのでした。
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田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。