Vol.90 恐鳥類・束柱目+インキシヴォサウルス
今回は思いつくまま恐鳥類と束柱目の模型を集めてみました。この一見何の関係もない両者の共通点を強いて探せば、共に新生代新第三紀の北アメリカに生息していた事位ですが、残念ながら、束柱目は約1000万年前に絶滅、一方恐鳥類のティタニスが南アメリカから渡って来たのが約500万年前とされ、両者の血にまみれた抗争は無かった模様です。
二見三見したところで何の必然性も見出せないこの組合わせですが何のことは無い、私がヤフオクで恐鳥類ガストルニスと束柱類パレオパラドキシアの3Dプリントレプリカ頭骨を買い一気に作ったところ、思いのほか良い感じに出来上がったので皆様にお披露目したいというだけの話でした。しかしフィギュアを集めてみて思わぬ共通点を発見してしまいました。それはどちらも有名な古生物なのにフィギュアに恵まれていないという事。見た目のインパクト大な恐鳥類は、フィギュアの数もそこそこあるのですが、それでも新生代のスター、マンモスやサーベルタイガーには遠く及びません。束柱目に至っては、古生物フィギュア界ではほぼ相手にされていません。チョコラザウルスにもアニアにもその姿は無し。まあ地味すぎる見た目のせいだとは思いますが。この残念な2種のフィギュアを搔き集めて紹介するわけですがその前に、前回「近日中にとびきりユニークな頭骨を入手」と予告した、タブリンさんのインキシヴォサウルスをご覧いただきます。インキシヴォサウルスはげっ歯類を思わせる前歯で一時話題をなった小さな基盤的オヴィラプトロサウルス類です。
日本初登場はAI情報によると2009年幕張で開催された「恐竜2009―砂漠の奇跡」。その時は、ミイラ恐竜「ダコタ」や初お目見えのスピノサウルス全身骨格、衝撃デビューのギガントラプトル等沢山の目玉の陰でひっそりと展示されていたようで、私も記憶にありません。その後何度か恐竜展で出会って印象に残っているのですが。
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これは新秘宝館Vol.88で紹介したヘテロドントサウルスに次ぐ私のリクエスト・リアルサイズ木製頭骨シリーズ第2弾です。このところ、こういったユニークな歯列を持つ小型恐竜にはまっていて、今回リクエスト候補に挙がったのは他に、異常に大きな歯を持つ謎の三畳紀肉食恐竜ダエモノサウルス、下の前歯が出っ歯なスカンソリオプテリクス類エピデクシプテリクス、獣脚類か鳥盤類かでもめている植物食チレサウルス等ですがいずれも資料不足で、比較的図面があるインキシヴォサウルスになりました。相変わらず入念に自慢したくなる出来栄えです。次回のリクエストを何にするか悩ましいところ。リアルサイズにはこだわりたいので、マシアカサウルスあたりかなあ…。
昭和の時代に一般の図鑑などで知られた恐鳥類はディアトリマと呼ばれていたガストルニスとフォルスラコスだけでした。現在ではウィキにあるように、もう少し細分化されています。
ディアトリマと呼ばれていた時代、ガストルニスは鉤状の嘴と屈強な脚を持ちヒラコテリウムなどを食べ漁る最強の鳥類として描かれていました。フォルスラコスは軽量で俊足なハンターで、両者の関係は今でいえばライオンとチーターといった立ち位置だったように記憶しています。両者が共存していたわけではないなどの水を差す説明は、当時の少年図鑑にはありませんでした。その最凶ガストルニスが近年では嘴が鋭さを失い植物食に認定されてしまったようです。残念な事です。それでもその辺で出くわしたら熊並みに怖いことでしょう。恐鳥類の称号は返上しなくても良いかと思います。
*最近You Tubeでとんでもない動画を見ました。カモメが自分の頭よりも大きいウサギやリスを、生きたまま丸呑みするのです。という事はガストルニスの巨大な頭ならヒラコテリウム位は簡単に丸呑みできたでしょう。肉を引き裂けないからと言って侮ってはいけません。
ガストルニス科フィギュア
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ガストルニス
上段左はサファリの2013年の物。中央は今回制作(彩色)した格安3Dプリントレプリカで右のアンフィ製全身骨格と同じデータを使用している様です。ガストルニスを名乗っているのは比較的最近発売されたこの3種だけであとはディアトリマ。実はこの骨格標本Gastornis giganteaも長い間ディアトリマとされていました。
ディアトリマ
現在ではガストルニス属に統合されましたが、これらのフィギュアの多くは、まだディアトリマ属とされていたころの物です。
中段左から
・MPC:60~70年代アメリカ
・スターラックス:70年代フランス
・ブリーランド:90年代ドイツ*1/24スケールと銘記されています
・シュライヒ:80年代ドイツ
・チョコラザウルス第1弾(2001)
・正体不明:食玩かガチャの物と思われます
・カロラータ立体図鑑・新生代の絶滅動物セット(2019)*2019年の製品にも関わらずディアトリマを名乗る希少なもの
下段左はソフビマニアの間では高値で取引されているらしい大協の”ジアトリマ”。60年代の物(秘宝館Vol.36)
右は90年の恐竜ブームの頃に出回っていたペルー産陶器恐竜。そして中央やや下に収まっているのが、唯一ガストルニス(ディアトリマ)科ではなくその姉妹群とされるオーストラリアの恐鳥類ドロモルニスです。オーストラリアと言えば、勿論あの元祖チョコラザウルス、ヤウイ「ロストキングダム・シリーズ」(2000)。これはそのシリーズA#36。日本にはあまり入ってきていない物なので、なかなかのお宝です。
フォルスラコス科フィギュア
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かってはディアトリマより格下扱いでフィギュアの数でも負けていましたが、今では勢いは逆転、種も増え、フィギュアも充実してきました。とにかく精悍で格好いい!
フォルスラコス
上段左はプラモ史に残る名作、オーロラのプレヒストリック・シーン・シリーズのもの。
その右はフランスのスターラックス製(1970年代)
右端はコレクタ(2024)
ケレンケン
骨格は中国のVWUVWUの物でアマゾンで入手。生体の方はコレクタ(2011)
ティタニス
ティタニスはウィキにもあるように、可動式の腕を持っていたかもしれないという興味深い鳥。なのでフィギュアもその辺りを意識してカギ爪を持ちそれらしいポーズをとっています。黒いのは海洋堂恐竜模型図鑑ダイノテイルズ7(2006)、右はミニチュアプラネット(2023)。そして秘宝館にも何度か登場している(Vol.38/Vol.82)現代版ソフビで「ぶたのはな」と言うメーカーの物。昭和のソフビの味を踏襲しながらも特徴となる所は押さえるという古生物マニアが関わっているとしか思えない造形が特徴。このティタニスもちゃんと指が2本あります。
そして最後にフォルスラコス科とは何の類縁関係も無いのですが、このところ気に入っているヘビクイワシ(コレクタ)です。
現生種でフォルスラコス科と近縁なのはノガンモドキ科で、両種ともノガンモドキ目に含まれます。ノガンモドキのフィギュアを載せたいところですがそんな物はどこにも存在しません。そんな折、ノガンモドキの形態が、食性などからヘビクイワシに収斂進化している、という記述をネットで発見。という事はヘビクイワシがフォルスラコスに収斂進化しているという事だとこじつけてのヘビクイワシ登場です。でも実は前々から、初期のフォルスラコス復元はヘビクイワシを参考にしたのではないかと思っていたのです。白黒の体色などそっくりではないですか。そもそも恐鳥類というのは学術的な分類ではなく、地上性の巨大な肉食性の鳥を一括りにしたもので、地上で狩りをするヘビクイワシがこのまま大きくなって飛べなくなれば、立派な恐鳥類です。
束柱目フィギュア
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さて束柱目フィギュアです。デスモスチルス、パレオパラドキシア共に日本各地で発見され、化石が展示されている博物館も各地にあるというのに、フィギュア的には悲惨な状態。日本を代表する古生物がこんな扱いでいいのか!と憤ってはみせたものの…
白状しますと、実は私も束柱目の事は殆ど何も知りませんでした。博物館でお目にかかっても殆どスルーしていました。それどころかデスモスチルスとパレオパラドキシアの違いさえ判っていませんでした。体形的にそそられなかったのです。大いに反省しています。
今回パレオパラドキシアの頭骨を作ってみて、なかなか味わいのある動物だという事を発見したのは収穫でした。これから勉強しようと思います。しかしグッズを集めようにもこれだけ少ない事には…
デスモスチルス
頭骨は2014年に科博で開催された「太古の哺乳類展」の会場限定ガチャのストラップです。海洋堂製。全身骨格の方は北海道大学総合博物館のオリジナルグッズ「紙の博物館」です。2009年に制作された、レーザーで切り込みを入れた段ボールを組み立てて作るものです。「オモチャの博物館」さんのページには、他にこんなペーパークラフトも載っていました。
パレオパラドキシア
ヤフオクでRal_Shopさんから2700円で購入した3Dプリントモデル。塗装するとなかなかの見栄えです。写真では判りにくいですが、束柱もちゃんと塗り分けています。ヌイグルミは三重県総合博物館のお土産。フィギュアは、市販の製品としては、もしかしたら世界唯一かも知れない(アメリカのサイトも探してみましたが他に無し)、カロラータの立体図鑑。先ほどのディアトリマと同じく新生代の絶滅動物ボックスに入っていました。他にこの様なヌイグルミも。
束柱類グッズはたったこれだけで、非常に寂しいのですが、ひとつ朗報が…
今回いろいろ検索していたら、北海道の足寄動物化石博物館で、足寄で発見された束柱目アショロアの全身骨格と頭骨、べへモトプス頭骨の3Dプリントミニチュアがグッズ化されているのを発見。今回は間に合いませんでしたが近いうちに手に入るかもしれません。その時はまたご報告いたします。
・・・・
束柱目グッズがあまりに少なすぎて何かもの足りないので、もう一種類絶滅哺乳類を追加。ブロントテリウム類です。何故今ブロントテリウムかと言うと、最近観た映画「レッドソニア」の冒頭で、このブロントテリウム類の親子が狩られ、無残にも角(高く売れるらしい)を切り取られるという痛ましいシーンがあったからです。
「レッドソニア」について簡単に説明するのは難しい…。1930年代のアメリカのパルプマガジン作家R・Eハワードによるヒロイック・ファンタジー小説「英雄コナン」シリーズ(私が若い頃に一時はまっていた)の流れをくむ女剣士の冒険譚でマーベル・コミックに連載、敵は魔術師や魔物や怪物。いわゆる剣と魔法(Sword and sorcery)のジャンルで舞台はハイボリア時代と呼ばれる、まだ地中海が無くアフリカと地続きの太古のヨーロッパ。
とまあこの様な原作の何十年かぶりの2度目の映画化とあれば私の血が騒がないわけは無く、勇んで観に行ったのでした。で、いきなりブロントテリウム狩りですが、予期せぬブロントテリウム疾走シーンが見られたのはラッキーでした。
*英雄コナンとハイボリア時代が気になる方はこちらをどうぞ。
*映画ではこのブロントテリウム類は〇〇テリウムと呼ばれていましたが、残念ながら聞き逃してしまいました。遥か昔の話なのに学名で呼ぶのはおかしいなどと突っ込んではいけません。「恐竜100万年」のアーケロン同様ファンタジー映画の特権です。
*この映画には、サイクロプスや巨大サソリも登場。CGなのにシンドバッドやタイタンのモデルアニメーションを彷彿とさせる動きで、ハリーハウゼンをトリビュートしていました。
*地中海は実際に干上がった事がありますが、それは約600万年も前の中新世の時の事。ハイボリア時代の設定はアトランティスが沈んだ後という事ですから、せいぜい1万年位前のお話でしょう。
さて、ブロントテリウムです。
イマイチ分類がよく判りませんが。とにかくフィギュア大集合です。
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エンボロテリウム頭骨(サファリ先史時代哺乳類頭骨チューブ2011)/エンボロテリウム(ジオワールド2014)/ブロントテリウム(モジョ2013)/メガセロプス(TNG 2023)/メガセロプス(コレクタ2013)/ブロントテリウム(海洋堂チョコラザウルス第一弾2001)/ブロントテリウム(スターラックス1970s )
そして後ろにボス然として控えているのは1993年のカップヌードルのCM 「hungry?」のキャラクターヌイグルミ、ブロントテリウムです。
最後に、先日開催された新宿ミネラルショーの戦利品をご紹介。今回はなぜが海外の化石ディーラーの参加が少なく、モヤモヤが残る結果となってしまいました。これがほぼ唯一の買い物です。
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ホプロフォネウスの3Dプリントレプリカ
漸新世のワイオミング産です。
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田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。