新恐竜秘宝館

Vol.91 絶滅ワニ形類フィギュア大図鑑

最近マテルのジュラシック・ワールド・シリーズで古代ワニのフィギュアが充実していて、ついつい買い揃えてしまったのでそれらを紹介しつつ、我が家の絶滅ワニ類コレクションを集めてみたところ、これが意外なほど数が多くて… 

まずはこちらをご覧ください。

今回登場するフィギュアは全て、このページの1番目の分岐図の一番下のグループ、ワニ形上目に含まれます。さらに言えば2番目の分岐図の下の方の鰐形類(Crocodyliforms)、すなわち現生のワニを含む正鰐類とその上のクレード新鰐類、そして僅かですがノトスクス類と原鰐類も混ざっています。

*大雑把に言うと、ワニ形類(ここでは私自身あまり理解のできていない学術用語[]を避けて、当たり障りのない[]に統一したいと思います)は偽鰐類の一員で、その偽鰐類は恐竜類・翼竜類からなる鳥中足骨類(鳥蹠類)と共に主竜類を構成します。

*ワニ類の分類は難解で、いくつかの分岐図を見比べてもさっぱり判りません。聞いた事もない種名が並び、研究者によって分類名もまちまちだったりします。ここでは、まあ細かい事は置いておいて、フィギュアがある種だけを大まかに分けておきます。

絶滅したワニ形類は知名度があまり無いせいか、フィギュアの種類が限られていて、ひと昔前はティラノサウルスと対峙していたとされる北米のデイノスクス、海ワニのメトリオリンクス、少し遅れて登場したスピノサウルスと戦うサルコスクス位しかありませんでした。近年になってメトリオリンクス以外の海ワニ類、そして最近はインパクトのある顔つきをしたノトスクス類、カプロスクスの台頭が目立ちます。

*ワニ形類以外の偽鰐類フィギュアについては、新秘宝館Vol.82で紹介しています。わずか1年半前なのに「クルロタルシ類」てんこ盛り。しかしその後1年もたたないうちに、クルロタルシ類と言う単語が抹消されてしまうとは!(新秘宝館Vol.87)他に新秘宝館Vol.54にポストスクスやオルニトスクスが登場しています。 

バラエティに乏しいワニ形類フィギュア界にあって一人気を吐いているのが、冒頭に触れたマテルのジュラシック・ワールド・シリーズなのです。まずはこちらをまとめて紹介しましょう。 

 

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上から年代順に並べてみました。

 

トルヴォネウステス

正直聞いた事もない種名でした。

 

白亜紀前期の良く知られた巨大ワニ、サルコスクス

こちらはスピノサウルス絡みで良く知られた種。他のメーカーの物も多く、後程紹介いたします。

 

白亜紀後期の謎のワニ、ストマトスクス

唯一の化石が第2次大戦中、連合軍の爆撃にあい、あのスピノサウルスと運命を共にしたという大型のワニ。おそらく世界初のフィギュア化だと思います。背中をそらせて口を開ける独特なアクションをします。

 

カプロスクス

最近フィギュア人気の高い古代ワニ。これのみ新鰐類ではなくノトスクス類に分類されます(正確にはワニ形上目ノトスクス亜目)。

 

プルスサウルス

これも高価な中国産限定品以外唯一の市販フィギュア。ヴォリューム感たっぷりの頭部が良く表現されています。売りはデスロールらしきアクションができることで、これは「頭骨の構造からこの大きさでもデスロールができる可能性がある」という研究結果を反映したもので、ニンマリしてしまいます。

 

クリボスクス

これも多分、世界初のフィギュア化。

 

どうですか、このラインナップ!。何か異様に力が入っているように思えます。しかもジュラシック・アクションフィギュアらしい過剰な装飾とディフォルメにもかかわらず、種の特徴となる部位はしっかりと表現されているのとは、マテル、あっぱれ!。

さてここからは各メーカーのワニ形類フィギュアを紹介していくのですが、趣向を変えて、現在から過去に遡ろうと思います。折り返し点は数少ない(集めているわけではないので)現生のワニから出発しましょう。

 

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全身骨格はシャムワニ(東南アジア産のクロコダイル)と思われますが、いつの頃から我が家にいるのやら…おそらくヤフオクか何かで格安で購入した物だと思いますが…。全長70cm程。

 

尾椎骨は我が家のお宝のひとつ。同じくシャムワニですが、こちらはタイ土産のワニ肉の缶詰に入っていた骨(よく煮えていて肉ときれいに分離していた)を自分で組上げたものです。まさかこんなものが缶詰に入っていようとは!血道弓まで見事に残っています。しかもタイ旅行のお土産だと言って、ワニ缶を恐竜倶楽部の例会で配ってくれたのは、現在カナダで一線の古生物学者として活躍されている宮下哲人博士。当時はまだ中学生でした。これは自慢したくもなるというもの。

 

中段左は挑発的なポーズの恐竜フィギュアでお馴染みのPAPOから発売されたインドガビアル。なぜか普通。右は、半身が透明で骨格や内臓が見える4Dビジョンシリーズのクロコダイル。下左はリーメント・ポーズスケルトンシリーズのクロコダイル。鼻孔が不正確で、頭骨がワニに見えないのは致命的。

 

そして現生最後はフィートドン(Fortdon ferreus)。1930年代にインド洋のスカル・アイランドで発見、記載された陸棲のワニ…とまあこれはピーター・ジャクソン版「キング・コング(2005)」に登場する脇役キャラですが、映画公開時に出版された本「スカル・アイランドの自然史」に、ちゃんとワニ類として解説されています。写真はPlaymates製のアクションフィギュア。このアクションフィギュア・シリーズは映画に登場するブロントサウルス以外ほぼ全ての恐竜とクリーチャーを網羅していて、当時熱くなって集めたものです。コング関係のフィギュアは他に素晴らしい出来の頭骨シリーズや比較的高価なスタチューと呼ばれる高級フィギュアから海洋堂製のミニモデル等まで充実していて、飾り棚の2段を埋め尽くしています。いずれ特集したいと思います。映画公開当時の事は秘宝館Vol.27/28をご覧ください。*Vol.28で言及した「A Natural History of Skull Island」は、その後DVDの特典という形でダイジェスト版ですが翻訳本が出ました。メデタシメデタシ。

 

今年の春に科博で開催された「超危険生物展」に、飼育下では世界最大との記録を持つイリエワニ、愛称「ロロン」の実物大模型(剥製のレプリカらしい)がフィリピンから来ていました。全長6.17mは確かに大きいのですが、迫力が伝わって来なかったのが残念でした。

 

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さて時代を少し遡り新生代。

 

まずは更新世、最近チバニアンの名前が付いた時代の日本に棲息した、ご存じマチカネワニの1/35骨格模型。ソータと言うメーカー製で3年ほど前にガチャポンと箱入りの両方で発売されました。組上げると18cm程になりガチャとは思えない精密さ。箱入りの方は遊泳ポーズも選択できます。大きさ比較のためのガイコツ付き。下は始新世の陸棲ワニ、プリスティカンプススです。こう見えても中生代の陸棲ワニ、ノトスクス類ではなく、立派な正鰐類(ワニ目)の一員です。フィギュアはサファリの先史時代のワニチューブからの物。ワニチューブは侮れません。(新秘宝館Vol.82

 

新生代ワニフィギュアがこれで終わってしまうのは少々寂しいのですが、なにもフィギュアに限った事ではなく学習図鑑の世界でも同様で、例えば6月に新版が出たばかりの小学館の図鑑NEO「大むかしの生物」では、ご当地日本のマチカネワニ以外は、聞いた事もない南米の暁新世のワニ、アンスラコスクスが載っているだけです。

気を取り直して中生代に進みましょう。

  

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白亜紀後期

 

デイノスクス

かってはフォボスクスと呼ばれていた時期もあり、私はそちらの名前の方が馴染みがあります。広い意味でのアリゲーター(アリゲーター上科)で、中生代の巨大ワニフィギュアとしてはフィギュア界最古参です。

上はサファリ(1995)、下は希少な80年代のドイツ、クラインヴェルカ恐竜公園の土産品(新秘宝館Vol.38/55/81)。他に古いシュライヒの物、最新の1万円以上する中国のメーカーREBORの物などいくつか存在するのですが、残念ながら未購入です。

 

カプロスクス

少し前まで誰も知らなかったノトスクス類の陸棲ワニですが、この数年でフィギュアが見る間に増殖し、この有様です。

上段は新秘宝館Vol.88でお披露目したばかりの3Dプリンター製レプリカ。口を開けるとなかなか凄味があります。実物の1/2程の大きさ。

中段は左からシュライヒ(2021)、サファリ(2010)、PAPO2016)と御三家そろい踏み。その下はつい最近アマゾンで見つけた中国製の物で、御三家に比べるとユルイ出来です。そしてその右は、先日開催された「博物ふぇすてぃばる2026」でゲットした切り紙細工のカプロ。今年もハサミックワールドさんの作品を2点購入したのですが、その時に目の前で即興で切っていただいたもの。全長8cm、製作時間3分、お代はなんと100円!*我が家にお迎えした2作品は、次回、この夏の収穫として、これから行く予定の東京周辺の恐竜展グッズなどとまとめてお見せいたします。

 

最後の一匹はカプロスクスではなく、同じノトスクス類のモンテアルトスクス

*カプロスクスとモンテアルトスクスの関係についてはこちらをご覧ください。

 

ノトスクス類

最後の分岐図の上部、MahajangasuchidaePeirosauridaeのあたりです。

このおそらく世界唯一のフィギュアは、またもやマイナーワニ類の宝庫、サファリ・先史時代のワニチューブです。

 

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白亜紀前期

今のところ、この時代のワニ形類フィギュアはサルコスクスのみです。中央の大きい物はサファリ(2020)、左はコレクタ(2009)、その下はこれでもかのサファリ・ワニチューブ。そして、残念ながら絶版になってしまったフェバリット・ミニシーンシリーズのvsスピノサウルス。右はPNSOに次ぐクオリティの中国メーカー、ハオロングッドの1/35モデル。

 

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ジュラ紀後期

ジュンガルスクス

新秘宝館Vol.21で紹介したジュラ紀の陸棲ワニで、かってはスフェノスクス亜目に分類されていましたが(ウィキのスフェノスクス亜目の項には最後のスフェノスクス亜目と記されています)今は別の意見もある様です。骨格は実物大、復元模型は1/4スケールとなっています。

 

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ジュラ紀中期(~白亜紀中期)

タラットサウルス類メトリオリンクス科

新秘宝館Vol.63に載せた写真を再編集したものです。そちらもご覧ください。

 

上段はメトリオリンクス

左から、これもサファリのチューブですが、これはワニチューブでは無く、先史時代の海棲動物チューブ。チューブ恐るべし。アメリカ製レジンキット。海洋堂C.C.ザウルス(Vol.63ではチョコラザウルスとしていますが、こちらが正解)。中段は最近、狂暴そうな頭部のせいか人気があるダコサウルス。 これでもかのワニチューブ。PNSO製。さすがの出来です。何故かディアゴスティーニの「海の恐竜アンドコ」にラインナップされたお子様向きダコサウルス。

 

プレシオスクス

*マイナー過ぎて日本語ウィキが存在しないので、英語版を翻訳してください。サファリ(2016)が今のところ唯一無二のフィギュア。今後も多分そうでしょう。

*タラットスクス類のもう一つの系統、テレオサウルス科は、手足が鰭状に進化しておらずただのワニに見えるせいか一種もフィギュアになっていません。

  

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三畳紀後期(~ジュラ紀初期)

プロトスクス

この様な物が我が家にあろうとは!

ヤフオクか何かで手に入れた、チープなプラスチック製の、いわゆる白木の恐竜タイプの骨格模型なのですが、メーカーも製造時期も一切判りません。チープなオモチャにしては解説はしっかりしていて、「ワニ目:三畳紀後期からジュラ紀初期に北アメリカに分布(中略)現在のワニのなかまのもっとも古い型と考えられます。」などと書かれています。でもなんでここで寄りによってプロトスクスが選ばれたのか?謎です。今回の中で一番の珍品と言えるでしょう。

 

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せっかくの機会なので我が家のワニ形類化石も見ていただきましょう。3点ともモロッコ産のディロサウルスの椎骨で部位は判りません。データカードには、

Dryosaurus phosphaticus

Cretaceous Maastrichttian  Morocco

と記されていますが、ウィキによるとphosphaticus種は始新世から発見されるそうです。ディロサウルス科は白亜紀末期からも出ている様なので、phosphaticusMaastrichttianのどちらかが間違っているという事でしょうが、知る由もありません。一時期のミネラル・ショーでは毎年、スピノサウルスやカルカロドントサウルスの高価な椎骨に混ざってこれらディロサウルスが売られていて、恐竜に比べればお値段もお手頃で飾り映えもするので、予算が余った時についつい買ってしまい、増えてしまった次第です。

 

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最後に絶滅ワニ関係の書籍をまとめてみました。

 

トリケラトプスと巨大ワニ

黒川みつひろ/小峰書店(1993

*トリケラトプスの子供、リトルホーンの冒険絵本シリーズの一遍。

 

ねむりからさめた日本ワニ

野田道子/PHP研究所(1996

*マチカネワニ発見の物語。

 

ワニと龍―恐竜になれなかった動物の話

青木良輔/平凡社新書(2001

*著者は日本のワニ研究の第一人者。

 

キシワダワニとそのなかまたち

きしわだ自然資料館(2005

 

古代の海を支配した海竜

(ナショナルジオグラフィック200510月号)

*当時ゴジラという愛称で呼ばれていたダコサウルスが表紙

 

巨大絶滅動物マチカネワニ化石

小林快次/大阪大学出版会(2010

 

恐竜・講談社の動く図鑑MOVE

講談社(2011

*表紙がデイノ二クスvsティラノ

 

ワニと恐竜の共存

小林快次/北海道大学出版会(2013

*表紙はサルコスクスvsスコミムス

 

「恐竜時代の海の支配者」展図録

群馬県立自然史博物館企画展(2015

*タラットスクスや当館所蔵のゴニオフォリス(最近新種と判明)について詳しく説明されている。

 

地球生命・水際の興亡史

土屋健/技術評論社(2017

 

「大地のハンター展」図録

国立科学博物館(2021

*デイノスクスの実物大模型が展示された。

 

海竜事典

グレゴリー・ポール/共立出版(2024

 

海生爬虫類図鑑

ダレン・ナイシュ/河出書房新社(2025

 

「企画展ワニ」図録

国立科学博物館(2025

*大絶滅展と同時期に日本館で開催された、小規模ながら充実した内容の企画展で無料で配布された小冊子。

 

と、今回はここで終わるはずだったのですが、先ほど宅急便でこの様な物が届いたので、急遽追加です。

 

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バンダイの「いきもの大図鑑アルティメット」の1/12ナイルワニです。実は今回ネットで、普段やったことが無いワニフィギュアの検索をしていたところこれが引っ掛かったのです。非常に凝った作りで体中が可動します。原型は恐竜造形師の竹内しんぜんさん。何年か前のワンフェスのしんぜんさんのブースにこれが置いてあり遊ばせてもらい、とても欲しくなったのを思い出しました。その時は販売はしておらず残念な思いをしたのでリベンジです。

原稿の締め切りに間に合うかどうか判らなかったのですが、とりあえず購入しました。ギリで間に合ったので画像を紹介します。ご覧の様にポーズは自由自在、とことん遊べます。

 

さあこれから忙しい夏になります。パシフィコ横浜は先日行ったのですが特に収穫無しだったので、千葉県立中央博物館の恐竜展に期待しましょう。六本木の恐竜アート展は必見だし、細かい恐竜イベントはそこら中でやっています。出来れば福島まで足を延ばしてザヴァケファレを拝みたいものです。


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田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。