新恐竜秘宝館

Vol.55 おうちでステゴサウルス

先月ライブハウスは解禁になったものの、そう簡単にジャズ界に活気が戻ってくるわけもなく自粛生活の延長のような毎日が続いているので、自然と模型製作にも精が出るというもの。そんなわけで、前回触れた我家のストックキットの難物の一つ、海洋堂、山崎繁さん原型のステゴサウルス骨格に挑戦です。

n_hihoukan_no1.png

キットは1996年ごろの物で、初期のガレージキットに比べればだいぶ作りやすくなっていて、パーツの接着角度などもほぼ決まるのですが(創世期のガレキは接着面の成型から始めなければなりませんでした。)そこはレジンキット、細かい調整や創意工夫は必要です。参考までに、あまり親切とは言えない組み立て説明書をご覧ください。(画像1)

 

*今回は組み上げてから、ベースに安定して立たないのが判明(倒木とかあって足場が悪いベースのせいだ!)。肢や肩甲骨を付けなおす羽目になりました。

 

そして 秘宝館Vol.26でも愚痴をこぼした背中の皮骨板(山崎さんは説明書で背びれと呼んでいます。気に入ったので以下“背びれ”にします。)の取り付けですが、指定の「お互いを金属線で数珠繋ぎ」では位置決めが難しそうなので、一枚一枚細い銅線で背骨の棘突起とつなぎました。銅線も目立たず、背びれも浮いているように見えるのでまあ上出来かと。

 

*ほぼ組みあがってから、あの「恐竜学最前線」13号(1996.3学研)に山崎さんの原型制作記事が載っているのを発見。組み立て説明書を見ても判明しないところが多々あったので、作る前に見ておけば…と思っても後の祭りでした。

 

この様にかなり自由度があるキットなので、作るにあたってステゴサウルスについて一応調べたのですが、この見飽きた恐竜が、いかに謎に満ちたものか改めて思い知らされました。背びれ一つとっても、配置―多くの剣竜類の背びれが整然と対になって並んでいる様子なのにステゴサウルスだけ何故この有様?とか、機能―放熱もできるディスプレイ説が主流なようですが、他の剣竜類からどうような進化をしたのだろう?などと疑問だらけ。

 

*何かと参考になった「恐竜学最前線」4

1993.11 学研)は剣竜類に半分以上のページを割くという思い切った構成。特に、あの懐かしいBCF仮説https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%89のジョージ・オルシェフスキーさんが「剣竜類の起源と進化」と題して40ページにもわたり、これでもかと事細かに書いています。かなりのマニア向けでついていくのが大変。私も恥ずかしながら、当時斜め読みしたクチです。

 

さて、まずは背びれのつけ方を決めねば。選択肢は一列互い違いか2列互い違い(今はこの説が有力らしい)のどちらか(2列対称はパーツ的に無理。科博の展示のように一列直立にするとパーツが余ってしまいもったいない…)ですが、説明書の図はほぼ一列なのでそれにならいました。前述の最前線13号の山崎さんの作例でも同じようだったので、ほっとしました。ちなみに、後程紹介する骨格模型では、背びれが神経棘と一体でモールドされている事が多いので、必然的に一列が主流。フェバリットの豪華モデルをはじめ、いくつかの最近のモデルは棘突起を挟むように2列ある物もあります。どちらにしても、背びれは骨格に関節していないので、つき方の断定はできないわけで、見た目が良ければ良しとしましょう。(肉に埋まっている背びれの基部は一列でも、生体模型で見えている部分は2列と言うのはありかな?)

 

同じことは尾のスパイク(サゴマイザーと言うのだそうです)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%B4%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%BC

にも言えて、最近の復元ではでは水平にほぼ真横に突き出していますが、90年代は、前述のオルシェフスキー説によると、水平ですが斜め後方に向いていて、尾の先端よりも先に延びていたとのことで、時代的にもそれを採用しました。キットもほぼそのようになっているのですが、素直に組むと2対のスパイクを尾の上に接着するようになっていて何か違和感があるので、尾の真横に付けようと思い、一本ずつにバラして付けなおしました。

 

*オルシェフスキーは、尾を振り回した時に斜め後ろを向いたスパイクがちょうど良い角度で後方からの敵を突き刺す様を図解で説明していて、それはそれで説得力はあるのですが、果たしてそんなにうまくいくものか?アロサウルスの骨に開いたスパイクの穴というのも、アンモナイトについたモササウルスの歯型と一緒で、TV番組などでレプリカを当てがって「ほら、ピッタリ!」というのを観るにつれ、なんか調子が良すぎんじゃない!とついつい思ってしまうのです。それに、うまく骨に深々と突き刺さったとして、いくら筋肉で強化されているとはいえ細い尾の先端、自分の方にダメージは無かったのかと、例のディプロドクスの音速を超える速度で打ち下ろすという生ムチの尾同様、余計な心配をしてしまうのです。

 

最後の謎は喉の下の装甲。皮小骨と言うのだそうです。山崎さんは喉の鎧と呼んでいるのでこれも借用。鎧はなんでステゴサウルスにだけあるのか?あんな低い位置にある喉を誰から守るの?とか疑問点はありますが、最も気になるのはその発見史。実は19世紀末にマーシュにより発見された「ロードキル」と呼ばれる有名な標本に、すでに喉の鎧が存在するのです。こちらをどうぞ。https://www.si.edu/object/nmnhpaleobiology_3448873

こちらもぜひ。荒木一成さんのページです。

http://dinosaurs.art.coocan.jp/image/collection/knightst.htm

マーシュの化石をもとにチャールズ・ナイトが復元した模型。こんな物を持っているなんて…反則です!

 

にもかかわらず、以降鎧は封印され、復活後は近年の発見のように書かれていることが多い…というか私も今回「最前線」を読み返すまでそう思っていました。それどころか山崎さんも、最前線13号の製作記事の中の「喉の鎧」の写真に「最新版の証!」とキャプションを付けています。喉の鎧が復活したのは、1992年発見のこの産状化石辺りからでしょうか。https://www.colorado.edu/coloradan/2019/02/11/dinosaur-sky

*時折見かけるこちらの産状化石は「恐竜パンテオン」さんによると50%フェイクだそうです。http://www.dino-pantheon.com/kaneko/USA_1997/kaneko97frame.html

 

なぜマーシュの鎧が無かったことにされたのか、その後約1世紀の間、ステゴサウルスの絵や模型の喉が無防備だったわけを、誰か教えて下さい。

n_hihoukan_no2.png

そんなこんなでステゴサウルスをさんざん楽しんだ挙句完成したのがこちら(画像2)。いやでも愛着が沸くというものです。色は私が勝手にイメージしている、モリソン層色です。

 

さて当然のように、完成記念ステゴサウルス・フィギュア特集。生体模型の数は天文学的なので、骨格限定です。

n_hihoukan_no3.png

まずは2000年以降の比較的新しい喉の鎧付きの物(画像3)。代表格のフェバリットのものは本HPでじっくり見ていただくとして(ダイナソーリアルフィギュアコーナーです)、左からポーズスケルトン(リーメント)/恐竜骨格ミュージアム(エポック社・ガチャ)/r_planning.。いずれも15cm程の大きさでプレートは2列です。

n_hihoukan_no4.png

ポーズスケルトンはせっかく尾の先端を横に振ることができるのに、スパイクが上向きなのが残念。で、ドライヤーで炙って水平にして遊んでみました(画像4)。共演はエポック社恐竜ミュージアムのアロサウルスです。こうやってみると、なんだか本当に突き刺さりそうな気がしてきました。

n_hihoukan_no5.png

(画像5) 恐竜秘宝館Vol.60にも登場した、学研の傑作キット。プラモデルとしても発売されましたが(1978年)もとはといえば学年別科学雑誌の付録です。左のリニューアル版は4年の科学200310月号で登場。尾とスパイクが今風になっています。

n_hihoukan_no6.png

(画像6)の左は 秘宝館Vo.56以来の登場、90年代のGLENCOE MODELSからの再発物で、オリジナルはITC社の世界初の恐竜プラモデル(1957)。右は90年代終わりごろAndrew McMeel Publishingから発売されたスナップキット。卵型のケースに入ってブックレットやポスターのおまけまでついていました。この旧スタイルのステゴもなかなか良い出来ですが、同じシリーズのヒパクロサウルスとヴェロキラプトルは絶品です。一時は日本でも出回っていました。

n_hihoukan_no7.png

(画像7)はやはり90年代と思われるメーカー不明の蛍光モデル。プロポーションはまずまずなのですが大まかな作りで、棘突起など潔く省略されています。暗くして撮ったら思いのほか奇麗だったので、ネットで拾った懐かしのプラモデル、オーロラ・モンスターシリーズの「GLOWS IN THE DARK」のロゴを張り付けてお届けします。

n_hihoukan_no8.png

(画像8)は食玩など。左から70年代の明治恐竜の国チョコレート(彩色済み)/80年代のサッポロボーイおもしろカップ/チョコラザウルス(2001)/海洋堂のガチャ「恐竜全身骨格展示室」(2018)。そしてこれはお宝かもしれません。2014年に京都で行われた映画上映イベント「大怪獣大特撮大全集」の際に限定で配られたという、あの初代ゴジラの中で山根博士の書斎に飾られていたステゴサウルス骨格のミニチュアです。嘘のような話ですがアマゾンで59900円で売りに出ています。買う人がいるとは思えませんが。ちなみに私はヤフオクで、普通に数百円でゲットしました。

*チョコラザウルスと骨格展示室のものはそっくりですが、前肢のポーズが変えられています。左の二つもよく似ていますが、背びれの数や腸骨の形が違う、全くの別物です。

n_hihoukan_no9.png

(画像9)DOMの白木の恐竜シリーズのステゴ、我が家の骨格模型コレクション第一号です。記憶に間違えなければ、1979年の「大恐竜展」の会場で買ったもの。80cm程もあり、当時で5800円と高価な物でした。それまでは市販の恐竜骨格模型というものが日本には存在しなかったので、部屋に飾ってとても満足した覚えがあります。長年箪笥の上に放置してあり、今回下ろしたら右前足が欠損していました。おそらく箪笥の隙間に落ちたのだろうと…悲しい。

n_hihoukan_no10.png

ステゴサウルス模型特集の最後はお口直しに肉付きを。これはレアかなというものをセレクトしてみました。(画像10)上段は1950年代アメリカのMILLER (秘宝館Vol.55)とドイツのクラインヴェルカKlenwelka)恐竜公園の土産 (新秘宝館Vol.38に同イグアノドン有り)

下段左はシンクレア社 (秘宝館Vol.35)のセラミック製の物でプラ製と形は同じですが一回り小ぶり。

前列はいずれも金属製でAlva(秘宝館Vol.55)SRG(秘宝館Vol.5)Linemar(秘宝館Vol.55)

ブリキ製のフリクションで走る玩具で貴重なものです。背びれはゴムでできていた様でオークションの写真など見ても失われている事が多いのですが、ウチのは痕跡がへばりついていて、さらにお宝度が増しているのでは?

その後ろはアンティークではなく1994年発売のボストン科学博物館の物。https://www.dinofan.com/Collectibles/CollectiblesItemsPicView.aspx?ITID=79046

しかしわざわざステゴサウルス・ウングラトゥスを名乗り、ロバート・バッカ―博士のスパイク4対説を取り入れている辺り、別の意味でレアです。http://ancientruler.blog.fc2.com/blog-entry-36.html

 

ステゴサウルス模型はこれでおしまい。しかしステゴ骨格を作る傍ら、気分転換?にこんなのも作ってしまいました。(画像11)

n_hihoukan_no11.png

去年(あるいはおととし)のミネラルショーでなんとなく買って机の上に放ってあった「Trilobite Design Italia」のレジンキット、ハルキゲニアと北海道産の異常巻きアンモナイト、スカフィテス・プラヌスです。

実は前回作ったタリーモンスターで、何故かお気楽に作れる無脊椎モノに味を占めてしまったのです。今回も楽しく作る事ができました。ついでにバージェス動物群が脚光を浴びた90年代初め頃のワンフェスで購入、ひっそりと飾っていたオパビニア、アノマロカリス(無塗装ですが)そしてインパクト大の初代ハルキゲニア(いずれもメーカー不明)に日の目を見させる事にしました。そして中ほどの小さな写真は、ハルキゲニアの復元が上下逆になった90年代半ば過ぎのある日、何とはなしに粘土をこねて作った小品。何故か生き残っていました。まだ左が頭です。ハルキゲニアが上の様な姿になるのは2015年のことです。

n_hihoukan_no12.png

(画像12)は前回のお詫びと訂正。Bullyland 1/20マストドンサウルスを同スケールの三畳紀の恐竜と並べたいのに発売されていないなどと書いてしまったのですが、これがとんでもない勘違い。実はBullyland1/20三畳紀シリーズと言えるものがあって、マストドンサウルスはその一員でした。しかも全6種類すべて持っていたのに分散していたので気がつかなかったのです。情けない…。しかも事もあろうに、左中央のアリゾナサウルスを、新秘宝館Vol.20でスピノサウルスと紹介していました。これはもはや原稿料返納に値する大失態です…時効ですが。気を取り直して「マストドンサウルスを囲む三畳紀の仲間たち」を紹介いたしましょう。左側はクルロタルシ類。上からドイツ産のバトラコトムス(Batrachotomus)/痛恨のアリゾナサウルスhttps://paleontology.sakura.ne.jp/arizonasaurusu.html  パラティポトラックス http://paleontology.sakura.ne.jp/parathipotorakkusu.html

右側は恐竜で、ようやく耳なじみの名前が。プラテオサウルス/リリエンステルヌスhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%8C%E3%82%B9

そして手前はBullylandではなくSafariの“羽毛付き”コエロフィシスです。

n_hihoukan_no13.png

「おうちでステゴサウルス」最後は、ステゴサウルスが表紙になった本の表紙ギャラリーで締めたいと思います。(画像13)


前の記事

田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。