Vol.3 ティラノサウルスが尻尾を持ち上げた日 1
日でこそ尻尾を引きずった恐竜は「ノスタルジック」などと称されますが、1976年に衝撃的な「大恐竜時代」が出版されるまでは、私など一般の恐竜ファンは体を水平にして尾でバランスを取って歩く恐竜の姿など想像だにしなかったので、バッカーの描いた尾をピンと伸ばして疾走するディノニクスの姿に驚愕し感銘を受けたものです。
当時も恐竜の模型はあったのですが(エアフィックスのプラモ等)当然の様に3点直立で、新たな恐竜像に目覚めた私は満足できずそれらの改造を試みていました。
(写真1 - 香港製ゴムトーイ改造のディノニクスと日東(白)タミヤ(緑)のプラモデル改造のティラノサウルス)我ながらほほえましいです。
1985年頃、日本初(世界初かも)の水平姿勢のティラノサウルスのレジンキットが「海洋堂」から発売されます。お馴染み荒木一成さんの初期の傑作です(写真2)。両眼視していなかったり(当時は誰も両眼視など問題視していなかった)今の基準で見ると?な点もありますが、今にも咆哮が聞こえてきそうな躍動感溢れる素晴らしい作品だと思います。ただ当時のガレージキットは抜きが悪く、歯はエポキシパテで自作、接合部は大幅にパテ埋めして表面モールドを掘るという、大変な作業をしなければなりませんでした。
荒木さんは、他にディノニクス(写真3)メガロサウルス(写真4)等尾を高く持ち上げた恐竜を多数造形した、今様恐竜模型の開祖と言うべき人物です。ちなみに初期の海洋堂の恐竜模型ラインナップには旧態依然とした恐竜も結構含まれていて、変革の時代がしのばれます。
田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。