背中に帆を持つペルム紀の大型肉食動物
恐竜ではありません!
ディメトロドンは系統的には哺乳類を含む単弓類の原始的な動物で、恐竜ではありません。
恐竜として間違われる事の多い古生物といえば、翼竜や魚竜、モササウルスなどがありますが、それらの中ではディメトロドンは時代的にも系統的にも恐竜から一番遠い動物、という事になります。恐竜とディメトロドンの違いに気づく事は、古生物学や進化の面白さに深くハマる入口の一つかもしれません。
博物館ではお馴染みの古生物代表?
ディメトロドンは肉食の陸生古脊椎動物としてはティラノサウルス、スミロドンと並んで展示されている博物館が多い、お馴染みの古生物ではないでしょうか?
また原始的な単弓類、ペルム紀前期の大型肉食動物という点からも、博物館の展示内容として重要なポジション。世界的に見れば展示されている数はティラノサウルスやスミロドンよりも多いのでは、と推測しています。
海外、とくにディメトロドン化石の産出地であるアメリカの博物館を訪れると、かなりの確率でディメトロドンの骨格展示に出会います。すでに日本で何度もディメトロドンは見ていた私は、海外の博物館を訪れ始めた頃は「またディメトロドンか」と特に注目する事も無かったのですが、その後に知識が増えると見方が変わってきました。まずディメトロドン属には多くの種があり、体の大きさ、帆や頭の形等に違いがあります。また骨格展示にも、元になった化石の保存状態や組み立て手法・見せ方の違いがあります。そうなると出会う機会が多いだけに展示ごとに様々な個性を見比べられる古生物となり、「今度の博物館にはどんなディメトロドンがあるのかな?」と楽しみになりました。
昔から書籍などで紹介される事が多く、またレプリカが大阪市立自然史博物館にあるという事で、ディメトロドンと言えばこの白い背景に黒い半身の骨格という展示に馴染みのある方も多いのではないでしょうか?
アメリカ自然史博物館の古脊椎動物展示は年代別では無く系統群別になっています。恐竜は竜盤類と鳥盤類で展示ホールが分かれ、さらに哺乳類ホール、その他の爬虫類・両生類・魚類等のホール、という具合です。このディメトロドンは哺乳類ホールに展示されており、改めて「恐竜ではない」事を実感します。
ディメトロドンといえばエダフォサウルス
ディメトロドンと対で紹介される事が多いのがエダフォサウルスです。同じ地域・同じ時代、大きさも近く、そして背中に大きな帆があるというデザインまでディメトロドンと一緒ですが、肉食のディメトロドンに対してエダフォサウルスは植物食という動物として非常に大きな違いがあります。ディメトロドンに比べると小さめの頭・小さい歯に食べる物の違いが見て取れます。そのほか、両者の骨格を見比べると細かい違いもあり面白いのですが、ディメトロドンに比べエダフォサウルスの展示のある博物館が少ないのが残念なところです。
ディメトロドンに食べられていた?ディプロカウルス
ブーメラン型の頭で有名な両生類、ディプロカウルスもディメトロドンと同じペルム紀前期の北米から発見されています。
ディメトロドンはディプロカウルスを食べていた、という説もあります。恐竜以外の古生物として個性的なデザインのディメトロドンとディプロカウルスが同じ時代・同じ地域にいた、という事もペルム紀前期の面白さです。地質年代でいえばペルム紀は恐竜が現れる三畳紀の一つ前。そのペルム紀にも多様で魅力的な動物が沢山います。
是非、博物館等でペルム紀の展示にも注目してみると、恐竜とはまた違う古生物の魅力を楽しめるでしょう。
参考文献
- 「前恐竜時代 失われた魅惑のペルム紀世界」 著・土屋健 ブックマン社 2022年
- 「あぁ、愛しき古生物たち」著・土屋健 笠倉出版社 2018年
徳川 広和 Hirokazu Tokugawa
株式会社Actow代表取締役。
日本古生物学会会員。
1973年福岡生まれ。学術的な考証と立体物としての魅力が融合した作品製作をめざす恐竜・古生物復元模型作家。
博物館・イベントでの作品展示や商品用原型等を制作。『恐竜の復元』(学研)『なぞにせまれ!世界の恐竜』(汐文社)『ほんとは”よわい恐竜”じてん』(KADOKAWA)等の書籍へ作品、イラストを提供。
恐竜・古生物に関する各種イベントやワークショップの企画、講演などの活動も行う。