Vol.36 昭和ソフビ恐竜大全 - 40年代編
先日、高円寺のアンティーク・トイ専門店「ゴジラや」に何年かぶりに行って、ソフトビニール製のステゴサウルスの人形を買ってきました。ネットオークションなどというものが存在しなかった時代には、時々こうしたお店(下北沢の「懐かし屋」とか青山の「ビリケン商会」とか…)に足を運んで掘り出し恐竜物を漁ったもので、昭和レトロ玩具が並ぶ店内で昔同様恐竜物を探す自分もまた懐かしいと言う、二重構造懐古感に、いっとき浸ってきました。
その時に買ったステゴサウルス、メーカーのロゴなど無く正体不明なのですが、顔つき等から「大協」というメーカーの恐竜シリーズではないかと推測…と言うか思い込むことにしました。
昭和41年(1966)、ウルトラマンやゴジラなどの人気怪獣シリーズの版権を独占した「マルサン商店」がソフビ怪獣を発売。数年後ブルマァクがそれを引継ぎ、世は怪獣ブーム。それに便乗して、いわゆるバチモン怪獣(人気怪獣に似て非なる創作怪獣)を造っていたメーカーのひとつが「大協」で、“版権の存在しない”恐竜も発売していました。恐竜シリーズは「科学評論家相島敏夫先生監修・指導による〜生きていた恐竜と怪獣」と題して6種類ラインナップされていました。
写真 1:左からチラノザウルス、アロザウルス、ディアトリマ!、イグアノドン、ステゴザウルス(トリケラトプスは未入手。前述のステゴとイグアノドンは同メーカーの物との確証無し)。人形は相島先生の解説書と共にビニール袋に入っていますが(写真 2)、先生の監修の割にはティラノ(チラノ)もアロも前肢の指が4本もありますし、パッケージの絵も光線を吐いていて凄まじい限り。なんともはやです(写真 3)。
大協にはビッグサイズのソフビ恐竜もありました。写真 4のステゴとディメトロドンは45cm程も有り迫力があります。特にディメトロドンは造型もなかなか。
大協の恐竜は“おそらく40年代”といった程度しか判らないのですが、次のマルサン製の恐竜は発売年度が特定できます。昭和42年に、あのハリーハウゼンの映画「恐竜100万年」の公開に合わせたキャラクター商品として、トリケラトプス、ブロントサウルス、ステゴサウルス(映画には出てこない)の3種の恐竜(写真 5)とアーケロン(未入手)が発売されました。この時代の恐竜造型にリアルさは求めようもありませんが、なかなかどうしてユニークで味があるではありませんか。マルサン恐竜をひどく簡略化したコピー品(バチモン恐竜!)まで出回っていたようで(写真 6)、40年代のソフビ恐竜人形はまだまだ奥が深そうです。
次回はもう少し恐竜らしくなった昭和50年代のソフビ恐竜です。
田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。