Vol.53 大公開!「マンモス&スミロドン秘宝展」
前回、ウーリーマンモスとスミロドンのフィギュアを「星の数ほどあって面倒」と紹介をスルーしてしまいましたが、そのような事に労力を惜しまないのが秘宝館の基本精神ではなかったかと猛省。で今回は、意を決してマンモスとスミロドンのフィギュアと、関連したグッズなどのあれこれです。前回に引き続き恐竜は殆ど登場しないのは心苦しいのですが、マンモスとスミロドンといえば大抵の恐竜フィギュアシリーズのレギュラーメンバーですからご容赦。(フェバリットはバージェス物などと一緒にちゃんと分けています。)
さてまずはウーリーマンモス(以下マンモス)。白状してしまいますと、サーベルタイガーはともかく、マンモスはさほど好きなわけではなく、去年のお台場のマンモス展もそのうち行こうと思っていて気付いたら終わっていたという始末。フィギュアも恐竜シリーズをコンプする為に買い求めた程度なので買い漏らした物も多く、星の数ほどは無いだろうとたかを括っていざ並べてみたら、うんざりする位ありました。これでもまだ、シュライヒ、コレクタ、そしてフェバリットと、肝心なところが欠けています。小さな物はとても把握できません。
そちらはいつも頼りになる「恐竜おもちゃの博物館」でご覧ください。
マンモスフィギュアの姿はどれも似たり寄ったりで並べてみても今一つ面白みに欠けますが、これは洞窟壁画に克明に描かれてしまっているし、冷凍マンモスが発見され毛の色まで判っているとあっては致し方ないこと。
でも今回、忘れかけていた我家のマンモスコレクションを漁ってみたら、なかなかのお宝や思いがけないスグレモノを発見できたのは収穫でした。
前回、恐竜シリーズの一員として登場したのは「STARLUX」「MARX」「大英自然史博物館」「NABISCO」「SHREDDIES」「海洋堂」のマンモス達。今回はそれ以外のマンモスをこれでもかとご紹介。
(画像1)まずは何をおいてもこれを紹介しなくては。70年代の傑作プラモデル、オーロラ社Prehistoric Scenesシリーズのウーリーマンモスです。秘宝館 Vol.57でPrehistoric Scenesシリーズの特集をして以来の再登場。今回、未塗装だったベースに色を塗りついに完成させました。本体を作ったのがおそらく1980年頃ですから、完成まで実に40年の歳月が流れたわけで、前回のマストドン同様、何かしみじみとしてしまいました。マンモスはやはり未塗装だった爪を塗った以外は当時のまま。稚拙な工作が目立ちますが、青春の思い出の一品なので…。
(画像2)生体モデル。
上段の後列は左から「BULLYLAND」「PAPO」。前列はおなじみ「アニア」の親子とイタリアの「CASTAGNA」というメーカーのセラミック製。
下段の後列は「TYCO」のアイスエイジシリーズ。メーカー不明の物をはさんで、「ハーティロビン」という国内メーカーが昭和の終わり頃に出した「大恐竜時代」シリーズのもの。前列は正体不明のゼンマイ仕掛けと90年代の「BULLYLAND」「SCHLEICH」それに70年代のイギリス製「INPRO」
(画像3)骨格モデル。
左から以前フェバリットから発売されていた事もある、半身の「4D VISION」シリーズ。とても良い出来です。その隣は松野工業という所が輸入販売しているもので、他のメーカーからも発掘キットとして発売されているようです。そして前回のグリプトドンと同じ「GEOWORLD」の発掘キット「アイスエイジ」シリーズ(残念なことに少しもマンモスらしくない…)。右端はエールが輸入販売しているもので、牙がくっつきすぎて鼻が入る余地が無いのが難点です。前列の小さいのは昔の食玩で「明治・恐竜の国チョコレート」(秘宝館Vol.44)、「サッポロボーイおもしろカップ(秘宝館Vol.45)、それに、ガチャポンと思われる、メーカー不明のゴム製駄玩具です。
こうして見ると、例えばフェバリットの恐竜スケルトンモデルのような本格的な骨格モデルが無いのが残念。新生代随一のスーパースター、マンモスでさえこの有様ですから、他の絶滅哺乳類骨格モデルなど推して知るべしです。しかし我が家の押し入れの中からこんな物が出てきました。
(画像4)約20年前の発掘キット。今でこそ化石発掘キットはありふれていて、それこそ百均ショップでも見掛ける程ですが、これはその黎明期の物。買い集めた全3種のうち、当時掘ってみたのは下段のどう見てもアロサウルスなティラノサウルスだけですが、見ての通りの感じの良さに、つい途中で手を止め産状化石にしてしまいました。今回改めてマンモスと、ついでにスティラコサウルスを掘り出したのですが、現在のお子様向きの物と違って化石感満点で、細かく作り込まれ、マンモスなど臼歯まで再現されています。牙がもう少し外を向いていたらとか、スティラコのフリルが大きすぎとかはちょっと残念なところですが、とにかく掘っていて嬉しくなるキットです。
(画像5)マンモスほどぬいぐるみ向きの古生物はいないでしょう。巷のぬいぐるみマンモスは数知れずですが、一応ぬいぐるみ禁の我が家には2匹だけ。左は前回登場したカップヌードルCM「hungry?」のノベルティグッズの仲間でヤフオクで最近手に入れました。右は少女マンモスYUKAが初来日した、2013年パシフィコ横浜で開催された「特別展マンモスYUKA」の時に、他にお土産が無くて仕方なく買ったものです。どうでもいいことですが、この時ウーリーマンモスの事をケマンモスと表記していたのが可笑しかった記憶が…普通ケナガマンモスでは?もっともサイは毛サイとも言いますけど。
そして手前左は出所不明の陶器製。右はマクドナルドのハッピーセット。映画「アイス・エイジ」のキャラです。小さなガラス製のマンモスもいました。
(画像6)マンモスの最後は70年代のお宝?に驚愕のカルトムービーグッズです。
骨格はマスダヤのホネホネシリーズ(70年代)。ゼンマイで歩きます。右はマルシンの「大恐竜シリーズ」(こちらも推定70年代)
どちらもなかなか見かけません。
下は映画「北京原人 Who are you?」のバイオマンモス。買った覚えもないのに、いつの間にか部屋の隅に転がっていました。この映画、未見だったのでネットで調べたら、実はとんでもないカルトムービーだったことが判明しました。「北京原人 who are you 感想」でググってみてください。抱腹絶倒です。こうまでボロクソに言われていると観たくもなりますが、何故か中古DVDが出回っておらず、アマゾンで3000円を出すのはもう少し考えてからにしようかなと…。
他のマンモスとスミロドンが登場する映画は、後程いくつか紹介いたします。
さてスミロドンです。スミロドンのフィギュアの歴史は古く、1933年のシカゴ・ワールドフェアの土産として販売されています。同時に売られたブロントサウルスは手に入れましたが(秘宝館Vol.55)スミロドンはさすがに持っていません。こちらでご覧ください。
https://www.worthpoint.com/worthopedia/1933-chicago-world-fair-saber-tooth-1910025892
サーベル・トゥース・タイガーと表記されていますが、尻尾の短さや逞しさからどう見てもスミロドンです。いわゆるサーベルタイガー(サーベル・トゥース・タイガーとかサーベル・トゥース・キャットと呼ばれることも多いのですが、ここではかっこいいのでサーベルタイガーと呼びます)は、犬歯が長いネコ科動物の総称で、スミロドンはその1属に過ぎませんが、フィギュア界では圧倒的王者です。他の種類は前回紹介した通り寂しい限り。(最近、ジュラシックハンターズというブランドの[偽剣歯虎]ユースミルスがコレクションに追加されましたが)
(画像7)我が家のスミロドン一番手はやはりオーロラ。オーロラの古生物の造形は今見ても素晴らしいもので、特に当時と復元が変わっていない哺乳類などは、現在のフィギュアと比べても何ら遜色ありません。
隣は「TYCO」のアイスエイジシリーズ。このシリーズ、先ほどのマンモスと、持ってはいませんがメガテリウムがあるようです。タイミングを逸してブリスターパックから出さずじまい。スミソニアン協会の名前があるので博物館で売られていたのでしょう。
(画像8)生体モデル
上段左から「COLLECTA」「PAPO」「SAFARI 2004/1988/1997」。前回登場の「BULLYLAND」のたてがみ付きのものも含め、どれも個性的です。マンモスと違って骨格しか知られていないので表現の自由度が増しているのでしょう。
下段は「X-PLUS」から発売されていたレイ・ハリーハウゼン・フィギュアシリーズの、映画「シンドバッド・虎の目大冒険」に登場の逞しいサーベルタイガー(尻尾が短いので勝手にスミロドンと認定)。スマートなプロポーションのタカラトミーの>「アニア」。何よりもアニアなのに余計な可動部がない(あごの開閉だけ)のが嬉しい。そして狂暴そうなパピネットの「大恐竜時代」と対照的に品が良い「フェバリット」。小さなものはマンモスも発売していた「INPRO」とメーカー不明のアメリカ製消しゴムです(秘宝館Vol.53)。
(画像9)骨格モデル
骨格モデルは意外と少なく我が家にはこれだけ。左はエポック社のガチャポン「骨格ミュージアム」の物ですが、なかなか良い感じなので彩色したもの。右は「GEOWORLD」と童友社の「恐竜ミュージアム」(現在、一部の恐竜が「恐竜ミュージアムAR」として復活しているようです)。そして大昔のガチャポンの消しゴム?でやはり秘宝館 Vol.53の写真10で紹介したものと同じシリーズです。
頭骨だけでしたら前回紹介済みのチョコラザウルス、サファリ「先史時代の哺乳類スカル」チューブ。そしてフェバリットの「頭骨消しゴムシリーズ」の物があります。消しゴムとは名ばかりの非常に精巧な頭骨模型で、しかも定価は消しゴム価格の660円!(え゛~!)無茶苦茶お得です。色を塗ってあげればこの通り(画像10)。レプリカと並べてもひけをとりません。
*恐竜おもちゃの博物館のスミロドンはこちらで。
フィギュアの話はここまでですが、マンモスやサーベルタイガーについてディープな話題など。
【セレーション】
何故かあまり語られることが無いのですが、少なくとも一部のサーベルタイガーの犬歯には、肉食恐竜そっくりなセレーションがあります。こちらをご覧ください。
(画像11)去年暮れの池袋のミネラルショーで見つけた(欲しかったのですが恐竜でいっぱいいっぱいで涙を呑みました)、中国産アンフィマカイロドゥス(Amphimachairodus. Palanderi)のナマ化石。見事なセレーションではありませんか。肉食恐竜のセレーションについては、入門書では必ずステーキナイフに例えられ、コアなマニアは化石の歯を前にして目の色を変えるのですが、サーベルタイガーのセレーションは古生物本にも載っていません。いったいぜんたいどうした事なのでしょうか?
他のサーベルタイガーはどうなのかと、セレーションの画像をネットで検索してみましたが、なかなか見つかりませんでした。かろうじて三つほど。
https://twitter.com/GET_AWAY_TRIKE/status/1134411439656001536
https://www.worthpoint.com/worthopedia/fossil-sabertooth-cat-xenosmilus-136055646
スミロドンは歯の後ろ側だけにあるようです。ホモテリウムの歯は短いですが立派なセレーションがあります。
セレーションは肉食恐竜同様、肉を切り裂くための物で、やはり薄くて長大な牙を獲物に打ち込んだのでしょう。ライオンや虎は太い牙で獲物の喉笛に噛み付き気管を圧迫して窒息死させるのだそうです。
【映画】
マンモス・スミロドンが登場する、印象に残っている映画をいくつか挙げてみます。
●「紀元前100万年」(1940)
言わずと知れたあの「恐竜100万年」の元ネタ。恐竜は伝統の背びれ付きトカゲに着ぐるみアロ(恐竜100万年と同じシーン)とイマイチですが、象にメイクをしたマンモスはなかなか好感が持てます(画像12)。
●「シンドバッド虎の眼大冒険」(1977)
フィギュアでも紹介したマッチョな悪役のスミロドンが一角巨人を倒し、シンドバッドに退治されます。モデルアニメーションのサーベルタイガーはこれだけ。
●「人類創生」(1981)
象メイクのマンモスといえばこの映画。当時びっくりした記憶があります。暴走シーンが見事でした。サーベルタイガーはライオンに義歯を装着したものですが嫌がらずに演技しています。いったいどうやって象とライオンにメイクしたのでしょうか?メーキング映像があったら見てみたいものです。
●「サーベルタイガー・パーク」(2005)
一山いくらの問答無用クズ映画の一つですが、スミロドンのデザインはまあまあ。邦題にあるようにテーマパーク物なのですが、チラと出てくるお土産ショップにサーベルタイガーグッズの影は無し。売られていたのはポリネシア風民芸品と虎のぬいぐるみで、私としてはここがこの映画で一番怒りを覚えるところです。こんなところで手を抜くな!
ただこの手のゴミ映画はネットで盛り上がります。
https://www.youtube.com/watch?v=3vDtJ9EjtsQ
https://ameblo.jp/8haku5inukyuu/entry-10756843542.html
●「紀元前1万年」(2008)
大作映画監督エメリッヒらしい、大風呂敷を広げすぎて終わる映画だった印象が残っていますが、CGのマンモスとスミロドンはさすがに良くできていました。残念ながらフィギュアは発売されなかったようです。あの「北京原人」でさえフィギュア化されたのに、なぜ???
●「マンモスVSサーベルタイガー 氷河期大戦争」(2010)
マンモスの子供の成長を描く、韓国制作のドキュメンタリー風ドラマ。CGはそこそこですが、重量感に乏しいのはこのクラスの映画としては致し方ないか。サーベルタイガーの尻尾は長いのでスミロドンとは別の属でしょうか?それとも何も考えていないのでしょうか?
*この作品の監督は2012年にもお子様向きの「大恐竜時代 タルボサウルスvsティラノサウスル」を撮っていますが、こちらも「ちょっとなあ…」という感じ。
予告編の映像は無いのですが、辛口の批評有り。
●「アルファ 帰還りし者たち」」(2018)
こちらは人類と犬類(ダイアウルフ?)のファーストコンタクトを描いた地味な作品。マンモス(と毛サイ)はオープニングの遠景に一瞬出てくるだけ。サーベルタイガーは洞窟の中に登場で、暗くてシルエットしか判りません。予告編の方がまだ見えますが、ライオンに細工したものかも。そのせいか尻尾が普通に長いのでスミロドンには見えず…と、もやもや感が残る映画です。そもそも「帰還りし」が読めませんでした。「かえりし」なんだそうです。
マンモスのフィギュアのところで紹介した、アニメ映画「アイス・エイジ」シリーズ は、擬人化アニメということもあって実は全部は観ていません。氷河期映画は他にも沢山あるのでしょうが中生代ものほど思い入れが無く、アンテナもはっていません。例えば「跳んで埼玉」にプテラノドンが、「アクアマン」に恐竜が、一瞬だけ登場するとの情報が入るとすかさず劇場に確認に出かけるのですが、「アルファ」など公開されたことすら知りませんでした。前回と今回、絶滅哺乳類を特集したのを機に、少しは映像も漁ってみようと思います。
【本】
最後に蔵書の中からマンモスとスミロドンが表紙に描かれた本を並べてみました。説明はつけませんが眺めて楽しんでいただければと思います。トリをとっているのはこの2月に出たばかりの「恐竜キングダム(12)マンモスvsスミロドン」(角川まんが科学シリーズ)です。(画像13)
お知らせ
3月20日から開催されるはずだった(コロナの為、現在休館になっています)「第62回企画展・空にいどんだ勇者たち」に、我が家の翼竜が数羽参加しています。(画像14)
写真はごく最近ヤフオクでゲットした物で、ベルリン自然史博物館のランフォリンクスのレプリカですが、なんと厚紙でできていて、作られたのは古の西ドイツ。いい買い物をしました。どうやら秘宝館Vol.13でご覧いただいた化石レリーフのレターセットと同じメーカーの物の様です。他数点のレプリカと共に群馬へ。同じ回の秘宝館に登場の「だくちる君」も一緒に出張しています。コロナが収まったら、ぜひ足をお運びください。
詳しくは群馬自然史のHPで。
田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。