Vol.54 おうちで恐竜
いやはや大変な状況になってしまいました。
私も家で自粛、いや正確には仕事場のライブハウスが軒並み自粛で仕事は全てキャンセル、日雇いの身なので収入は年金とこの原稿料のみという有様でひっそりと家に籠らざるを得ず、否が応でも「おうちで恐竜」を実践する事になってしまいました。で思い立ったのが、老後の愉しみのために長年ため込んだ恐竜模型を作る事。今回は20年位前のワンフェスで買って寝かしてあった古生物のガレージキット8個(セット物もあるので10体)を一気に作りました。久々に味わうレジンキットは、やはり手間暇がかかる難物でした。
今回はその苦労の結果をお披露目するのですが、関連したフィギュアなども添えたいと思います。が、その前に・・・。
コロナ関係の時事ネタで、こんな記事を発見しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/973dbc6285f7734b144e7eadb26a659fc9d62a09
「新秘宝館Vol.47」で触れた英単語DINOSAURの不当な扱いがここでも!またまた憤ってしまいました。
近い将来、図鑑の羽毛恐竜で育った世代が、辞書の恐竜=「大きすぎて役に立たないもの」「時代遅れの人」の項を削除してくれることを願ってやみません。
でも最後の「共和党員の多くは進化論を信じないのだ。」の落ちはなかなか良かった!
では本題です。今回作ったキットの多くは、秘宝館Vol.64で紹介したガレージキットメーカーさんの、その後の作品達です。Vol.64も併せてご覧ください。
(画像1)は作る前に並べて気合を入れている状態。ガレージキットのレジンの色が何か懐かしい。サウロペルタは以前に組んで10年以上放置してあった物。オウラノサウルスとサメは一体成型です。
(画像2)完成したサウロペルタとその眷族。
サウロペルタはアルカード製で1/20スケール。30㎝ほどあって今回一番の大物です。2002年のワンフェスで購入。一応組んではあったものの、こうまでゴツゴツしているとさすがにモールドの抜けが悪く、パテ埋めが結構大変でした。
実はノドサウルス科のフィギュアが作られるようになったのは比較的最近で、それまで鎧竜の模型と言えばほぼ全てがアンキロサウルスでした。ようやく出そろったノドサウルス科フィギュアをご紹介。下段左から
ボレアロぺルタ(Collecta)/エドモントニア(ボストン科学博物館)/ポラカントゥス(Papo)/ア二マンタルクス(Schleich)/ポラカントゥス(ウォーキングwithダイナソー)/サウロペルタ(ハピネット大恐竜時代)/パウパウサウルス(セガトイズ恐竜キング)
他にサウロペルタ(Safari)/ポラカントゥス(Collecta)/ヒラエオサウルス(Collecta)などがあります。海洋堂のガチャや食玩にもサウロペルタやボレアロぺルタがいます。
(画像3)同じくアルカードの1/48オウラノサウルス(18cm程)とSHINZEN造形研究所のアロサウルス(2001ワンフェス)。
オウラノサウルスはパーティングラインを消して色を塗るだけなので、比較的すんなりできましたが、それにしてもアルカードさんの恐竜は、オウラノにしろ、サウロペルタにしろ、眼が小さくて塗るのが大変。さらにアロは8cmほど(1/100?)と極小で、眼や歯の塗りなどハズキルーペをもってしても歯が立ちません。ほぼ勘で作ったのですが、写真で拡大されると残念な結果が…。昔作った同じミニシリーズのディプロドクス(全長は同じくらいですが細かさ感はさらに上)はうまく作れたのに…と改めて己の歳を痛感させられました。
(画像4)ガレイニア頭骨(8cm)
作者は村瀬善明さん。村瀬さんは90年代に頭骨のシリーズを手掛けていて、私は秘宝館Vol.64で紹介したティラノとナノティラヌス以外にも、トリケラトプス、パキリノサウルス、アリオラムス、モノロフォサウルスを完成させ、残る最後の一つがこのガレイニアでした。
ガレイニアとは、1992年に新高輪プリンスホテルで開催された「最後の恐竜王国」にロシアからやってきた、初期のクルロタルシ類でエリスロスクス科に属するそうで学名はGarjania prima
https://twitter.com/rex_toyo/status/1070818522614292481
http://www.reptileevolution.com/garjainia.htm
と、ここまで調べるのに大苦戦。キットが入っていた袋には「ガレイニア」とカタカナで書いてあるのみで、ネットでガレイニアを検索しても何も出てきません。形から偽鰐類だろうと推測して、片っ端から偽鰐類で検索、ようやくたどり着いたわけです。
ここまでマイナーな動物のフィギュアは、マニアックな古代ワニを集めたSafariの「古代ワニチューブ」にも入っていないので、代わりに同じ偽鰐類仲間で何故か最近人気のポストスクスと、かっては恐竜の祖先として学習図鑑の常連だったオルニトスクス、そして2010年の「地球最古の恐竜展」フィギュアのサウロスクスを並べてみました。
*「地球最古の恐竜展」は三畳紀のアルゼンチンのクルロタルシ類や初期の恐竜にスポットを当てたディープな展示会で、会場限定ガチャポンでは、小さなサウロスクスや別の偽鰐類ファソラスクスの骨格などレアなアイテムが売られていました。)
上段左からSafari /Papo,/ウォーキングwithダイナソーのポストスクス、ケナーJPシリーズのオルニトスクス、手前は地球最古のサウロスクス。
下段は度々登場しているsansyo88さん作の手作りポストスクス(20cm程)に、懐かしいスタイルのオルニトスクス2体。おなじみフランスのStarlux(12cm)と90年代のUSトイ、Thunder Beastsのものです。
*ポストスクスフィギュアをネットで調べていて発覚したのですが、このコロナ禍のさなか、事もあろうに、恐れていたマテル社のジュラシック・ワールドシリーズの新作が発売されていました。なんとポストスクスとサウロペルタが入っていて、こらえきれず購入自粛の禁を破ろうとヨドバシドットコムを見たら、4月25日発売にも関わらずポストスクスは既に売り切れ。発売当時はヨドバシカメラ横浜店は閉店していましたので見逃してしまったわけです。コロナの影響がこんなところまで…。サウロペルタとやたらかっこいいエドモントサウルスを悔し紛れに注文してしまいました。
(画像5)タリーモンスター
今回、いちばん作っていて楽しかったものです。トゥリモンストゥルムという言いにくく重厚な属名を持つこの生物、バージェス動物群が脚光を浴びる前までは分類不明奇天烈古生物の王様でした。今見てもその冗談さ加減ではオパビニアやハルキゲニアに引けを取りません。しかも未だに正体不明!(最近脊椎動物説が流れましたが、それも覆りそうです。)
https://news.nicovideo.jp/watch/nw6105278
このキットをいつ入手したのかは定かではありませんが、下段の二つの実物化石(右の2つはネガポジ)を購入(確か数千円とお得だった?)したのは、まだ恐竜化石が手に入りにくく珍しい化石に飢えていた80年代だと思います。そのころからタリーモンスターの知名度が上がり、90年代初めにはバージェスモンスターが台頭するので、その間の事かなと推測されます。
モデルは実物大でほぼ20㎝。パーツ(と言っても口吻と眼だけですが)の合いは悪く、歯も表現されていないのでそれらしく削ったりと、なかなか手がかかりましたが、(恐竜と違って?)自由に作れる分気楽で楽しめました。口吻パーツはもう一種グニャグニャしたのがあって選べるようになっていましたが、説明書も無く、どうにもおさまりが悪いので、ストレートにしました。台座はスライム玩具(もちろんミニ恐竜が入った)のケースにパテ盛りした自作です。
(画像6)ヒボドゥス&ステタカントゥス
これらは現在も活動しているネコワークスというメーカーの物で、ネットで購入できます。
http://hlj.co.jp/product/NKWS-17/Rsc
http://hlj.co.jp/product/NKWS-18/Rsc
2009年発売との事なので、その年のワンフェスで買ったのでしょう。10㎝弱と小さな物。これも楽しく塗れました。
古代ザメと言うとまずメガロドンが頭に浮かびますが、Safariの「古代ザメチューブ」は古生代と中生代限定でメガロドンは入っていません。思い切った事をするものです。並べてみましたが名前の読み方すら定かでないものも…。解説の名前を丸写しします。左上から
Sarcoprion/Stethacanthus/Cladoselache/Oretoxyrhina/Edestus/Hybodus/Scapanorhynchus/Helicoprion/Xenacanthus/Orthacanthus
多少なじみがあったのは、クラドセラケとヘリコプリオン位でした。
(画像7)ディメトロドン&カコプス(1/15スケール)
最後は、今や日本を代表する古生物造形作家の一人となった徳川広和さんが、2002年のワンフェスで関西のガレージキットメーカー「エンドルフィン」の一員として発表した物。若いころの徳川さんはきゃしゃな方で、それを反映してか当時の作品はどれもスマートで足が細いなあと、そのころ密かに思っておりました。
それはともかく、ディメトロドンはティラノサウルスに次ぐのではないかという程の古生物界のスーパースターで、フィギュアを挙げ出したらとんでもないことになるのでここはさりげなくスルー。注目はカコプスです。私の知る限り唯一のフィギュア。これも小さくて、歳をとってから作る物じゃありませんでした。
カコプス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%B3%E3%83%97%E3%82%B9
はペルム紀の両生類なのでディメトロドンに襲われているわけですが、考えてみれば、私はディメトロドンがいなければカコプスがどの時代の生物かも判らない位、絶滅両生類には無知・無関心でした。せっかく時間をもてあましているのだからこれを機に少しは勉強しようと思い、家にあるフィギュアを集めて、その情報をネットで検索してみました。
そんなわけでここからは急遽
「おうちで絶滅両生類」です。
絶滅両生類フィギュア図鑑
(画像8)絶滅両生類がとても充実している、新秘宝館Vol.8で紹介済みのPlay Visions(食玩サイズ)。今回はネット解説付きです。
左上から
ゲロバトラクス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%B9
ディプロカウルス
ペルトバトラクス
トリアバトラクス
下段左から
クラッシギリヌス
エオギリヌス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%AA%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%83%8C%E3%82%B9
プラティヒストリクス
エリオプス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%97%E3%82%B9
(画像9)上段はこちらは何度も登場のStarlux( 7~10㎝)
左から
イクチオステガ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%81%E3%82%AA%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%AC
ラビリントドン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%B7%E6%AD%AF%E4%BA%9C%E7%B6%B1
ラビリントドンは現在では迷歯亜綱にその名を留めるのみですが、19世紀から20世紀初頭にかけては、太古の両生類を代表する大スターでした。あの水晶宮公園にも2匹たたずんでいますし(秘宝館Vol.39)、当時を代表するSF小説、エドガー・ライス・バロウズのペルシダーシリーズhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA
や、A・メリットの「ムーン・プール」http://quarters.jugem.jp/?eid=18にも登場します。
ディプロカウルス
その特徴的な頭人気で、絶滅両生類の中では最もフィギュア化されています。秘宝館Vol.49/新秘宝館Vol.43にも登場。もちろんチョコラザウルスにも加えられています。私が絶滅両生類で属名を一発で言い当てられるのはこれくらいか。
そして下段もBullylandのマストドンサウルス。1/20スケール(20cm)なので海洋堂の恐竜と並べたいところでしたが、残念ながら三畳紀の恐竜は発売されませんでした。もし三畳紀の水辺で、マストドンサウルスがクルロタルシ類と覇を競い恐竜を捕食していたとしたら、ちょっと応援したくなりますね。
(画像10)上の段は海洋堂、松村しのぶさん原形の90年代のレジンキット、ディプロカウルス(13cm位)と、sansyo88さんの一品物、プリオノスクス(尾を曲げた状態で30㎝弱と大型)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%8E%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%82%B9
下の段は新秘宝館Vol.27にも登場した、造形作家ときわたけしさんのアートな10㎝程のエリオプス。そしてここに並べるのは身の程知らずで恥ずかしい限りなのですが、私が若い頃に作った、オリジナルエリオプスのジオラマです。ベースの直系9cm。
(画像11)画像上段はだいぶ以前にミネラルフェアで購入した、いかにも中国産といった香り漂うイクチオステガの置物。20cmクラスのコールドキャスト製の上、台座も重厚なので、ずっしり感が半端ではありません。裏に「魚石螈」と記されています。イクチオステガの中国名です。(忘れていましたが、なんと秘宝館Vol.2に登場していました。)
画像下段はディズニー映画「ダイナソー」に出てくる名もなき巨大両生類のいったいどう遊んでいいのかわからない上半身と、昭和の食玩「コビト恐竜ガム」の景品ディプロカウルス、そしてレトロな味わいで、まんだらけ辺りで高値を呼んでいる「ぶたのはな」ブランドのソフビモデル、エリオプスです。
今回作ったキットは8種類でしたが、我家には未組み立てのガレージキットがまだまだ眠っています。中にはブラックヒルズ製の巨大なスー骨格、ANTSのアロサウルス骨格(秘宝館Vol.25)海洋堂のステゴサウルス骨格(秘宝館Vol.26)など、一筋縄ではいかない代物も控えていて、まだ当分、自粛生活を送るのに不自由なさそうです。
「おうちで恐竜&シャーロック・ホームズ」
やはり家にいるとついついテレビを見てしまうもので、連続ドラマもついこの間終わった「隕石家族」(彗星が衝突する話なので、恐竜がチラっとでも出るかと期待したのですが…)や「凪のお暇」一挙放送などなど、普段はあまり観ることも無いジャンルのものまで、まったりとしながら観ていました。そんな中で、少し前にCSで再放送された「ミス・シャーロック」(2年前にHuluで放送)で思わぬ発見が。「ミス・シャーロック」は竹内結子が女性版シャーロック・ホームズを演じ、舞台を東京に置き換えたホームズ物で、例えばワトソンは和都さん、アパートにも221Bの文字、そしてモリアティー教授は…と、シャーロッキアンの心をくすぐるであろうしかけが随所に散りばめられているらしい(私は残念ながらシャーロッキアンではないので深くは判りません)凝りまくったドラマでした。で、何を見つけたかというと、見事なこだわりで作られているシャーロックの部屋の窓辺に、恐竜の骨格模型が置かれていたのです。一度もアップにはならなかったので拡大してボケボケの写真ですが(画像12)、以前科博のエントランスに展示されていたタルボサウルスそっくり。プロポーションも良いし、細かく作り込まれていそうな感じです。市販の模型でこの様な物は見たことが無いので、美術スタッフの手作りかも。だとしたら大拍手です。欲しい!と心の中で叫んでしまいました。
「ロスト・ワールド」と同じ作者の作品なのに、シャーロック・ホームズの原作には恐竜は出てきません(…多分)。しかし映画やTVドラマには何度か登場しています。
●シャーロック・ホームズの冒険
たしかネッシーは実は潜水艦が偽装した物だったという話だったと思いますが、記憶に間違えなければ最後に本物のネッシーが一瞬登場したような…しなかったような…別の映画と混同しているかも。
●ホームズVSモンスター
Z級映画の大手アサイラムが2009年に製作したなかなかの大作で、一部のマニアの期待通りの映画。ドラゴンやクラーケンに混ざって肉食恐竜が暴れるのですが、実はすべてロボットだった…怒りの批評がネットにあふれています。
https://filmarks.com/movies/57909
予告編も観られます。
https://www.youtube.com/watch?v=GycOXcjjh2M
●エレメンタリー2 ホームズ&ワトソンin NY
#14「眠れる化石」
ナノティラヌスの化石をめぐって事件が…という本格的な恐竜もの。トリボロ自然史博物館というのが出てきますが実在の博物館かどうかは判りません。
https://artworldscenes.tumblr.com/post/81195712124/triboro-museum-of-natural-history-supposedly-but
では今回はこのあたりで。
くれぐれもお気を付けください。
田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。