新恐竜秘宝館

Vol.31 「失われた世界・映像編」

今回は「ロスト・ワールド」を原作とした映画、TVドラマを年代順に紹介します。
秘宝館Vol.54で取り上げた「地底旅行」映画と同じく「あれれ???」という代物が多いのですが、それはそれで楽しむのがマニアのたしなみというもの。ちなみに全ての作品で、なんだかんだ理由を付けて原作には登場しないヒロインが探検隊に加わっており、時には原住民の中に肌もあらわな美女がいたりもしますが、もちろん冒険映画に美女キャラは不可欠です。

1925「ロスト・ワールド」(アメリカ)
今更説明するまでも無い映画史に残る名作。全ての恐竜映画の原点です。日本でも公開時には大変なインパクトがあった様で、例えば新秘宝館Vol,29で紹介した小説「巨竜と海賊」の中にも「日比谷の公会堂で見た映画ロスト・ワールド云々」という会話があります。しかし残念ながら公開時の映画雑誌等は持っていません。何かその辺りの情報が無いかとネットで調べたところ、コナン・ドイル研究家の方が書かれているこんな記事を見つけました。
http://blog.livedoor.jp/bsi2211/archives/51186036.html

1980年代、ビデオテープレコーダーという夢の様な機械が一般家庭に普及、手に入れた私はさっそく都内の輸入ビデオショップでこの映画のβテープ版を見つけ、結構高かったと思うのですが、喜び勇んで買って涙して?観賞したという懐かしい記憶があります。今では再生できるかどうか判りませんがテープは大事に取ってあります。(画像1)はそのパッケージ。
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現在では国内版DVDが簡単に手に入りますが、残念な事に国内版には特典が付いていません。輸入版は、カットされた恐竜のシーン等が収録されていてお得です。特に以前手に入れたレーザーディスク版はおまけが盛り沢山で、カットシーンや関連した短編映画に加え、映画に触発されて作られたという「THE LOST WORLD」というタイトルのラブソングの譜面(画像2)が収められていて、これは職業柄見逃すわけにはいかず、ジャズ仲間の伊達和子さんに手伝ってもらって、ジャズ風に演奏してみました(♪THE LOST WORLD)。
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1960「失われた世界」(アメリカ)
時代は現代。ジェット旅客機、飛行艇、ヘリを乗り継いで台地へ。メイプル・ホワイトは失明して生きているし、原作では早々に殺される小悪党のゴメスがギターを抱えて大活躍と、どこをとってもコナン・ドイルのロスト・ワールドの面影なし。しかし恐竜ファンの大ひんしゅくを買った、角や棘や帆がごてごてと装飾されたトカゲ恐竜も、かの映画「紀元前100万年」(1940年制作。後に「恐竜100万年」としてリメイク)の帆付きワニ対角付きオオトカゲの死闘シーンや、トカゲが生きたまま火に呑み込まれるという今だったら抗議殺到場面へのオマージュあるいは集大成と思ってみればそれなりに迫力があります。同じ大きさのワニとオオトカゲが戦うなど、動物ドキュメンタリーではまずお目にかかれないシーン(*NHKの「ワイルド・ライフ」でナイルワニの母親が半分ほどのサイズのオオトカゲを咥えるシーンは見ました!)。いったいどうやって戦わせたのでしょうか?

1992「ロストワールド/失われた世界」(アメリカ)
ストーリーや時代設定はほぼ原作に沿っているのですが、何故か舞台はアマゾンではなくアフリカ。恐竜はチープなパペットで上半身や手、足だけで全身が映るシーンが一回も無いという情けなさ。同じ年に続編「ロスト・ワールド2/続・失われた世界」も作られますが、こちらは石油盗掘団に恐竜や原住民が虐殺されるのをチャレンジャー一行が助けると言う、もはやどうでもいい話です。

1998「ダイナサウルス」(アメリカ)
時代設定はおそらく1930年代、そして舞台はモンゴルの雪原の果ての台地。いきなりメイプル・ホワイト博士(!)が翼竜の卵を発見するシーンから始まります。登場人物のキャラは大幅に改変され例えばロクストン卿は悪役の動物ハンター。そして台地に気球で到達してからは驚愕のオリジナルストーリーが展開され、探検隊メンバーはティラノに何人か食われます。恐竜はJPシリーズもどきのCGでなかなか良く動き、雪原をゆく雪上車も格好良いなど見どころは有るのですが…。

1999〜2002「ロストワールド〜失われた世界〜」(オーストラリア・ニュージーランド?アメリカ?)
3シーズン全66話のテレビドラマで、2001年からNHK BSで放送されました。第1話と弟2話は、野生の美女ヴェロニカや謎の女マーガレット・クルーが加わるものの、ストーリーはほぼ原作をベースにしていて、例えば猿人が頭上から襲ってくるなど原作を思わせるシーンもあります。さすが「ブルース・ブラザーズ」や「スリラー」を作ったジョン・ランディスが監督しただけあって、良いテンポで話が進みます。弟2話の終わりで、一行は原作と同じく秘密の洞窟から脱出をはかります。そのまま脱出していれば立派なロストワールド映像化だったのですが、むろんここまではドラマの導入部。脱出寸前に洞窟は爆破されて塞がり、次週から何でもあり問答無用の物語が延々と繰り広げられるのです。

シーズン3第22話はこんなストーリーです。
「台地の時空が乱れに乱れて、あのメイプル・ホワイトがタイムスリップしてきて、チャレンジャー教授と対面しますが、その後元の世界に戻ったとたんティラノに襲われた様で、悲鳴だけが時空を超えて残ります。ちなみに事ここに至ってはもはや恐竜はタイトルバックと本編に2秒ほど登場するのみです。主なメンバーはそれぞれコンキスタドール(スペインの征服者)に捕まったりケルトのドルイド僧に生贄にされかけたり未来人に脳外科手術をされそうになったりマッドマックス風ジープに追いかけられたりと絶体絶命。密林美女ヴェロニカは凄まじい光に包まれて台地の守り神として覚醒し始めた様です。はたして…」とここまででテロップに「ロストワールド3は終了しました」。当然期待した「4」は制作されなかった様で、我慢して観た(殆ど覚えていませんが)3年間をどうしてくれるんだあ〜!

さらにさらに追い打ちをかけるように1本の映画にまとめてしまったのがこれです。

2001「ジュラシック・ワールド」(アメリカ)
紛らわしい邦題ですが勿論こちらの方がずっと前なので文句は言えません。お話はラプトルやディロフォサウルスや透明擬態人間やドイツ軍飛行士も出てきますがメインは日本風鎧武者から村を守る、「七人の侍又は荒野の七人」のパロディです。

2002「失われた世界」(イギリス)
BBC制作。メイプル・ホワイトが登場せず、したがって台地が名無しなのがちょっと寂しいですが、恐竜はあの「ウォーキングwithダイナソー」のスタッフによるCGとあれば文句のつけようも無く、時代設定もストーリーもほぼ原作どおり。ただひとつ残念なのは、1911年という設定のロンドン自然史博物館のディプロドクスが尻尾を持ち上げている現スタイルのままで、ここは何としても修正してほしかったところです。

最後にちょっとしたトリビアを。
邦題「ロスト・ワールド2013」(Jurassic Attackアメリカ)は、量産されているチャチなCG恐竜映画のひとつで、舞台が南米と言うだけで何の関係も無いのですが、会話の中に「コナン・ドイルのロストワールド〜」というセリフがあり、さらにロクストン教授という人物が登場します。
「キング・オブ・ロストワールド」(2002アメリカ)は孤島でキングコングもどきの巨大猿とドラゴンの様な怪獣に遭遇するという、恐竜すら出てこない映画ですが、登場人物名がチャレンジャー、ジョン・ロクストン、エド・マローン、サマリー(女性!)と揃っています。

話は変わりますが、今年の夏の恐竜関係イベントは何故かとても多くて、東京近郊に限っても到底制覇出来そうにありません。現在のところ報告できるのは3か所だけ。

まずは先日大盛況のうちに終わった「博物ふぇすてぃばる!3」で手に入れた恐竜グッズのお披露目から。

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(画像3)は切り紙作家浅見雅信さんのプテロダクティルス。浅見さんの翼竜は毎年買っていてこれが3体目です。今回は超ミニサイズ(台座の直径が500円玉程)、しかも「透明標本」!肉眼ではディテールが良くわからず、マクロ撮影して改めて恐れ入った次第です。

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(画像4)は陶芸家、伊藤たかをさんの20cm以上ある正に鎧竜といった質感のサイカニアとイクチオステガのぐい呑み。バージェスからクビナガリュウまで、様々な水棲古生物が底に佇むぐい呑みは、酒好きの古生物ファンに大受けでした。

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(画像5)こちらはビールが美味くなる!(意に反して撮影中に泡が消えてしまい不味そうな写真になってしまったのが残念…)。恐竜倶楽部仲間の梶原浩美さんがグラスに彫刻した旧ティラノ骨格。見事です。

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(画像6)仙台在住の中山雅秀さんの「恐竜の島」http://www.live-trip.com/に辿り着いた時には懐具合がだいぶ寂しくなっていたのでディアブロケラトプス?とパキリノサウルスの小さな頭骨で我慢しました。その他にも欲しい古生物グッズは沢山あったのですが力尽きました。同人誌も、もちろん買い漁ったのですが、そちらはいずれ書こうと思っている恐竜同人誌特集でまとめて紹介したいと思います。

群馬自然史博物館では「超肉食恐竜T-REX」展をやっています。ティラノの一族を中心に展示したもので、蔵書を寄贈している縁でなんと我家のコレクションが数点出張しています。また、写真は間に合いませんでしたが、開館20周年記念の限定ティラノサウルス・フィギュアが販売されています。最近良い仕事をしている神流町恐竜センターが製作を担当しています。

新宿高島屋の廃材を使った恐竜アート「富田菜摘展」は楽しめました。
巨大ティラノの歯がビール瓶の王冠を二つ折りにしたもので出来ていて縁のギザギザがセレーションなっていたり、ステゴサウルスの骨板がシャベルだったり…小型恐竜や翼竜の前肢の指は当然フォークです。

この原稿を書き終えたら、まずは玉川高島屋の「大むかしの生きもの展」と科博の「海のハンター展」に行かねば。

恐竜倶楽部仲間の方が作っている「恐竜おもちゃの博物館」の一角に、この夏の全国の恐竜イベント一覧があります。
http://dtmkancho.blog50.fc2.com/blog-entry-1391.html


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田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。