Vol.69 アベリサウルス類フィギュア図鑑 ―ケラトサウルスの一族・歳忘れ編―
「新たなる支配者」の新たなるフィギュアの発売はようやく一段落したようで、私もヤフオクでつい買ってしまったリオプレウロドンで打ち止めにしようかと。まだまだ何が出るか予断は許されませんが、部屋の一角にJW3コーナーも作り、大きすぎるドレッドノータスも飾ったことだし…。
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「新たなる支配者」コーナーと、思いのほか格好良くて写真を2態も撮ってしまったリオプレウロドン(咥えているのはコレクタのシファクティヌス)。そしてあまり似ていなくてがっかりした、タカラトミーからの最後?のJWガチャ「スタンドフィギュア」
ところで、Vol.66でも触れましたが、このところのマテルのJWフィギュアで気になったのが巨大イナゴならぬアベリサウルス類の大量発生。もちろんカルノタウルスはすでに恐竜フィギュア界のメジャーリーガーですが、その他の名も無きアベリサウルス類がJW3では実に4種も発売され、以前からの「プライマル・アタック」「ディノ・エスケープ」シリーズの物と合わせ計6種になりました。一つのシリーズでこの数は異常事態と言わざるを得ません。(ちなみにPNSOがこだわりを持って出し続けるティラノサウルス上科の恐竜も、まだ6種類を数えるのみです。)
これらJWのアベリサウルス類はスクリーンに登場したことは一度も無いのですが、実はハイブリッド恐竜、インドミナス・レックスとネトフリ配信のCGアニメ、サバイバル・キャンプ・シリーズに登場のスコーピオス・レックスに遺伝子を提供したのだそうです。言われてみれば両者とも確かにアベリサウルス顔をしています。
今回は、そのマイナーアベリサウルス達と、今ではティラノに次ぐ人気肉食恐竜にのし上がった感のあるカルノタウルスのフィギュアを紹介、そして次回はアベリサウルス科が含まれるケラトサウルス類の家元ケラトサウルスと、年を跨いで「ケラトサウルスの一族」特集です。
アベリサウルス科をウィキで検索するとこの様になっています。
2014年のアベリサウルス科のクラドグラムと2008年のケラトサウルス類のクラドグラムが載っています。しかしアベリサウルス科の恐竜は、最古参のアベリサウルスやカルノタウルスの記載が1980年代半ばという歴史の浅い恐竜で、分類もまだ研究者によって若干異なっている様です。びっくりしたのは2008年のケラトサウルス類のクラドグラムで見つけたデルタドロメウス。私の知っているデルタドロメウスは1998年の「大恐竜展―失われた大陸ゴンドワナの恐竜たち」の時の精悍な顔つきの中型コエルロサウルス類でしたが、いつの間にかケラトサウルス類に、しかもこちらの2016年のクラドグラムではアベリサウルス上科のノアサウルス科に収まり、2017年には事もあろうに植物食恐竜として記載されなおされているとか。もうわけが判らないのでこの際、唯一のデルタドロメウスのフィギュア(1997年サファリ製なので、在りし日の格好いい肉食姿)もアベリサウルスの仲間に加えてしまいます。
ではまずはマイナーリーグから。
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ジュラシック・ワールドのアベリサウルス類。上段と、下段の左端はJW3で新たに発売された物です。左上から
「サバイバル・キャンプ」に登場のハイブリッド恐竜スコーピオス・レックスの原型と思われます。顔がそっくりです。劇中ではスコーピオス・レックスはインドミナス開発の過程で生まれた失敗作となっています。
「ジュラシック・ワールド」でインドミナスの遺伝子の一部にこの恐竜のDNAが組み込まれたという設定があるようです。
ジュラシック・ワールドのゲームに登場しているそうな。
クイルメサウルス
ウィキにも無い超マイナー恐竜。かろうじてこんなサイトがありました。
ジュラシック・パークwikiの画像にはビックリ。
なんと劇中のモニターとおぼしき画面にクイルメサウルス他の遺伝子提供恐竜の名前があります。ビデオで探してみましたが見つけられませんでした。
この中では比較的よく知られた恐竜。
JWにはクイルメ同様名前のみの登場。
この恐竜はアベリサウルス科ではなく、アベリサウルス上科ノアサウルス科の恐竜です。
JPシリーズではゲーム、ウェブサイトのみの登場だそうです。
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マテル社が増殖させる以前のマイナーアベリサウルス類フィギュアは、マジュンガサウルスが数体ある他は寂しい限りでしたが、このところ増えるきざしが見えます。
上段はマジュンガサウルス。左は2018年のワンフェスで購入した中国のメーカーVitaeの1/35モデル。思えばVitaeは、今ネットを席巻しているPNSOやNanmuといった質の良い中国メーカーのはしりでした。右はセガの恐竜キング・恐竜王列伝のもの。もう15年ほど前の製品です。マジュンガサウルスは他に、シュライヒとコレクタから発売されています。
下段はVol.66に登場したばかりのコレクタのラジャサウルスとサファリのマシアカサウルス。そしてまさかまさかのアウカサウルス。
最近書店で売っているディアゴスティーニの“伸ばして遊ぶ”他愛ないゴム製オモチャなのですが、このセレクトはいったいぜんたいなんなんだ!?
そして問題のデルタドロメウス。最新の復元は、オルニトミモサウルス類似です。
しかしネットには未だに肉食復元も多く見られ、モロッコ産の“歯”も売られています。頭骨が見つかっていない以上、本当のところは判らないのでしょう。
他にアマゾンなどネットで売られている、Reborの聞いた事も無かったエクリキシナトサウルスがありますが8000円程するので買いあぐねています。
さて、カルノタウルスです。
カルノタウルスのフィギュアの数は、デビューして日が浅いのにも関わらず、今や肉食ではティラノに次ぐ程。とても全部は把握できませんし、家にそれほど有るわけではないので紹介できるのはごく一部ですが、長すぎるコレクター歴に物を言わせ、今では手に入らないような物などを自慢しようかなと。
まずはやはりジュラシック・シリーズから。
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意外にもスクリーン登場は「炎の王国」からと新参者です。左のマテルと右のアニアはその時の物。中央のアニアはサバイバル・キャンプ登場のブルを名付けられたカルノタウルスです。「サバイバル・キャンプ・シリーズ」でのブルは出番も多く大暴れ。マテルのフィギュアも90cmの巨大なものをはじめ何種類か発売されました。どれも同じようなのでパスしてしまいましたが。「新たなる支配者」では、ミニフィギュアやディフォルメ物を除くと、オーウェンのバイク、2頭のアトロキラプトルとセットになった小ぶりの物(日本では発売されず高価だったので買い控えてしまいました)が出たのみと寂しい限りです。
右上の箱に入っているのは、新秘宝館Vol.25でも紹介した、ジュラシック・パーク公開の翌年1994年に発売されたお宝的一品。今回箱から出して撮影しようと思ったのですが、押し入れの奥に埋もれて発見できませんでした。
他にJW公式のカルノタウルスフィギュアは、マニア向けで高価なプライム1スタジオの物があります。
隣は2000年のディズニー映画「ダイナソー」で悪玉を務めたカルノタウルス。新秘宝館Vol.38でイグアノドンの後ろにチラっと登場しています。映画はともかくフィギュアの方はJPの物より良くできています。
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カルノタウルスが登場したとき、その異様な風貌に色めき立った恐竜モデラーは少なくなかったと思います。画像5はその頃ワンフェスで購入したガレージキットなど。
左のハンティングトロフィー風の物は、おそらくデビュー直後の80年代後半、ワンフェスで手に入れた物。メーカーなどは判りません。中央は90年代初頭のガレージキットメーカー、アルカードの製品。(秘宝館Vol.64)
右はキットではなく、海洋堂、松村しのぶ原型のコールドキャスト完成品で2004年の発売です。
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今では手に入らない絶版フィギュア。
上はサファリ製で2010年と比較的新しい物ですが今は代変わりして、よりリアルで落ち着いたカラーリングになり、大人のフィギュアといった趣です。下左もサファリですが、まだお子様仕様の1996年製。
隣はシュライヒの2000年もの。今売られているカルノタウルスは、サファリとは逆にオモチャ化が進んでいてほとんど怪獣です。右端はボストン科学博物館製で1997年の物。
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現在では、サファリ、シュライヒ、コレクタ、パポ、中国の新興メーカーなど、恐竜フィギュアを手掛けるほぼ全てのメーカーがカルノタウルスのモデルをリリースしています。勿論フェバリットにもソフトモデルとビニールモデルの2種類がありますが、そちらはこのサイト内で見ていただくとして、ここでは残念ながら廃版となっている頭骨と全身骨格をご覧いただきましょう。
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画像8は手近にあったその他のカルノタウルスをかき集めたものです。左端は2019年発売、タカラトミーの「ガチャアクションTHE恐竜」シリーズ第一弾からの物で、同時発売のティラノと頭、前足以外は同じパーツという情けない物。となり奥はセガの恐竜キング・恐竜王列伝。手前はアニアの通常シリーズの物。アニアには都合3種類ものカルノタウルスがいることになります。その横の2頭は新旧海洋堂製でCCザウルス(2004)と恐竜発掘記7「恐竜造形最前線」(2018)。そして2021年発売のQualiaというメーカーのガチャ「恐竜図鑑スタンドフィギュア」、なかなかの造形です。骨格はジオワールド、頭骨はサファリの恐竜頭骨チューブ。ジオワールドの物は全体的には良い感じなのですが、肝心のカルノ特有の尾椎骨が再現されていないのは残念。血道弓も不自然だし。
カルノタウルスフィギュアはまだまだ星の数ほどあります。こちらにも私の持っていないのがいくつかありました。
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カルノタウルスの最後はこの対決で締めてもらいましょう。格好の良いポーズを追求するPAPO vs生物的リアルさを求めるPSNO。どちらも今どきのメーカーです。
次回は歴史もあり曲者ぞろいのケラトサウルスフィギュア特集です。お楽しみに。
…とここまで書いてほっとしたのもつかの間、マテル社の来年のJWシリーズ情報が入って来ました。
ディノトラッカーズという新シリーズが展開され新顔が登場するのですが、その中にエラフロサウルス、ゲニオデクテスという2種類のケラトサウルス類が含まれているのです。
日本で発売されるかどうかは判りませんが、これは何としても手に入れねば。JW禍はいつまで続くのだろうか…。
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新秘宝館Vol.67でギガノトとカルカロドントの頭骨マグネットを紹介したBs Labから、こんな楽しい物が発売されました。やはり頭骨マグネットでティラノサウルス一家そろい踏みです。上段左から、スー、スタン、ジェーン。中段はワンケル、トリスタン、MOR008。下段がAMNH5027、ダッフィー、バッキーです。ひとつ1000円でばら売りされていますが、ここまで揃えられたら全部買わずにはいられません。
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11月の頭に、恒例となった「第4回日本画恐竜展」に行ってきました。毎回何故か骨格の絵ばかり買っていますが、今年の収穫は藤巻嶺さん作の「ヴェロキラプトル頭骨」です。
今年も一年、ご愛読ありがとうございました。
私としては、これから年末恒例の池袋ミネラルショーがあり、今回は外国のディーラーが復活するというので気合が入りまくっています。戦果は次回ご報告。
来年は私がちょっぴり関わっている恐竜絵画展「恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造」や、科博の鎧竜展があり、今からワクワクしています。
皆様も良い恐竜年をお迎えください。
メリークリスマス!
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田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。