新恐竜秘宝館

Vol.24 「ジュラシック・ワールド」を観る前に今までのJPシリーズをフィギュアを眺めて復習しておこう!その一

今年の夏は久々に暑い恐竜の夏になりそうです。幕張メッセ、パシフィコ横浜の恐竜展。科博の恐竜展示リニューアルと「生命大躍進」展。我が恐竜倶楽部も8月8日9日の両日、科学技術館で催される「博物ふぇすてぃばる!」に参加しますし。とりあえず出向かないといけないイベントだけでもてんこ盛りです。そして真打は実に14年ぶりのジュラシック・パーク(以下JP)シリーズ第4作「ジュラシック・ワールド(以下JW)」公開。めでたい!この14年の間、制作が発表されては立ち消えになってしまう事幾度か…さんざんじらされて半ば諦めていたあげくの公開なので、めでたさ倍増です。予告編を見る限り登場する恐竜の姿は1993年のまま。JPⅢで半端なトサカを生やしていたラプターも初心に戻り精悍な面構えで好感がもてます。(もっとも現在常識となった羽毛恐竜との折り合いをどうつけるのか気がかりではありますが)懐かしいイスラ・ヌブラル島の風景も随所に見られそうだし、私の様なオールドファンは22年前を思い出して感涙にひたってしまうかもしれません。JW封切りを2カ月後に控えた今回、あの原点JPが公開された1993年の恐竜熱にうかされたようだった夏に思いをはせてみましょう。

1990年から毎年、大規模な「大恐竜展」(科博マイアサウラ展・幕張ロイヤルティレル博物館展・新高輪プリンスホテルでのおしゃれな恐竜展等々)が開かれ、日本の恐竜ブームに火が付いていたのですが、1993年の夏、それがピークを迎えたのです。
イベントや恐竜展は日本全国で20か所以上にも及んだそうですが、中でも話題を呼んだのが東京、大阪で開催された、JPに呼応して「生きている様な恐竜を見せる」をコンセプトとした、ロボット恐竜を使った大掛かりなイベント「ザ恐竜 DINO-PARK」と「DINO ALIVE」でした。私は東京は勿論、大阪にも行きました。両方ともそれまでの「動刻」恐竜展とは比べ物にならない規模、完成度、盛り上がり(そしてたくさんのグッズ)で旅をした甲斐はありました。私はその他、地元横浜「磯子プリンスホテル」の中国の恐竜展には少なくとも2回は行きましたし、新高輪プリンスホテル(2年連続!)やサンリオピューロランドなど近場は全て制覇。さらには、本邦初公開のデンバー自然史博のティラノ(MOR555)の全身骨格を見に、豊橋自然史博物館の特別展にまで行っています。忙しい夏でした。

JP公開に向けて、各メディアも恐竜ブームをあおりまくりました。


<映像関係>
テレビの恐竜番組はニュースやワイドショーなどを加えると6月〜8月の間に少なくとも30回(気がついて録画できた数)を数え、その中には、私が怪しい恐竜マニアとして恐竜リュックを背負い冷凍化石最中(写真は秘宝館Vol.47に有り)を披露したりして醜態をさらす(しかもノリノリで)「地球知りたい気分・恐竜くん大集合」や、JP封切り日、上映前の映画館のロビーで期待に目を輝かせている恐竜コレクターとして紹介され、その流れで我家のコレクションも披露する「ニュースコール・おはよう藤田です」(JP封切り直後の7月21日放送)といった番組も含まれます。ドラマでは宮沢りえ主演のあの名作「青春牡丹灯籠」が8月に放送されています。(新・秘宝館Vol.9)
JP便乗映画には、恐竜ファンはともかくB級映画マニアの間では意外と評価が高い、あきれるほどお粗末な恐竜が殺戮を繰り返す血みどろ映画「恐竜カルノザウルス」と、恐竜ファンは口をつぐんでしまう角川映画「REX恐竜物語」(大物役者たちがゆるキャラの様なヌイグルミ相手に真面目に演技する姿が痛ましい…)がありました。


<出版関係>
この年の恐竜関係の出版物は6月〜8月の間だけでも130冊近くにも上りましたが、恐竜ブームを如実に物語るのが、一般雑誌の恐竜記事の多さです。早くも2月に写真週刊誌「フラッシュ」で「まるごと!恐竜大図鑑―今年ブームは最高潮へ」と題した記事が登場。4月の男性誌「ダイム」の「恐竜を語れない男はモテなくなる!?」と続きます。以下チェックできたものを挙げてみると
「恐竜大騒動」(エクスクワイア5月)/「今よみがえる恐竜大ロマンの旅!」(週刊プレイボーイ6月〜7月・5回連載)/「小松左京の恐竜大革命」(バート6月)/「恐竜の世界を訪ねて」(週刊ぴあ6月)/「ジュラシック・パーク衝撃シーン初公開」(ヤングマガジン6月)/「ブームの恐竜商売で民放3局の共演」(週刊新潮6月)/「恐竜絶滅・最後の謎を追う」(バート7月)/「ジュラシック・パークの本物度・バイオ恐竜見参!」(ニューズウィーク7月)/「ジュラシック・パークとことん20p」(週刊少年マガジン7月)/「大研究SF恐竜生存説」(ビークラブ7月)/「ザ・恐竜&ジュラシック・パーク」(アサヒグラフ7月)/「恐竜博物館」(週刊ステラ7月)/「1993年の恐竜時代」(週刊文春8月)といったところ。他にも6月には「週刊恐竜サウルス!」が創刊。科学誌、映画誌、模型誌は当然のように恐竜特集を組んでいます。SFマガジン8月臨時増刊号は「恐竜王国」のタイトルで恐竜一色。変ったところでは月刊上州路という渋い地方誌に載った特集記事「群馬の恐竜村・ジュラシックー・パーク」。そして9月にはあの伝説の少女雑誌「オリーブ」が「恐竜大好きブック!知れば知るほどかわいくなる」という特集を組んでいます。

その中で恐竜が表紙になっている雑誌を中心に集めてみました。(写真1)
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JP関連の書籍はこちら。(写真2)
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そしてブームに浮れて後先考えず買い揃えたJPフィギュアの数々。以前、秘宝館Vol.9でお見せしたものですがより詳しく紹介します。

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JPグッズの棚の全景(写真3)とズームアップ(写真4)。ケナー(Kenner)社のフィギュアを中心に時計からカップヌードルまで、いろいろ取り揃えてあります。ティラノやトリケラのフィギュアのリアル感はシリーズ随一。思うに映画「ジュラシック・パーク」はスリルとサスペンスよりもリアルな恐竜で驚かせるのをコンセプトにしていたのでは?それがフィギュアにも反映されていたのかは判りませんが、2作目3作目と登場する恐竜が増えアクションシーンが派手になるにつれ、フィギュアのおもちゃ度は高くなっていきます。
一作目では、恐竜は遠景のパラサウロロフスを除くと6種類しか登場しません。この棚にあるステゴサウルス、プテラノドン、コエロフィシス、ユタラプトル、ディメトロドンは映画とは無関係です。この「JPロゴさえ付ければ何でもJP恐竜」という商品展開はさらにどんどんエスカレートしますが、それは次回のお楽しみ。ケナーはメタル製の小さな恐竜(全14種類)のシリーズ(写真5)も発売。こちらも何でもアリです。
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やりたい放題のケナーに比べ、我がツクダホビーは律儀にも6種のみの発売。
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しかも色も映画にほぼ忠実で、大(写真6・3種のみ)(写真7)小と、タマゴに2匹ずつ入っていた食玩サイズ(写真8)の品揃えは、全部集めると、同じような物ばかりで少々うんざりすると言うのが正直なところ。大のブラキオサウルスは原型に映画のプロップを使った物の様で素晴らしい出来。ティラノとトリケラはオリジナルデザインで、ちょっとバランスがおかしいですが、丁寧な作りとリアルな彩色で気に入っています。ティラノは全長約90cm、ブラキオは全高75cm。ソフビなのに2万〜2万5千円と言う値段には泣きました。余談ですがこのシリーズのトリケラの表記がトゥリケラトプスとなっているので気になってネットで調べたら、なんと古典ラテン語読みなんだそうです。まさか担当者が知っていて使ったわけではないでしょうが。(ティラノはテュランノサウルスになるそうです。)

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(写真9)の孵化中の2体もツクダ製でした。残りのあまり似ていない6体はアメリカのDakinというメーカーの物。

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(写真10)はリアルなので「ヌイグルミには手を出さない」というルールをついつい破って買ってしまった80cmもあるラプターのヌイグルミなど。これもDakin製。

その他モデルキットについては秘宝館Vol.65をご覧ください。

これだけのJPグッズに加え、一般恐竜グッズ、さらには各地の恐竜イベントへの旅費やご当地グッズ購入に、ひと夏でいったいいくら使ったのか…。考えるだけでも気が遠くなります。これに比べたら今年の夏の恐竜ブームを乗り切る事ぐらい楽勝です!

さて、現時点でのJWにはいくつかの疑問点があります。羽毛恐竜問題もそうですが、海生のモササウルスをどうやって再生させたのか?虫入り琥珀に代わる物があるのでしょうか。一部のラプターのフィギュアの足にあの鍵爪が無いのは何故?そして現在最大の謎はフィギュアがすでに発売されているステゴケラトプス。JWのホームページにも予告編にも何の情報もありません。遺伝子操作の結果?はたまたJPフィギュアの伝統に則ったフィギュアのみのキメラ恐竜?(写真11)
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それにしてもこの姿、何処かで見た事があると思って家探ししたら、こんなのが出てきました。

「Yor, The Hunter From The Future」という1983年の映画の輸入レ―ザ―ディスク(!)。こんな姿です(写真12)
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この映画、ストーリーは、主人公の金髪原始人男が恐竜や凶悪原始人と戦っていたかと思うと最後はスターウォーズの帝国軍もどきの敵の基地を爆破して宇宙船で脱出するという支離滅裂なものですが、極小アンキロサウルスを素手で仕留めるシーンとか、海辺の洞窟に住むディメトロドンなど、恐竜映画ファンがニヤリとする場面があります。前者は「紀元前100万年(1940)」の極小トリケラトプス狩り(リメイクの「恐竜100万年」では本物のイノシシになっていました)、後者は「地底探検(1959)」へのオマージュだと思われます。

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そしてもう一つがこれです(写真13)。足の裏に刻印されたマークを頼りに、ネットにあった「国内玩具メーカーブランドマーク一覧」で探したところ中嶋製作所製と判明、さらに検索したのですが半ばで力尽き商品名は判らずじまい。昭和のソフビ玩具、お宝かもしれません。磁石で首がすげかえられ、ステゴケラトプスとステゴティラヌス(?)になります。他にも首があったかどうかは定かではありません。ステゴサウルスの首はあったでしょうが。

話がお宝話にそれてしまったので、最後はとっておきの限定JPフィギュア2点(1993年製ではありませんが)に締めてもらいましょう(写真14)
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左はケナーのシネマキャストシリーズ(1994)の物。だいぶ後になって恐竜仲間から格安で譲り受けたので当時いくらで売られていたのか判りませんが、現在ebayオークションで、新品だと1300ドルとか790ユーロ(107000円程)とか言った法外な値がついています。台座のさしわたし37cm。非常に重い上もろい材質で、この数年、自壊して手足が折れた状態でしたが、JW公開を祝って気合を入れて修復しました。右は2008年発売のサイドショウ製で3万円代だったと思います。「ラプターを退治して大見えを切るティラノサウルス」というJPラストの名シーンを再現した35cm程のジオラマモデルです。

次回は、シリーズ中最もフィギュア数が多いと思われるJPⅡロストワールドと、JPⅢのグッズをふりかえり、目前に迫った「ジュラシック・ワールド」封切りに備えます。


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田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。