Vol.25 「ジュラシック・ワールド」を観る前に今までのJPシリーズをフィギュアを眺めて復習しておこう!その二
お祭りのようだった1993年が過ぎ去り、明けて94年、世の中は(恐竜的には)おちついてきた…とはいえ、夏には大阪で黒光りするTレックス全身骨格「ブラック・ビューティ」をメインに据え、「カナダ中国共同恐竜プロジェクト」の成果を展示した、中身の濃い「世界最大の恐竜博」が開催され、フィリップ・カリー博士の著書により「恐竜ルネサンス」なる言葉が一般(私も含めた不勉強な恐竜ファン)に広まり、7月には、恐竜ファンの間で今も語り継がれる「NHK生命40億年はるかな旅・花に追われた恐竜」の放送もありました。そんな日本の恐竜事情にはおかまいなく海の向こうではケナー社がJPフィギュアの新作を出し続けていました。もはや映画は何処かに行ってしまっています。全部は紹介しきれませんがこんなのも有りました。
(写真1)当時まだ恐竜界の新参者だったカルノタウルス。ちょっと大きめのシリーズで他にヤングTレックス(リペイント)とケツァルコアトルがあるのは良いとして…。
(写真2)まさか!のリカエノプスとタニストロフェウス
そうこうするうちに1997年「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」(以下LW)公開。私的には好きな恐竜映画です。恐竜の数も増えているし、サンディエゴの夜景をバックに咆哮するティラノの雄姿に思わずゾクッとしました。
*ちなみに街中で恐竜が暴れる映画は意外と少なく、1925年の「ロスト・ワールド」「恐竜グワンジ」(街と言うより村ですが)と2013年のお手軽CG(意外とよく出来ている)を使った「ダイナソーln L.A」位しか思い浮かびません。
しかし恐竜ファンの期待とは裏腹に世間的には並の映画扱い。便乗した恐竜イベントも無く(大阪で竜脚類を集めた「世界大恐竜博」は有りましたが)、テレビ番組もLWに関するものは「世界ふしぎ発見」「シネマ探偵」など数えるほど。恐竜番組は沢山ありましたが、むしろ和泉村で見つかったティラノサウルス類の歯をはじめとした日本の恐竜にスポットを当てていました。便乗映画も一本も無くて寂しい限り。
それでも雑誌の恐竜関係の記事は
「人類の運命は恐竜だけが知っている!ロスト・ワールド先行誌上公開」(バート6月)/「ロスト・ワールド/ジュラシック・パークは、やっぱり凄かった!」(週刊プレイボーイ6月)/「ロスト・ワールド解体新書」(週刊ヤングサンデー6月)/「恐竜はなぜ滅んだのか」(週刊エックスゾーン6月)/「恐竜の夏が始まった…」(女性セブン6月)/「帰ってきた恐竜 ロスト・ワールド」(ニューズウィーク7月)/「ロスト・ワールド」(日本版ファンゴリア8月)/「ティラノサウルスの家族愛ってホント!?」(週刊朝日8月)/「恐竜大博覧会」
(週刊文春8月)/「大絶滅」(歴史街道9月)/「新・恐竜王国」(SFマガジン9月)/「恐竜・化石ビジネス狂騒曲」(週刊プレイボーイ11月)といった具合に結構ありました。その他「ニュートン」は夏の間毎月恐竜関連の記事を掲載、模型誌も、荒木さん、松村しのぶさんの連載記事の他に、ホビージャパン10月号でジオラマで有名なモデラー、山田卓司さんが映画のシーンをモチーフにしたジオラマを制作しています。
LW関連の本は「メイキング」、映画のスチール写真を使った子供向け絵物語「映画版ロストワールド」、それに「シネフィックス14号」位。8月に出版されたアメージングムービー第1号にはかなり詳しい「恐竜映画史」が載っています。
(写真3)関連本、雑誌などの表紙
こうしたJPに比べるとはるかにお寒い状況にも関わらず、我が家にLWグッズが溢れかえっているのはいったい何故なんだ!?
LWグッズの棚の全景(写真4)とズームアップ(写真5)。ケナーのアクションフィギュアが中心ですが、ジュラだまなどと言うわけのわからない物もあります。
写真を撮っていて気付いてしまったのですが、どうしたことかコンピーことコンプソグナトゥスが2種類しかいません。しかもひとつはストローの飾り…(写真6)。
映画冒頭のシーンといい、LWに初登場の恐竜の中では最もインパクトがあったと思うのですが。コンプソグナトゥスはよほど一般人気が無いのか、LW以外のフィギュアも私の知る限りたった3種類。オーロラのプレヒストリックシーンズのジャングルスワンプ(秘宝館Vol.10)、そして後で紹介するJP3の食玩だけです。
(写真7)はケナー社の、棚から溢れたLWフィギュアたち。後になってオークション等で手に入れた物です。やたらかっこいいアロサウルルスはディノダメージというシリーズの物で、体表の3か所がはがれて肉や骨がむき出しになるという、どう遊んで良いか判らないギミック付き。ケナー社のJPフィギュアは当初からこの手のギミックがよく使われていたのですがアロはその極端な例。JP3になるとほぼ全フィギュアが傷付きで、しかもむき出しになって痛々しい…。この意味不明の路線はJWフィギュアにも引き継がれています。その下の新作のラプターと下段右のバリオニクスは良いとして、エステメノスクスとオルニトスクスが登場しては、もはや収拾がつきません。(下段は1999年発売のリペイント物のようです。)
ケナー以外の「まじめな」映画フィギュア
TOYBIZ社の50cmはあろうかという、巨大なリモコン・パキケファロサウルス(写真8)。2足歩行し頭突きもします。このシリーズ、全部揃えたはずなのですが、押し入れの奥に埋もれて発見できませんでした。ティラノの歩行連続写真が秘宝館Vol.32にあります。
(写真9)イギリスの老舗モデルカーメーカーMATCHBOX社のプレイセット。LWの恐竜ハンティングのシーンで使われたビークル(車両)のミニカー中心ですが、おまけの恐竜もダイキャスト製でよく出来ています。(新・秘宝館Vol.5もご覧ください。)
(写真10)も同様な物ですがプラスチック製で作りもおおまかです。これはケナー社の製品です。実はJWでもビークルが活躍するようで、やはり大量のミニカーが発売されていますが、幸いなことに恐竜はついていないので、コレクション対象外。助かりました。
ツクダホビーからはLLサイズのラプター(映画のプロップを原型にしたもの)が新たに発売(写真11)。前回の3作もリペイントされて再販されましたが、これはさすがに買い控えました。
(写真12)はEQUITY TOYSと言うメーカーのヌイグルミ。ラプターは頭と手と爪、ステゴサウルスは頭とスパイクがプラスチック製という奇妙なもの。中に針金が入っていてポーズを変えられる竜脚類はLWフィギュアの中で唯一のマメンチサウルス。せっかく劇中でバイクにおなかの下をくぐり抜けられるなどして、巨大さをアピールしていたのに、ヌイグルミだけとは残念です。
そして世紀が変わり2001年。「ジュラシック・パークⅢ」公開に合わせて出版されたのは、7月に映画のノヴェラゼーション文庫本。映画秘宝8月号に「ジュラシック・パークⅢ 恐竜大図鑑」の記事。10月に「ジュラシックパークⅢ 恐竜にあいにいこう!公式ガイド」というゲーム攻略本位と言う惨状。決して恐竜が下火だったわけではなく、チョコラザウルスをはじめとする恐竜食玩が巷にあふれ、「週刊ディズニーダイナソー」なる雑誌が刊行され、USJのジュラシック・パークもオープンしました。ただ首都圏での大きな恐竜展はありませんでした。
正直言って私にとってJP3はイマイチでした。ケラトサウルスは間抜け面だし、プテラノドンには歯が生えているし、ティラノとスピノの対決は盛り上がらないし…どうせならティラノ対アロ(サウロファガナクス?)が見たかった。ジュラシック・パークでなら時代を越えた対決が可能なのに…。ラプターの中途半端な頭の毛も何か嫌、おまけに卵を返してもらってすごすごと帰ってしまったし。そしてなんと言っても家族の絆が戻ってメデタシメデタシと言うのはいただけません。恐竜ファンはそんな事知った事ではないのだ!と憤ってはみたものの、やはりグッズは買い揃えてしまうのでした。
JP3グッズの棚の全景(写真13)とズームアップ(写真14)。ハスプロ(もともとケナーはハスプロ傘下の1ブランドだったのですが親会社に吸収されたようです)のアクションフィギュア、海洋堂のローソン限定モデル、たしかガムのおまけだった紙製骨格モデル、トミーから発売されたミニフィギュア・パック等です。
JP3のスピノサウルスについては秘宝館Vol.33と新・秘宝館Vol.20も合わせてご覧ください。
劇中、ちょっとだけ登場したコンピーは期待に反して何の悪さもしませんでした。
海洋堂製の食玩(写真15)
その他のJP3グッズ(写真16)
さあこれで「ジュラシック・ワールド」への心構えは万全です。
前回書いた、JWのラプターフィギュアの足の鉤爪の謎は映画を観るまで解明されそうにありません。
現物は手に入れたのですが((写真17):左からチャーリー、デルタ、エコー)。この恐竜ルネサンスの根幹にも関わった重要な鉤爪をあえて削除したのは何故?もし単なるミスだったら前代未聞の大バカヤロウですが、はたして…楽しみです。
ところで、つい先日訳本が出版されたエッセイ「愛しのブロントサウルス―最新科学で生まれ変わる恐竜たち」(ブライアン・スウィ―テク著 白揚社)は最新恐竜情報と作者の恐竜愛が詰まっていて、恐竜ファンなら読みながら思わず相槌を打ってしまう程の嬉しい本なのですが、2013年に書かれたこの本の中で著者は「もし『ジュラシック・パーク4』が制作されてヴェロキラプトルがまた登場する事があったら、美しい羽をまとっていなくてはならない。スティーブン・スピルバーグのセンスが問われるところだ。」と述べています。結局スピルバーグはセンス無しと言う事になりましたが、あくまでも続編ということで、今までの作品との整合性を採ったのはいたしかたない事かもしれません。しかし生まれて初めて図鑑で見た小型恐竜はフサフサだったという世代がもう育っている筈。彼らがJWを見たら「なんじゃこれは?」と言う事になるんでしょうね。
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田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。