新恐竜秘宝館

Vol.26 「ジュラシック・ワールド」と夏の恐竜たち

風も肌寒くなり、夏を賑わせた恐竜達も去って行きました(カンブリア紀の動物たちはまだ上野で頑張っていますが)。世間的には思ったほど盛り上がらなかったようですが、私的には恐竜を満喫した夏でした。ふり返ってみます。

まずは「ジュラシック・ワールド」
2回観ました。楽しめました!。ラプター姉妹がバイクと共に森の中を疾走するシーンは無茶苦茶格好良かったし、最後の方でティラノがゲートの奥から姿を現し、咆哮して見得を切るシーンは正に真打登場で「待ってました!」と大向こうから声がかかる所。そのTレックスを誘導する発炎筒や、群れで駆け抜けるガリミムスに懐かしさ満載(棚に並んだ土産物からあの垂幕まで!)の旧ビジターセンターの廃墟や打ち捨てられたジープなどなど、1作目が眼に焼き付いているファンへのサービスも盛りだくさんでした。

そして謎のいくつかも解けました。

ステゴケラトプスは確かに登場しました。最初に観た時は気がつかなかったのですが、ノベライズ本にその場面があり、2度目に観た時は身構えていました。映画の終盤、職員が逃げて無人となったビジター・センターのラボのコンピュータのモニターの中に、ほんの一瞬現れます。画面はすぐにインドミナスに変わってしまい、どうやらハイブリッド恐竜を説明するための画像だったようです。

そしてウロコラプターへの疑問もウー博士の一言で一蹴されてしまいました。「もともとここの恐竜はゲノムの足りない部分を他の生物のDNAで補ってきた。ここには自然のものなどひとつもない。」確かに「ジュラシック・パーク」には、「蛙のDNAを使った」というセリフがあります。ノベライズ本ではウー博士は御丁寧にも「もし純粋な遺伝子情報が手に入っていれば、彼らの姿は今とはかけ離れたものになっていたでしょう。」と補足しています。見事にやられました。裸のラプターや巨大すぎるモササウルス、歯が生えたプテラノドン…もう何でもありです。

モササウルスのDNAを何処から手に入れたのかは結局判らずじまい。前回写真を載せたラプター姉妹フィギュアのカギ爪は、単なる大バカヤロウだったようです。9月になってから登場したギミック付きの姉妹シリーズには、ちゃんとカギ爪があります。(どうせならあのヘッドギアも付けてくれたら良かったのに…。)

今回、フィギュアは国内メーカーからは発売されず全てが輸入されたハスプロ製。おかげで単価が高く、数が少ない割には結構散財してしまいました(写真1)(写真2)
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何故か発光ギミックを取り入れた物がいくつか有り、JPフィギュアの定番となった傷口が赤く発光したり、インドミナス(大)に至っては咆哮と共に背中全体が2色に光ります(擬態のつもりだろうか?)。インドミナス(小)はジャイロスフィア、モササウルスは潜水艇、プテラノドンはヘリコプターとセットになっていてそれぞれの武器で攻撃すると傷口が開くという、悪趣味ですがつい何度も遊んでしまうギミック付き。映画ではホログラムのみの出演の懐かしのディロホサウルスは、毒液に見立てたプラスチックの棒を発射します。

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(写真3)はアメリカの大手スーパーマーケットチェーン「ウォルマート」限定のミニフィギュアで8〜10センチ程のサイズ。全12種類とその色違いがあるようで、私は15個入りパックを買いました。基本形はハスプロのレギュラーサイズの縮小版なのですが、こちらの方がギミックが無い分、造形は良く出来ています。ただ彩色がひどく雑なのが残念。そこでダブったモササウルスを塗りなおして、丁度良い大きさのホホジロザメ(サファリのミニシリーズ)もあったので、その辺にころがっていたボール箱を簡単なシャドウボックス仕立ててこんなジオラマをでっち上げてみました。(写真4)
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パスプロのJPシリーズフィギュアのおもちゃ化は一作ごとに加速し、今回など輸入トイショップで隣りに並んでいた映画「パシフィック・リム」のリアルな「KAIJU」アクションフィギュアと見比べて悲しくなってしまいました(値段は同じくらいなのに!)。JWの続編が制作決定だそうで、モササウルスが狭いプールで生き延びて再び登場するのかも気になりますが、フィギュアの行く末の方が心配です。

今年の7月から9月にかけて出版された恐竜関係の本は確認しただけでも24冊も有りますが、JW関係は前述の「ノベライズ版」、子供向きの「3D 図鑑」、映画秘宝増刊「最新恐竜映画画報」、それに「映画秘宝」と「キネマ旬報」の特集位で、寂しい限りでした。TV特番も無し。それにひきかえ天下のNHKが共催した科博の特別展「生命大躍進」は、スペシャル番組やアニメシリーズ「ピカイア!」の放送とそのムック本、さらに連動した「生命のはじまり―古生代」「ドラえもん・もっとふしぎのサイエンス(アノマロカリスの模型付き)」等の出版物も有り、賑やかでした。

特別展「生命大躍進」はこの夏一番の展覧会でした。番組の方は、30年前のネタ、ディノサウロイドとまだ羽毛が生えていないトロオドンをさも新仮説のように紹介したりして「あれれ???」という内容(今様な毛むくじゃらのダスプレトサウルスの足元を裸のトロオドンが走り回る映像はなかなかシュールでした)で、会場にディノサウロイドがいたらどうしようかと思ったのですがそれも杞憂に終わり、恐竜こそ添え物的な扱いでしたが、会場に入ってすぐの所にずらりと並べられた、それは見事なバージェス動物群の実物化石だけでもうお腹いっぱいになりました。

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(写真5)は会場限定のガチャポンと姉妹シリーズのガチャポン「古生代〜生命大爆発」を年代順にならべたもの。どちらも海洋堂製で見事な出来です。同じ種類が、かのチョコエッグにもあるのに、焼き直しで無いのところはさすが海洋堂です。

*トロオドンはいまだに数える程しかフィギュア化されず、名前が通っている割には不遇な恐竜です。私が持っているのは、大英自然史博物館製のステノニコサウルス(秘宝館Vol.41)「ウォーキング・ウィズ・ダイナソー」のフィギュア(新秘宝館Vol.16)だけ。(最近ジュラシックハンターというシリーズからも発売されているようですが…)
それなのに事も有ろうにディノサウロイドのフィギュアが我家にありました(写真6)
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2001年発売の食玩「ムー未確認動物・UMAの謎」の「恐竜人」です。「UMAじゃないだろ!」とかぶつくさ言いながらもこんな物まで集めてしまうのです。そう言えば、トロオドンがその昔トロエドンと呼ばれ、堅頭竜類とされていた事など、もはや誰も覚えていないだろうなあ…(写真7)コロタン文庫・恐竜大百科1977)
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幕張メッセで開催された「メガ恐竜展2015」はタイトルに偽りありで、メガ恐竜と言えるのはトゥリアサウルスのみ。しかも上半身だけ。様々な動物の巨大化がテーマだったようですが、いまひとつまとまりが無かったように思います。お目当ての新しいティラノ類「ライスロナックス」はおなじみ「スタン」の陰に隠れて目立たなかったし…。でも会場限定のガチャポンをやったら5回やって全4種ゲット(しかもダブったのはトゥリアサウルスの色違い)という好成績を収めたので、機嫌よく会場を後にできました。さらに限定物に弱い私は、荒木さん原型のトゥリアサウルスも当然購入しました。サイズが小さいのに細かいところまで作り込まれているのはさすがですが、本音を言えば、さして特徴もない竜脚類より細面のティラノ、ライスロナックスのフィギュアが欲しかった…(写真8)
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一方「ダイノワールド2015ヨコハマ恐竜博」は「モリソン層恐竜大集合」とサブタイトルを付けても良い位、4体のアロサウルスと3体のケラトサウルスをはじめタニコラグレウス、バロサウルス、新発見のカンプトサウルス、ドリオサウルス、ガーゴイレオサウルス等々、あまりお目にかからない北米ジュラ紀の恐竜を一堂に揃えマニアを喜ばせていました。客寄せの目玉としては、初公開トルヴォサウルスは良いとして、『やはり真打はティラノ!』のティンカーとモロッコ産の新種のモササウルス(JWに便乗?)が宣伝されていましたが、これはまあ仕方ないか。問題は展示の順序に一貫性が無く、ただ無造作に並べられていた(アロとケラトは会場のそこかしこに分散していました)上、まともな解説ボードも無かった事。さらに致命的な事にオリジナルグッズはおろか図録すら無く、これにはガックリです。恐竜の間に唐突に毛サイが混ざっていたり、思わず値札を探してしまうような、輝くアンモナイトのジョエリーまであって、とにかく不思議な展示会でした。

最後に「恐竜倶楽部」もブースを出し、仲間が集まって2日間にわたって大いに盛り上がった「博物ふぇすてぃばる!」でゲットした品々を紹介しましょう(写真9)
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上段は恐竜倶楽部員の作品。左から、新秘宝館Vol,18で紹介した愛知在住の陶芸家、伊藤たかをさんの新作「抱卵するオヴィラプトル・卵付き」/仙台で「恐竜の島」というブランド名で恐竜模型を製作している中山雅秀さんの「尻尾に毛がちゃんと生えているプシッタコサウルス」/「恐竜おもちゃ博物館」館長さんが編集した小冊子「日本全国恐竜公園ガイド2015」。全国津々浦々の倶楽部員も情報提供した全200個所を紹介、恐竜ファンなら一家に一冊必携です。
下段は、去年も出品されていた超絶技巧切り絵作家浅見雅信さんの新作「ディモルフォドン」と「ハルキゲニア」/そして「ジャイアント・モアの頸椎の石膏製(!)レプリカ」。アンティークな物でどこか東南アジアの博物館に展示されていたとかいないとか。頭骨から頸椎一式揃っていたのですが、出来も甘いし、重いし、高くつくしなどと迷ったあげく、結局首の基の方の15・16・17番の3連をひとつ1000円で買うにとどめましたが…全部買っておけばよかったかなぁ。


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田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。