Vol.37 「夏の恐竜展2017」
今年も恐竜展の季節がやってきました。
東京近郊で記事の締め切りに間に合うのは、幕張メッセの「ギガ恐竜展2017」とパシフィコ横浜「ヨコハマ恐竜展2017」、それに恒例の「博物ふぇすてぃばる」といったところ。
これはグッズ情報レポートを書かねばと使命感に燃えて、まずは「ギガ」と「ヨコハマ」に2日続けて行ってきたのですが、悲しい結果に…。
「ギガ恐竜展2017」
目玉のルヤンゴサウルスは確かに感動するほどギガでしたが、大味でじっくり見るという代物ではありませんでした。見つかっていない尻尾もやたら長くて、全長稼ぎの水増しかなとつい疑ってしまうのは悲しい性か。頭骨などはるか高みにあって良く見えないし…。
そして今はやりの羽毛ティラノ(個人的には暑苦しいと思っている)を駆逐してくれそうな関西系ティラノサウルス・ワイレックス(関西系ちゃいまんねん。ワイのワイはワイが埋まっとった牧場のドン・ワイリックっておっちゃんの名前からとったんねん〜て、会場や図録のどこにもそないな説明あらしまへん!)―実はこの関西系ネタ、恐竜倶楽部員の雑談の中で、ワイの由来は何かと言う話でワイオミング説とともに出たものです。ネットで調べたらこんなサイトに、Wyrex is named for Don Wyrick, the rancher whose Montana ranch housed the T. rex until its discovery.とありました。
このワイレックス、鱗の化石が見つかって話題を集めたのですが、ここではセンセーショナルな「共食い」が売りの様でした。再現VTRが会場に流れていましたが、その内容がどうも納得いきません。
ワイが倒したトリケラを他のティラノが横取り。しかしそのティラノ、せっかく手に入れた美味しそうなトリケラの死体をほったらかしにして、わざわざ尾に傷を負って逃げるワイを追いかけ尻尾を食いちぎって貪り食うって、そんな奴いますかいな?ティラノの尻尾よりトリケラの内臓の方がずっと美味しいと思うのですが余計なお世話か…。
それより何より肝心な鱗の化石が、照明の関係か私の眼のせいか、良く判別できなかったのが残念です。他の展示は殆どが福井の恐竜博物館のコレクションでした。お馴染みの物に混ざって、私が見逃した「恐竜の大移動」展からの物がかなり有り、これは思わぬ収穫でした。
さて期待していた限定グッズですが、ヌイグルミとお菓子とキーホルダーと文具のみでフィギュアは無し。しかしこちらも前から欲しかった「恐竜の大移動」展の荒木さん原型のフィギュア(恐竜2匹のセットが全5種)が売られていて、めでたく散財する事ができました。
「スペインの恐竜」展のコンカベナートル・セット(これは持っていましたが)も有りました。
そして翌日「ヨコハマ恐竜展2017」へ。
こちらは、展示内容の告知がブラックヒルズ提供のスタンVSケルシー(トリケラ)位で後は恐竜ロボットばかりだったのでまるで期待していなかったのですが、一歩会場に入ると、イグアノドン頭骨、マンテルのイグアノドンの歯、バックランドのメガロサウルス下顎の上質なレプリカで恐竜発見史を説明するコーナーがあり、解説を見るとレプリカは漫画家の所十三さん所蔵の物、解説文は恐竜くんこと田中真士さん。ヴィクトリア王朝に思いをはせるようなレトロないい感じのレイアウトでこれは予想外の好調な出だし。その後も、所さんのつい涎が出てしまう頭骨レプリカと、恐竜君の適切な解説で小粒ですがとてもいい展示が続きます。
脳腫瘍のゴルゴサウルス頭骨(レプ)等マニアックな物も。そしてブラックヒルズの全身骨格コーナーでは、新種の可能性もあるという腹肋骨付きのオルニトミモサウルス類や、頭を下げ尾を高々と上げたやたらかっこいいポーズのスタン、以前見た物とはだいぶ印象が違うケルシー(解説がとても充実していました)等があり、特にスタンとケルシーは殆ど触れるほどの距離で全方向から舐めるように見る事が出来るというおいしい展示。
これだけでも入場料の元は取ったと気を良くしたのもつかの間、次の角を曲がると世界は一変し、30年前のデパートの恐竜展に迷い込んだような、動きがぎこち無く瞬きもしないレトロな恐竜ロボット達が待ち受けていました。これはもうショップに一目散するしかありません。
で、限定グッズですが、ヌイグルミとお菓子とキーホルダーと文具のみでフィギュアは無し…あれ?
何も紹介できないのも寂しいので仕方なく?買った、一応恐竜の頭の形をしたお菓子の箱の写真をどうぞ①。
幕張VS横浜…幕張の圧勝ですが、だからどうしたと言うのだ!?
こんな事で夏を終えるわけには行かないと望みを託したのが、7月22、23日の両日、科学技術館で開催された「第4回博物ふぇすてぃばる」でした。今年も古生物系常連さんのブースが頑張っていて収穫大でした。
②毎年翼竜を買っているハサミックワールドさんからの今年の翼竜はダーウィノプテルス。それにケラトサウルスも。どちらも10cmに満たない小さなものですが、相変わらずの細かさです。そしてさらに驚いたのは1/1の蚊。もはや神の領域です。今年はリクエストをすると目の前で切り抜いてくれるというのでミツクリザメをリクエスト。
写真を見ながら即興でスイスイと切り抜いていく名人芸を堪能しました。それでわずか100円!全長9cmですが歯も鰓孔もちゃんとあります。
③こちらもおなじみ、恐竜陶芸家、伊藤たかをさんの30cm級ケントロサウルスと羽毛デイノニクス。昨年のサイカニアといい、トゲトゲ恐竜は焼き物にぴったりです。
④「恐竜の島」で今年手に入れたのはタペジャラと小さなアルバートサウルスの頭のマグネット。
そしてサメや古生物のディフォルメソフビフィギュアが並んだ「サンガッツ本舗」でディプロカウルスを差し置いて思わず買ってしまった懐かしの鼻孔類モンゲルシュテルンオオナゾベーム(Nasobema lyricum)です。
⑤「博ふぇす」会場の科学技術館とは比較的近いのでハシゴした、神保町の「奥野かるた店」で開かれている「神保町ヴンダーカンマー」でも、こんないい物が手に入りました。丹波竜の頭骨(7cm弱)と、同じ地層で見つかったカエル、ヒョウゴバトラクスの復元模型、そして右端の梅干しの様なものはなんとエディアカラのトリブラキディウムのピンズ。いずれも焼き物です。
最後に今年の夏一番の買い物、ティラノサウルスの骨格模型を紹介しましょう(⑥)。ヤフオクで落札した物で、札幌在住の古市豊さんという方のハンドメイド作品です。1/30程の大きさなのですが、そのディテールたるや、もう笑うしかない程の凄まじさ。
頚肋骨、腹肋骨の繊細さをご覧ください。第3中手骨や又骨もちゃんとあります(⑦)。顎はなんと磁石で関節していて、開閉します(⑧)。そして素敵な台座に収まった姿はなんと美しい事か…(⑨)。
古市さんは落札後の取引連絡で、秘宝館Vol.43の記事で知ったスタンの頭骨模型が、製作の参考になったとおっしゃって下さいました。「恐竜秘宝館」がこの究極のティラノに少しでも貢献したかと思うと、感無量です。
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田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。