Vol.64 小学館の学年別学習雑誌の巻・とりあえず第一回
あけましておめでとうございます…もう2月ですが。今年も恐竜道をまっしぐらです。
新年あけましついでついついパンドラの箱まで開けてしまい、底知れない「小学館の学年別学習雑誌」の恐竜たちを解き放ってしまいました。
今まで秘宝館では「昭和の少年漫画誌」(Vol.40/41)や「子供の科学雑誌」(Vol.45/46)をとりあげ、さらに昨年出版することができた拙著「昭和トンデモ恐竜大全」でも昭和の雑誌の恐竜たちを紹介したのですが、この「小学館の学年別」の恐竜だけがほぼ手つかずだったのは、その膨大な量に恐れをなしたからに他なりません。かって競合していた学研の「〇年の学習」や〇年の科学」(これらの恐竜チェックも未完ですが…)が力尽き、講談社の「たのしい〇年生」など60年代早々に廃刊となっているというのに、小学館の「小学〇年生」は現在は「小学一年生」と「小学8年生」の2冊のみになりましたが、相も変わらず毎月書店に並んでいるのです。しかもこのところ頻繁に恐竜が取り上げられているのです。
「小学館の学年別学習雑誌」とはこのようなものです。wikipedia >>
大正から現在まで連綿と続いているこの学年別誌の中から恐竜記事を探すのはゴビ砂漠で中生代哺乳類の歯を見つけるようなもの。
今回報告できるのは50年代以降の本で、しかも80年代以降はだいぶ歯抜けで不完全ですが、それでも特集記事、付録の小冊子、付録の組み立て模型などの数は50を軽く超えます。しかしこれでもまだ氷山の一角かもしれません。勿論全部集めようなどと大それたことは考えていませんが、時々思わぬ発見があるので、チェックは欠かさない様にしなくてはと思っています。
取り合えず判明した恐竜関係の号をリストアップしてみました。持っている物は後程お披露目いたします。
*小学〇年生×月号は小〇×と略します。
1952(昭和27年)
〇小五12付録[ものしり図解宝典]
1953
〇小四5付録[学習図解宝典]
1954
〇小三5付録[きれいなどうぶつアルバム]
〇小六9付録[理科図解宝典]
〇小三4~’55/3まで連載[前世紀少年サピン]
1955
〇小四4~’56/3まで連載[前世紀少年サピン]
1956(昭31)
〇小五4~’57/3まで連載 [前世紀少年サピン]
1957
〇小六4~5 連載 [前世紀少年サピン]
1962
〇小五12[ナゾの恐竜王国]
1963
〇小三6[大むかしの生物]
1964
〇小五7付録[世界のふしぎ2]
1966
〇小三1付録[五郎のぼうけん]
〇小三11 [きょうりゅうのすべて]
1967
〇小四1[ナゾの恐竜王国]
〇小六10[前世紀の動物たち]
1968
〇小三4付録[世界恐りゅう事典]
1969
〇小四6[なぞの恐竜王国]
〇小四9[恐竜大画報]
1970
〇小三1付録[組み立て恐竜ブロントザウルス(ペーパーキット)]
〇小四5付録[人類の誕生]
〇小二7付録[光る太陽のとう]
〇小四8[恐竜大画報]
1971
〇小三1付録 [怪獣と恐竜ずかん]
〇小三4付録[怪獣と恐竜のずかん]
〇小四5付録[人類の誕生]
〇小三9付録[組み立て恐竜チラノザウルス(ペーパーキット)]
1972
〇小四4付録[サルから人間へ]
〇小四8付録[世界の珍獣奇獣]
〇小三8付録[組み立て恐竜チラノザウルス(ペーパーキット)]
〇小三9付録[怪獣と恐竜のずかん]
〇小五10付録[マンモス大模型(ペーパーキット)]
1973
〇小三4付録[怪獣と恐竜のずかん]
〇小五10[ゴビ砂漠に怪獣をほる!]
〇小四11付録[ジャンボトンボ組み立て紙飛行機]
〇小五12[恐竜の時代]
1974
〇小三1付録[組み立て恐竜ステゴザウルス(ペーパーキット)]
〇小五11[恐竜のなぞ]
1976
〇小二9[大恐竜のせかい]
〇小一10[恐竜チャンピオン]
〇小二11[恐竜探検隊ボーンフリーのひみつ]
*11~’77/3 小一・小二に、まんが「恐竜探検隊ボーンフリー」連載
1977
〇小一11[理科特集・恐竜]
1979
〇小三4[ビッグカラー・恐竜]
〇小六5付録[テレビ化記念・ドラえもん傑作コミック]
1980
〇小四1[恐竜の時代]
1981
〇小三8[日本の恐竜]
1988
〇小一6[ティラノサウルス]
1989(平成1年)
〇小二9付録[恐竜ミニ百科]
1990
〇小二7付録[巨大恐竜図鑑]
〇小六7付録[恐竜絶滅の謎]
1992
〇小一9[ゴジラと恐竜どこがちがうの?]
1995
〇小五5[超巨大恐竜を発掘!]
2001
〇小一7[ワンダーカラー・きょうりゅう大バトル]
2002
〇小二4付録[セイスモサウルス・フィギュア]
〇小一8[きょうりゅうはっけん、大ぼうけん]
2005
〇小二8付録[”スー”公式フィギュア]
2011
〇小三8[この夏恐竜を目撃せよ!]
〇小四8[恐竜のくらし解明!]
2018
〇小8初夏号[恐竜対談!芦田愛菜さんX小林快次先生]
2019(令和1年)
〇小8・8/9[恐竜博2019 ]
2020
〇小8・4/5[恐竜大検証]
〇小8・10/11付録[ティラノサウルス全身骨格プラモデル]
〇小一10[きょうりゅうほねほねプラモデル(トリケラトプス)]
2021
〇小8・10/11付録[プテラノドン全身骨格プラモデル]
以上の中で持っている物を紹介いたします。
「図解宝典シリーズ」
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・小五付録[ものしり図解宝典]1952/12 p7
・小六付録[理科図解宝典]1954/9 p14.p15
・小三付録[きれいなどうぶつアルバム] 1954/5 ページ記載なし
図解宝典とは図解雑学事典の様なもので、内容はあらゆるジャンルにわたり、恐竜の説明はあっても極僅か。「ものしり」は「生物の進化の年代表」1ページ。「学習」など表紙表うらに立派な恐竜が描かれているのに内容では全く触れられず。「理科」は「大むかしのいきもの」を説明した4ページの記事があり拾いものでした。「図解宝典シリーズ」は50年代前半に何冊か付録になったと思われますが全貌は判りません。「きれいなどうぶつ」はミニ動物図鑑(逆から開くと乗り物図鑑というギミックあり)ですが最初のページに大むかしのどうぶつとして恐竜が登場。これらの付録で恐竜は殆ど語られませんが、絵はどれも味わいがあります。
「前世紀少年サピン」
・小四 1954/4 p67 /5 p67 /7 p51 /9 p27 1955/1 p67 /2 p287
・小五 1955/9 p47.p48.p50.p52.p53.p54 1956/1 p315~p321
これは最近巡り会った「思わぬ発見」の一つです。作者の山川惣治は「少年ケニヤ」(新秘宝館Vol.28/29)や「少年王者」などで有名な絵物語の巨人。「ケニヤ」や「王者」にも恐竜は登場しますが、どちらも舞台は現代のアフリカで、恐竜は地底世界や奥地の湖に生息しています。
この「サピン」は、1954年の小学三年生4月号から57年の小学六年生5月号まで3年2か月間にわたっての連載で、後に単行本化された形跡も無いので、この絵物語を読んだのは54年に3年生になって6年まで続けて購読した人のみと言う激レア作品です。現時点で集められたのは全38話中8話だけなのでストーリーは大雑把にしか判りませんが、こんなお話の様です。
物語の時代設定は100万年前の旧石器時代。サピンはホモ・エレクトス(文中で明言はされていませんが)の間に生まれた肌がツルツルした突然変異の少年の様で、やはりサピエンス風の少女ユキメと旅をします。生物の考証はちゃんとされていて、恐竜100万年の無法状態ではありません。恐竜は連載後半の小五になって、二人が流れ着いたロストワールドな島の住民として登場。それまで小三から小四にかけての連載では、ちゃんと更新世の生物に襲われ続けます。私の持っている6冊の小四にはメガラニア風超オオトカゲや巨大ワニなどが登場。冒頭の「これまでお話」にはマンモスやサーベルタイガー(きばどら)の名も見られます。例外はダンクレオステウス似の巨大な板皮類(文中ではコッカテウスとされていますが、ウィキによるとCoccosteusは50cmにも満たない小型の板皮類です。)に襲われるシーンですが、作者はシーラカンスの発見(なんとこの連載の2年前!)を挙げてちゃんと言い訳しています。
小五は2冊しか手元にないので恐竜島でのエピソードは判りません。しかしこの恐竜画、特にコマ落としの様に描かれたティラノとトリケラの対決シーンは見事です。父親を倒され去って行くトリケラ母子を見送るサピン…。この先どうなるのでしょうか?もっと山川恐竜が見たい!
まめにヤフオクや古本サイトをチェックするしかありません。
*ネットでサピン第一回(1954年小三4月号)の冒頭ページを見つけました。えらく格好良いティラノの下の欄で生物の歴史がサラっと語られ、次のページで、前述したサピンの生い立ちが描かれています。
ナゾの恐竜王国
60年代に不定期に掲載されたコナン・ドイルの「ロストワールド」です。毎回異なった作家が漫画や絵物語など趣向を凝らして描いています。詳しくは新秘宝館Vol.62/63をご覧ください。ロストワールドの訳本を集めているので、新たに掲載号を見つけてしまったら金に糸目はつけられません…。
60年代の付録小冊子
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・小三付録[五郎のぼうけん]1966/1 p4.p18
・小三付録 [世界恐りゅう事典] 1968/4 p4.p5
「世界のふしぎ2」(’64)には「恐竜せいぞろい」という項が4ページにわたってあります。ふしぎ1に何があるかはわかりません。
「五郎のぼうけん」(’66)はまずはこちらを
しかし我家にあるのは小学三年生1966年1月号の付録…謎です。
学年別誌に掲載の恐竜登場漫画については偶然見つける以外しらべようもありません。最近もあのTVシリーズ「恐竜探検隊ボーンフリー」などの恐竜3部作が漫画化され連載されていたことを知りましたが、一冊も手に入れていません。
「世界恐りゅう事典」(’68)
まんが「犬は見ていた」、「ピンチ博士のなぜなに問答」との三本立てなのでわずか17ページしかなく内容もいまいち。表紙は迫力あるのですが。
カラー図鑑シリーズ
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・小四付録[人類の誕生] 1970/5 p14.p15
・小三付録 [怪獣と恐竜ずかん] 1971/1 p20.p21
文庫本サイズのこのシリーズは、カラーページも多く、解説も丁寧で、図鑑として充実した内容です。
小学四年生付録「人類の誕生」(’70/’71)と「サルから人間へ」(’72)は全く同じ内容。監修は明石原人の発見で有名な直良信夫博士です。
同じく四年生付録、ディメトロドンが表紙に描かれた「世界の珍獣奇獣」は、動物の歴史についてかなりのページを割いています。
三年生付録「怪獣と恐竜のずかん」(’71〜’73)の監修者は、ゴジラにも関わった、当時科博在籍の尾崎博博士。タイトルに偽り有りで、怪獣は全112ページ中僅か24ページ。後はかなり濃い恐竜の説明です。どの年の本も恐竜に関しては一緒ですが、怪獣は多少アップデートされているようです。
ペーパーモデル・恐竜
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70年代前半の付録。この写真は「昭和トンデモ恐竜大全」用に、編集者の方が付録ペーパーモデルのコピーを組上げ、記事を書くための参考にと送ってくれたいわば加工前のものです。本には素敵にレイアウトされたとても奇麗な写真が載せられ、著者でありながら思わずニコニコしてしまいます。まだの方は是非ご覧になって下さい。
ペーパーモデル・太陽のとう
オリジナルは小学二年生1970年7月号の付録ですが、これは2005年の「タイムスリップ昭和展で復刻され物。それでも最近ようやく手に入れた物です。太陽の塔の何が目当てかと言うと、もちろん内部に収められた「生命の樹」。このペーパーモデルは裏から見ると、絵で描かれただけとはいえ系統樹の様な生命の樹が再現されているのです。お宝とは言え復刻版。今回迷うことなく作ってしまいました。なかなか見事な絵でエスカレーターで登って行く人まで描き込まれています。左下の「光るどうぶつ」も切り取って樹に差し込むようになっているのですが、残念ながら光らなくなっているし、見た目もあまり良くないのでそのままにしてあります。
実はまだ生命の樹の実物を見たことが無いので、コロナが明けたら行ってみようかと。
昭和の恐竜特集記事
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左上から
小学三年生1963/06 p27~p29「大むかしの生物」
小学三年生1966/11 p52.p53.p58「きょうりゅうのすべて」
小学四年生1970/08 p17.p22.p23「恐竜大画報」
小学一年生1976/10 p14.p15「恐竜チャンピオン」
小学一年生1977/11 p11~p13「理科特集・恐竜」
小学三年生1979/04 p25~p27「ビッグカラー・恐竜」
小学四年生1980/01 p25~p27「恐竜の時代」
小学三年生1981/08 p15.p18.p19「日本の恐竜」
少年漫画誌ほど煽情的ではなく科学誌ほど教育的ではない、程良い昭和の恐竜の絵があふれています。蔵書はこれだけですが、判っていて未購入なのが10冊あり、判らないものは数知れません…。
平成の恐竜特集
いきなりルネッサンス後にワープしてしまいました。この間のことは今後の課題です。
小学二年生1989/09付録「恐竜ミニ百科」
*荒木さんの恐竜模型の写真が使われています。
小学二年生1990/07付録「巨大恐竜図鑑」
*55x76cmの巨大なポスター。1/50スケールでケツァルコアトルスやマイアサウラなど当時のトレンドが描かれています。
小学六年生1990/07付録「恐竜絶滅の謎」
*巻末の「最新恐竜レポート」を入れると96ページもある本格学習漫画。
小学一年生1992/09 p11「ゴジラと恐竜どこがちがうの?」
*ゴジラの足元にティラノサウルスがいるのがお判りでしょうか?平成ゴジラの身長は100mだそうです。
小学一年生2001/07 p40.p41「ワンダーカラー きょうりゅう大バトル」
*シャモティラヌスとプウィアンゴサウルスが主役になるとは!
小学一年生2002/08 p42「きょうりゅうはっけん、大ぼうけん」
*「世界最大の恐竜博2002」の主役セイスモサウルスのレポート
小学二年生2002/04付録セイスモサウルスと小学二年生2005/08付録ティラノサウルス“スー”のフィギュア。セイスモはチョコラザウルスの物ですが背中に棘があるオリジナルバージョンだそうです。このあたりは次のサイトで詳しいのでご覧ください。
スーは「恐竜博2005」の海洋堂製オフィシャルモデルのミニチュア版(非売品として配布)と同一ですが、塗りが異なります。
令和の付録恐竜フィギュア
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小学8年生2020年10/11月号付録「ティラノサウルス骨格プラモデル」と小学一年生2020年9月号付録「トリケラトプス骨格プラモデル」
*新秘宝館Vol.56で登場済みですが、今回はせっかくなのでサピンのワンシーンをまねしてみました。
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小学8年生2021年10/11月号付録「プテラノドン全身骨格プラモデル」
*本来は表紙の写真の様に、骨格を透明パーツで覆うようになっているのですが、あえて半身だけ塗ってみたところなかなかいい感じになりました。
この原稿もあと一息で完成というときに、古本屋ネットでサピンの恐竜が出てきそうな回が載っている小学五年生を2冊見つけましたが、1冊5500円!悩みどころです。
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田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。