新恐竜秘宝館

Vol.66 新たなる支配者が来る!

次回の「新・秘宝館」がアップされる頃には

ジュラシック・パーク・シリーズの完結編「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」が上映中で、この約30年間の万感の思いを込めて初日に鑑賞する筈の私は、「私は3回泣きました…」といったレポートを書いている事でしょう。しかし公開から原稿の締め切りまでたった3日間しかないとは!

 

で、今回はJW3を心して鑑賞するための準備号。そろそろ巷に出回り始めたJW3フィギュアの紹介に加え、新登場の超大物肉食恐竜ギガノトサウルスを特集して、最後のジュラシック・パークに向けてテンションをマックスに持って行こうという趣向なのですがその前に、NetflixのオリジナルCGアニメ「JWサバイバル・キャンプ」(原題はCamp Cretaceous)にも触れておかなければならないでしょう。

 

Netflixで配信中のこのシリーズ、ご覧になっている方も多いと思います。「ジュラシック・ワールド」開園前に島の別のエリアで体験キャンプをしていた少年少女が、JW1で描かれた騒動で島に取り残されてしまうまでを描いたシーズン1は、マスラニ社長のヘリが翼竜に撃墜されるシーンを遠くから目撃したりインドミナスに追いかけられたり、観客が避難した後のプールでモササウルスに襲われたりと、映画とリンクしていて面白いのですが、その後シーズンを重ねるごとに、かわいさ売りの子供恐竜や不細工なハイブリッド恐竜、ゲスト悪人やらが続々登場し、せっかくの良くできたCG恐竜は存在感が薄くなる一方で、アメリカのTVドラマにありがちな、いつ終わるとも知れない脱出劇(例えば新秘宝館Vol.31で紹介したドラマ版「ロスト・ワールド」や昔の「宇宙家族ロビンソン」)になっています。最新のシーズン4に至っては、ようやくイスラ・ヌブラル島を脱出した一行がたどり着いた先の島は恐竜はおろかサーベルタイガーまで飼育されており、どこでもドアみたいな仕掛や、恐竜を管理する犬型ロボットも登場。あのティラノが実験材料にされている有様で、もはや恐竜は刺身のツマ状態です。私は中途でギブアップし早送りで観てしまいました。しかもシーズン5への驚愕の展開を匂わせてTo be continuedです。はたして続きがあるかどうかは判りませんが、映画のJWシリーズの世界とはすっかりパラレルワールドになってしまいました。

 

シリーズ映画のオフシーズンにアニメを放送し、そのフィギュアを販売するというのはスターウォーズでもやっていた手ですが、そうと判っていても乗るしかありません。この3年間「サバイバル・キャンプ」の名を冠したフィギュアを筆頭に、様々なシリーズのJWフィギュアがマテルからこちらの懐事情もお構いなしに発売され続け、かって秘宝館Vol.47で危惧した「エライ事態」となっています。コンプリートはとうに諦めましたが、JPシリーズ伝統の、画面には登場しない(どうやらゲームには登場するようですが)マニア向けレア恐竜が店頭に並べば抵抗する術もなく、気が付けばこのような有様です。

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パッケージを捨ててしまったのでどれがどのシリーズなのか判りません。気になる方はネット検索!

 

上から、イリタトル、マジュンガサウルス、エドモントサウルス(トサカ付き)、オウラノサウルス、ナーストケラトプス、シノケラトプス(「炎の王国」バージョンではほぼパキリノサウルスでしたが修正されています)、モノニクス(!)、マシアカサウルス(!!)、ガリミムス、スティラコサウルス、サウロペルタ。

下段は、スクリーンには一度も登場したことがない古生物たち。ポストスクス、スクトサウルス、JP一作目以来の登場かもしれないディメトロドンに意外にも初アクションフィギュア化のプレシオサウルスです。映画に登場した海棲爬虫類はJWのモササウルだけですが、そもそもの発端が琥珀に保存された蚊が吸った恐竜の血液から始まった事ですから海棲爬虫類は無理があります。モサの場合はどうだったのでしょうか。

右の巨大なブラキオサウルスは、なんと一作目の時にツクダホビーから発売された、映画のプロップをもとにしたソフビモデル(新秘宝館Vol.24)と同じ原型。一応アクションフィギュアですが尻尾は殆ど動かず、脚は膝が曲がらないので動かすと足の裏が地につかなくなり、首は付け根ごと上下してしまうので、下げるととんでもない格好になってしまいます。動かして遊べるのは顎くらいで、ツクダだけで充分だった…と後悔の一品です。何よりも邪魔くさい。

その下は、最近買ったので覚えている「アンバーコレクション」シリーズのディモルフォドン。このシリーズはトリッキーなギミックを排した大人向け?アクションフィギュアで、塗装もリアル志向です。このディモルフォドンのカップルもなかなかいい感じなのですが、同様なRebor(イギリスのブランド)の物と比べてしまうとオモチャ感が漂ってしまうのは否めません。

 

これらのイレギュラーなフィギュアのおかげで部屋のJPコーナーは溢れかえり、親亀の背中に子亀状態。そんな中「新たなる支配者」フィギュアの参戦です。今のところまだ理性が働いていて、買ったのはこれだけですが。

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ラジャサウルス、テリジノサウルス、ケツアルコアトルス。そしてトラック型パッケージに入ったマルチパックの2種類。トリケラトプス、バリオニクス、リストロサウルス(唐突過ぎ!)、カルノタウルス、クレア、オーウェン、アロサウルス、ディモルフォドン、ステゴサウルス、ブルー。そして運よく一発でゲットしたブラインドパックのミニフィギュア、ギガノトサウルスです。

 

今回のフィギュアに共通するギミックは、体に埋め込まれたDNAチップなるものを引き出してスキャンするとデータが得られるというものなのですが、そんなことをして面白いのか?と思ってしまうのはスマホが無いせいか…。ティラノやブルーはギミック以外は変わり映えしない姿(当然ですが)なので今回は厳選しようかなと。ブルーなど「炎の王国」の時はコンプリートを目指したものですが…。(新秘宝館Vol.43/Vol.44

前回登場巨大モササウルスもチップを埋め込まれただけなのでパス。トリケラやアンキロサウルスも可動ギミックと色が変わったくらいにしか見えないので買い控えています。

 

しかしこれから主役級の大物がやって来ます。625日発売されるのは、巨大ギガノトサウルス、さらに巨大な1.5mもあるというドレッドノータス。トサカ付きヤンチュアノサウルスに初ものフィギュア、クイルメサウルス、メガラプトル。予告編に登場のアトロキラプトル、ピロラプトルなど。しかもアメリカのサイトを見ればコエルルスにスコルピオヴェナトルまでいます。散財するのは仕方ないとして、もはや飾る場所がない…。さらには「アニア」のシリーズも加わりますし、頭を抱えています。

 

次回秘宝館で部屋の惨状も併せてご報告します。お楽しみに。

 

さて、今回の最大の悪役と目されるギガノトサウルスです。ネットで小出しされている予告編の映像に、映画のプロローグと思われる白亜紀のシーンであるのですが、その中のギガノトサウルスがティラノサウルスをいとも簡単に倒すという場面が、恐竜仲間の物議をかもしました。化石で知られている限り、ギガノトサウルスとティラノサウルスは生息年代も違えば地域も異なり相まみえることはありません。細かい事は言うな同じ白亜紀後期,3千万年位の差なんて大目に見て楽しめよと言うなかれ、このあたりを突っ込んで酒の肴にするのもJPシリーズの醍醐味で、逆に言えばそれだけマニアが話題にできるクオリティーの高い恐竜映画なのです。そういえばあのジュラシック・パークのブラキオサウルスが立ち上がるシーンもいかがなものかと盛り上がった記憶があります。

*これは私の邪推ですが、現代で、ティラノがギガノトにリベンジするのではないでしょうか。

 

ギガノトサウルス

さらに詳しいのがこちら

 

奇しくもギガノトが発見されたのはJPの年

1993年。95年に記載され、さっそくその年の「恐竜学最前線12月号」に「記録破りの肉食恐竜発掘‼ギガノトサウルス」のタイトルでドン・レッセムさんの現地レポートが載っています。この「Tレックスを凌ぐ最強肉食恐竜」の登場はインパクト大で、他の有名恐竜に比べデビューして日が浅い(それでも30年近くたっていますが)のにフィギュアの数はなかなかのものです。特に最近、中国の複数のメーカーから40cmクラスのモデルが続けて発売されアマゾンなどを賑わせています。まずはその辺りからご紹介。

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左上は最近お気に入りのメーカー、PNSOのもの。特徴的な下顎先端の下向き突起が強調されています。一見ユニークな造形ですが、恐竜倶楽部仲間で肉食恐竜をディープに追求、ネットで「肉食の系譜」というサイトを立ち上げているUさんは高評価をしています。

 

その右はNanmu製で、模型としてはとてもよくできていると思います。頭が少し大きい気がしますが、たまに見かける全身骨格標本もそんな印象なのでギガノトサウルスらしさは伝わってきます。こちらの方も気に入ったようで詳しく紹介しています。

 

Vitaeも何度か紹介したことのあるメーカーで、私にとっては初めて遭遇した中国のメーカでした。(新秘宝館Vol.44

こちらの造形も丁寧で好きなのですが、ケチって台座無しの廉価版(1/3程の価格)を買ったのが大マチガイ。なんとクリスマスカードの様なキラキラのパウダーが振りかけられていて唖然としました。おまけに塗りは手抜きでバリやパーティングラインも残り、要するにお子様用の玩具バージョンだったようです。仕方なしにリペイントしてごまかしましたが、よく見るとまだ少しキラキラが残っています…悲しい。

*本来はこのようなもの

 

中国物は他にEden Toy、少々高価なW-dragonなどがあり、スペインのメーカーEofaunaからも良いプロポーションの物が出ています。

 

下の段左はサファリ。一般向けとしてはなかなか良い出来ですが、現在はオークションに出るのを待つほかありません。サファリではもう一つワイルドサファリブランドの物があって、むしろそちらの方がカッコいいのですが、日本には輸入されていないようです。セカイモンで見つけたら買ってしまうかも。

 

シュライヒからは絶版物を入れると4種類も出ていますが、どれもオモチャじみています。ブリーランドの物もリアルさに欠けます。パポのちょっと格好いいゴジラ立ちギガノトは、並行輸入で割高ですが手に入ります。意外なことに、あの何でも揃うコレクタからはまだ発売されていないようです。近縁のカルカロドントサウルスやマプサウルス、アクロカントサウルスはあるのに…謎です。

 

右は秘宝館Vol.42で紹介したResaurus Carnageというメーカーの1997年製アクションフィギュアで、顔は寸詰まりであまり似ていませんが良く動います。今となってはかなりレアな物の様で、イーベイオークションを見ると684ドルもの値が付いているのもあります。

 

次は国産品

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まずはフェバリットのソフトモデル。荒木さん原型です。値段が安い分、塗りも一般向けなので、中国勢との対抗上リペイントしました。フェバリットには他に、低学年向けのやわらかで大きなサイズのギガノトもいます。その右は秘宝館Vol.64で紹介したSINZEN造形研究所こと竹内信善さんガレージキット。1998年のワンフェスで購入して組んだ物です。下は比較的最近の食玩「恐竜コロシアム」の物と2007年発売のハピネットのソフビシリーズ「大恐竜時代」のもの。これも荒木さんの仕事です。

他には「ガチャアクションTHE恐竜」というタカラトミーのガチャポンと「ほねほねザウルス」にいくつかあるくらいで、意外と国内では低調です。

 

次回も引き続きギガノトフィギュアが登場。JWのものや今目を付けている頭骨模型その他をほどほどに購入、お披露目する予定です。

 

嬉しいご報告。5月下旬に開催された新宿のミネラルショーに、コロナで途絶えていた海外のディーラーが帰ってきました。まだ二つだけですが、やはり目新しい恐竜化石やレプリカがあると盛り上がります。古生物関係者や恐竜マニアも集い楽しい時間をすごせました。

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画像5は、「新たなる支配者」フィギュアも発売されてトレンディなラジャサウルスのレプリカ。博物館でもあまりお目にかからない物です。50万円ではとても買えませんが…。

右端は“ギガノト以外はなんでも揃う”コレクタのラジャ。ラジャサウルスはアベリサウルス類なのですが、どういう訳か、今回紹介したJW3のフィギュアには、マジュンガサウルス、マシアカサウルスと3種類のアベリサウルス類が揃っています。代表的なカルノタウルスはJWシリーズの常連ですし、さらに25日発売のクイルメサウルスもアベリサウルス科です。これからアベリサウルスの時代が来るのでしょうか。

 

イタリアから来たZoicは何度も買い物をしている馴染みの店なのですが、久々で浮かれたのかこんな物を買ってしまいました。

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Watsonisuchus madagascariensis

恐竜とは無縁、爬虫類でさえないのに7万円とは…さんざん悩んだ挙句の三畳紀の両生類です。ネットで調べたのですが、日本語の解説はありませんでした。かろうじて「四肢動物の系統分類」というサイトでマストドンサウルス科と判明。マストドンサウルスは三畳紀の水辺でクルロタルシ類や恐竜と張り合った猛者(新秘宝館Vol.54/Vol.55)ですから、その仲間となれば買って正解…と自分に言い聞かせています。

化石は素晴らしい保存状態でノジュールに収まっています。写真ではよく判りませんが左側は凹になっていて、骨ではなく印象が残っているように思われます。右側は骨の表面は失われていますが歯が付いた下顎なども残っています。背骨が付いているのも嬉しい。

何といっても、上目遣いで家に連れ帰ってと言っている様な顔つきに、気持ちが動いてしまったのでした。

海外サイトにはこんな画像がありました。

 

さて最後に宣伝です。

今、書店やコンビニに並んでいる「昭和40年男」という雑誌の6月号がかなりのボリュームの恐竜特集を組んでいて、私のインタビュー記事と昭和の恐竜グッズ解説も載っています。他にも意外な人たちの昭和恐竜談が聞けて780円!ぜひお買い求めを。

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「筋肉少女帯」の大槻ケンヂさん(判るかな?)が恐竜100万年のラクウェル・ウェルチへの熱い思いを語っていて、思わず頷いてしまいました。なので最後はラクウェル・ウェルチのサービスショット。新秘宝館Vol.58で欲しがっていたラクウェル・ウェルチ&トリケラトプスをヤフオクでついに手に入れたのです!


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田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。