新恐竜秘宝館

Vol.88 3Dプリント骨格レプリカ図鑑

昨年の暮れ、年に2度のお楽しみミネラルショーが池袋で開催され、またしても散財してしまいました。とは言え昨今はひと昔前の様なお手頃価格の実化石の掘り出し物はなかなか無く、代わりにこの数年増え続けている3D プリンターで制作された安価な縮小レプリカに目が行ってしまうのがこの数年の傾向。

気が付いてみれば、我が家の棚には3Dプリントされた恐竜骨格が溢れていました。
今回はその辺りをまとめてみました。

 

私が初めて手にした3Dプリンター製レプリカは、ブラックヒルズ製の1/6スタン頭骨でした。たしか2007年の新宿ミネラルフェアの時で、当時はブラックヒルズがブースを出していたのです。その時は頭骨のパーツがバラバラになった教育用?を購入したのですが(秘宝館Vol.43)、そのあまりのリアルさに我慢できず完成品も買ってしまったのでした。

 

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3Dプリントスタンと、それ以前にブラックヒルズから発売されていた1/10位のスタン。違いは歴然です。それまで縮小骨格は人の手によって作られていたので味は有りますが正確さには欠けました。リアルサイズの物と寸分たがわぬ1/6スタンが目の前にあるのはショッキングな事でした。凄い時代が来たものだと喜んでいたのですが…。何故かその後10年以上、3D プリントレプリカが市場に出回ることは私の知る限りありませんでした。

思い出されるのが2017年、科博で「大英自然史博物館展」が開催された時、大英自然史製のマンテルのイグアノドンの歯の3Dプリントレプリカが発売されると聞いて色めき立ったのですが、見事に買い逃した事。その顛末は新秘宝館Vol.35で。

*同じく大英自然史から持って来た3Dプリンター製の実物大「ケープライオンの頭骨」は売れ残っていたのですが、絶滅種とは言え現生のものなので買い渋ってしまいました。今にして思えば買っておくべきだった…ケーブライオンだったら迷わず買ったかも。

 

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2020年のミネラルショーで購入した、アメリカのメーカー「Triebold Paleontology」製のティラノサウルス「Tufts-Love Rex」の1/8頭骨が久々の3Dプリントレプリカでした。(新秘宝館Vol.58

これはDeep Time Micro-Museumシリーズと銘打たれたもので、その後のミネラルショーでトロサウルスのニコル(新秘宝館Vol.62)、ブロントサウルスと揃えることができました。

 

2021年にそれまで博物館の展示模型などを手掛けていたアンフィ合同会社が、3Dプリンターによる骨格縮小模型のネット販売を開始。現生が中心ですが古生物もラインナップされていて、それらはネット上にある商用利用可能データを利用している製品が多いようです。高精度のプリンターを使っているそうで出来が良く、お値段も手ごろなのでつい手が出てしまいました。秘宝館でもいくつか紹介していますが(新秘宝館Vol.61Vol.76Vol.78)改めてかき集めてみました。

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大阪自然史のアロサウルス(新秘宝館Vol.78)/モササウルス(リペイントしています)/イクチオサウルス(オリジナルデータ)/エルリコサウルス/テラトフォネウス/ガストルニス…他にもいくつか持っていますし、欲しい物もまだまだあります。例えばシーラカンス骨格とか。

 

2021年に神田の奥野かるた店で開催された博物グッズの展示即売会「神保町ヴンダ―カンマ―」に、骨ガチャなる物が登場します。古生物ではなく現生の動物の頭骨を博物館標本の3D データから制作した物。良く出来ていてガチャのカプセルに入っていて1500円。現在でも「博物ふぇすてぃばる」などで人気のコーナーとなっています。(新秘宝館Vol.62

 

2022年、久しぶりに行ったワンフェスでは3Dプリンターで作られたガレージキットが溢れていました。このころから一般モデラーが使えるような安価な3D プリンターが普及し始めたようです。恐竜物もいくつかありましたが、実物のデータに基づいたレプリカと言えるものは、新秘宝館Vol.67で紹介した美容専門学校の女子生徒が売っていたダンクレオステウスとスミロドンの見事な頭骨だけでした。

 

そしてこの年科博で開催された「化石ハンター展」で売られていた、小さいのに10000円もするケサイの頭骨も3Dプリンター製でした。(新秘宝館Vol.68

 

2024年に、科博のクラウドファンディングでフタバサウルス頭骨の1/3レプリカを手に入れた事は記憶に新しいところです。(新秘宝館Vol.7778

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再録ではありますがこれらの写真を載せておきます。詳細は過去の新秘宝館をご覧ください。

路上博物館・骨ガチャ(右端の彩色されたカバは去年の博ふぇすで手に入れたもの)/ワンフェスの美容学校レプリカ/化石ハンター展のケサイ/フタバサウルス

 

アマゾン等で手に入る中国のメーカー「菊石」は、前々から高品質な骨格模型を作っていたのですが、去年あたりから3D プリンターによる骨格も販売するようになりました。精密度は落ちるものの、5千円から1万円代と従来の物の半額以下なので、面白い物を見つけるとつい買ってしまいます。

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古代鯨アンブロケトゥス/モササウルス/ニジェールサウルス/ハドロサウルス/ディメトロドン

 

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最近ヤフオクで見かけるRal_Shopさんの製品。アンフィと同様、商品利用可能なデータを使っているので何種類か被っています。プリンターの精度はいまいちで積層など目立つのですが、お値段が2700円と格安とあってはいた仕方ないでしょう。色も塗らなければならないのですがそれもお楽しみと思えば結果、なかなかいい感じが出せたかなと満足しています。なんと言ってもレアな恐竜がいるのが嬉しい。

サルミエントサウルスは頭骨が見つかっている数少ないティタノサウルス類のひとつで、あの「巨大恐竜展」のパタゴティタンの頭の基になったものです。(新秘宝館Vol.80

ヘレラサウルスとエオラプトルは珍しい産状状態。

パノプロサウルスに至ってはほぼ覚えがありません。ウィキで調べてしまいました。

プリンターの力不足か、頭骨の表面の細かな凹凸が再現できずツルっとしているので、手を加えようと思ったのですが、めげてしまいました。

 

 

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ワンケル・レックス

このスミソニアン在住のTレックスはデータがフリーだそうで複数のメーカーが商品化しています。3体手に入れたのでご紹介。

左はマスターレプリカというブランドのスミソニアン公認レプリカ。証明カードも付いています。アマゾンで13000円ほど。中央はアンフィ合同会社の製品で5000円ほど。そして大きな物はヤフオクRal_Shopさんの物で20cm以上もあるのに3000円とお得な買い物でした。まあ難は有りますが遠目にはOKです。しかし3体並べたところで当然の事ながらどれも細部まで同じでさほど面白くもありません。同じ個体のレプリカは良い物が一つあれば充分と言うのが結論。仮に私が強力な3Dプリンターを持っていたら、あのブラックヒルズのスタン並みのマイ・ワンケルが作れるのでしょうか。

 

さて3D最後は、冒頭のミネラルショーでの散財の元凶となったレプリカたちです。この数年フランスから参加しているエルドニアと言うブースがあり、オーナーのフランソアさんは気さくな人物でワインをふるまってくれたりします。このブースには毎年、なかなか変わったものが並ぶので楽しみです。新秘宝館Vol.52で紹介した、ヒトの頭に噛みついているディニクティスなどはここで購入した物。

お手軽な小サイズのレプリカが登場したのは2024年の夏の事で(新秘宝館Vol.78)それ以来増殖し続けています。5000円位から1万円ちょっとというあまり悩まない価格で、出来も塗装もなかなか、しかも種類的にもそそられるとあっては、もはや抵抗できません。 

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上段左から

バシロサウルス類ドルドン/モササウルス類プログナトドン/モロッコのアズダルコ類アランカ/ミクロラプトル/三畳紀の両生類メトポサウルス(新秘宝館Vol.82)/アンキロサウルス類

中段 白亜紀後期の陸棲ワニ、カプロスクス

下段(これらが昨年末のミネラルの戦利品です)エラスモサウルス類/トリケラトプス幼体/スピノサウルス類?

そして今回最大の収穫かつ問題となったものが右の見事な全身骨格です。去年記載されたばかりのドロマエオサウルス類の新種でシュリShri rapax)と名付けられました。

実はフランソワさんはこの記載論文の共同執筆者の一人だったのです。

このレプリカは全高25cm程で、置いてあったリアルサイズのレプリカ(60万円!)の1/3ぐらいだったと思います。非常に良い出来で20000円程ですが、その場に集まった恐竜倶楽部関係者には実物大よりシャープで良いと好評で、皆さんこぞって購入していました。しかし話はあらぬ方向に…。

そのくだりは倶楽部仲間の肉食マニアUさんのミネラルショー・レポートをお読みください。

 

という訳で、この頭骨はヴェロキラプトルのデータを改変した物でした。どうせやるならもっと似せて欲しかったですが。ちなみにリアルサイズの方は頭が取り外し式で(一般客用にか上下逆に取り付けられていたのはご愛敬)、記載論文が頭骨を含んでいないことを考えるとまあ良心的です。

写真右上に張り付けたのは、おまけにもらった記載論文(フランソワさんのサイン入り)に載っていた、行方不明になっている実物頭骨の写真です。いずれこの写真を基に頭骨を自作して付け替えてやろうと思っています。

 

3Dプリンターはとても便利で縮小レプリカをつくるのにうってつけなのですが、世の中の縮小骨格が全てプリンターで打ち出されてしまうのはいかがなものか。3Dデータの縮小モデルはその正確さゆえに縮尺によっては違和感がある場合もあります。プラモデルの名人原型師は実物を人間の視点で見ることを踏まえて、あえて設計図通りには作らないなどと言う話を、どこかで聞いた事があります。

造形師さんがコツコツと思いを込めて作り上げるカッコイイ骨格モデルを絶滅させてはならない!

という願いを込めて匠の手による3体の極上手作り骨格をお披露目します。 

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タブリンさんの木製頭骨。

実物大ヘテロドントサウルスは私がリクエストした物。こんな面倒くさい歯列をした恐竜を快く作って下さったタブリンさんに感謝感謝です。期待通りの見事な歯並びです。

イリタトルはメルカリでゲット。奇妙に見えますが、イリタトルの頭骨は先端上部が見つかっておらずこの様に直線的に復元されることもあるのです。ユニークで実に面白い。きっとタブリンさんのそう思ったのでしょう。

やはりメルカリで手に入れたイクチオサウルス胸像?も独創的。鰭は片方しかありませんが指骨がひとつひとつ造られているのには驚愕!歯も細かいし表面の質感も見事です。そして商品説明には「3Dプリンターで作ったものではない」と銘記されていました。作者の方は存じ上げませんが、きっと3Dプリンター全盛時代を憂う筋金入りのモデラーさんなのでしょう。頑張って下さい!

 

ここまで作り物の骨を紹介してきましたが、年末から新年にかけてホンモノを買わなかったわけではありません。最後にこちらをどうぞ。

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ミネラルショーで買った唯一の実化石、マダガスカル産ペルム紀の爬虫類、バラサウルス(Barasaurus besairiei)のネガポジ化石です。バラサウルスはウィキにも載っていないマイナーな爬虫類でプロコロフォン類に属します。プロコロフォン類は、昭和の恐竜図鑑の冒頭に図入りで説明されていた爬虫類の分類、無弓類・単弓類・双弓類のうちの無弓類です。

現在では単弓類は爬虫類ではなく、無弓類も側爬虫類と呼ばれ真正爬虫類の双弓類と区別されます。無弓類はほぼ古生代で絶滅しています。(かってはカメ類が唯一の生き残りとされていましたが現在では否定されています)

この化石は尾が失われていますが全長20cm程。我が家に無弓類をお迎えするのは初めてです。これで期せずしてペルム紀から三畳紀にかけてのマダガスカル産の双弓類(新秘宝館Vol.63)・両生類(新秘宝館Vol.66)・無弓類と揃ったわけで、しかもいずれもネガポジ。なにか嬉しいです。

そして現生の獣脚類、それもラプトル=猛禽類です。(ラテン語だとドロボーですが英語だとraptorは猛禽を指すそうです)

ツミという日本最小の猛禽類です。

上野駅構内の自然系ショップ「スタディルーム」で見つけ、あまりの格好良さに一目惚れして40000円をものともせず衝動買いしてしまいました。普通の骨格標本と違い、翼と尾羽が付いていてまるで始祖鳥ベルリン標本の様です。全長25cm弱と小柄ですがさすが猛禽類、精悍で、どことなく非鳥類型獣脚類のにおいがします。

 

いいもんです。
いつまでも眺めていられます。


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田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。