Vol.63 恐竜プラモデル史 8
ホビージャパン誌がジュラシック・パーク公開に合わせて1993年8月号で組んだ恐竜特集で、海洋堂の宮脇修一さんが「恐竜モデル10年間の流れをふり返ってみよう」と題した興味深い記事を書いています。前々回から紹介している海洋堂恐竜キットの歴史を語っているのですが、その中で「1987年に松村しのぶが入社してから、新たな恐竜造形の歴史が始まった」とし「生物を知った者のみが生み出すことのできる自然な動き表情等、まるで生きてそこにいるような造形」と絶賛。以降の恐竜シリーズを松村さん中心の展開にしたそうです。(名称もダイノランド・シリーズと改められました)。確かに現世動物を得意とする松村さんの恐竜は動物そのもの、それまでの怪物的イメージはありません。松村さん流自然体作風の恐竜は、その後、自身が造形、監修したチョコエッグやチョコラザウルスの大ヒット等を経て、現在に至るまで日本の恐竜造形の主流になっている様に思います。
そんな松村さん原型の海洋堂恐竜キットの中から、印象的なものをいくつか紹介します。
1/35ティラノサウルス。記憶に間違いなければ、これが第一作だと思います。頭骨を反映した顔のティラノの模型は世界初かも。
なんとも優雅なたたたずまいのスコロサウルス(1/35)。現在では尾のスパイクを修正され、エウオプロケファルスとされています。
1/35トリケラトプス2体。手前はレジン製で後方はソフビ。
ヴェロキラプトル&哺乳類。動物ドキュメンタリーのワンシーンを見ている様です。
ランフォリンクス。絶妙なバランス!
1/20ティラノサウルスAとB(手前)ソフビ製。後方のAは口を閉じた状態に改造してあります。
1/20エラスモサウルス。ソフビ製。でかいです。
1/20ブラキオサウルス。ソフビ製。とんでもなくでかいです。左のフェバリットのブラキオと比べてください。
更新世の陸ガメ、メイオラニア。素晴らしい出来です。
’90年代の海洋堂恐竜を語る時忘れてはならないのが、山崎繁さん原型の骨格シリーズですが、秘宝館Vol.26とVol.31で紹介済みなのでそちらをご覧ください。
●その他の’90年代恐竜キット
HORIZONというメーカーは、’93年にジュラシック・パークの恐竜の素晴らしいキットを発売するのですが、(「ジュラシック・パークの恐竜キット」の項でまとめて紹介します)それに先駆けて、おそらく’90年代の初め頃に4点の1/30ソフビキットをリリースしていました。
いかにもブロントサウルスといった風情のアパトサウルス。レトロ確信犯でしょう。
ステゴサウルスとティラノ。こちらは中途半端にレトロです。
エラスモサウルス。…にしては首が短いようですが。
今でも恵比寿にあるアメリカントイ専門店、モンスタージャパンのオリジナル、恐竜100万年のアロサウルス風ソフビキット。これは殆ど世に出ていないレアアイテムだと思います。
●おまけ(これは’80年代かもしれません)
れっきとした大手プラモメーカー、アオシマのソフビキットなのですが、当時のトレンド、「活動的な恐竜像」をはき違えたような情けない出来。何故か1/48スケールと表記されているのは、スケールモデルのつもりだったのでしょうか?
次回はガレージキットの祭典「ワンダーフェスティバル」で売られていた、個人メーカーの恐竜キットを紹介します。
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田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。