新恐竜秘宝館

Vol.61 魚竜・後編:歌津魚竜館メモリアルと我家の自慢の魚竜骨格たち

魚竜特集後編です。

まるでこの特集に合わせたかのように、福井の恐竜博物館で「海竜―恐竜時代の海の猛者たち」展が始まり、情報不足だった私は寝耳に水でびっくりしたのですが、ネットで内容を見ると、やはり主役はモササウルス類と首長竜の様ですので、魚竜推しの方はこちらで補完してください。

ウタツサウルスのタイプ標本はぜひとも拝みたいところですが…勝山は遠い。でも特別展限定フィギュアでウタツサウルスがでたら、これは買い逃せませんね。

 

そのウタツサウルスのふるさと、岩手県南三陸町にあった「歌津魚竜館」に、私は2度行っています。2回とも演奏ツアーの途中で寄ったもの(なかなか自腹で行けるところではありません)で、1度目は秘宝館Vol.47でちょっと触れたように気仙沼からの帰り道に偶然見つけました。まだ町名が歌津町だったので2003年か2004年の事だと思います。(2005年に合併して南三陸町になりました。)

2度目は2009年、今度は仙台から盛岡に行く途中、時間をやりくりして単独行動をとって行きました。こちらは土産のレシートがとってあり日付が判ります。191145分!夕方までに盛岡に着かなければならないので早起きしたのでした。

 

初回はバンドのメンバーをあまり待たせるわけにもいかず、駆け足で見学し土産もじっくり選べなかったのですが、Vol.47で紹介したウタツサウルスのネクタイピンとライムリージス産イクチオサウルスの歯のレプリカ(多分魚竜館特製)は良い買い物でした。

 

2度目は時間もありたっぷり見学できたのですが、土産売り場は特産品で埋め尽くされ魚竜グッズはほぼ壊滅状態。もともと魚竜館は「水産振興センター」の一部で物産店や民俗資料館と同居していて地元の珍味などを味わえる食事処もある施設。私が買い物をしたのはちょうど昼時、地元の漁師さんたちがいい機嫌で一杯やっており誘われたりもしたのですが電車の時間もありそうもいかず…と書いているうちにいろいろ思い出してきました。で結局ゲットしたのは控えめに魚竜人と書かれたTシャツと、ありがちな可愛いイルカキャラ(ウタちゃんとでも言うのでしょうか?)のタオルだけでした。残念。

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(画像1)今となっては貴重なパンフレットと入場券。2度目の時の物で、地名が南三陸町になっています。

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(画像2)1回目にゲットのタイピン、歯のレプリカと2度目の時のTシャツとタオル。

 

そしてご存じの様に2011年の震災で津波の直撃を受け(正に波打ち際に建っていた建物でした)大ダメージを受け取り壊されて再建のめども立っていないようですが、幸い収蔵品の大半は流出を逃れ、レスキュー、修復されて一部は新たな場所で展示されているようです。

 

日本地質学会

南三陸なう:南三陸町の公式ブログ

南三陸町役場

 

歌津魚竜館があった管の浜には、あの津波をもろともせず今なお健在な、クダノハマギョリュウの産状化石を収めた「魚竜館 」が小規模ながら再建されています。

 

さて次は我が家の魚竜骨格模型、レプリカ、そして実物化石の数々です。

 

魚竜骨格フィギュア

 

前回、首長竜、モササウルス類に比べ魚竜フィギュアの人気のなさを嘆いたばかりというのに、骨格フィギュアは輪をかけた寂しさ。

我家には5つしかありません。

実は中生代の海棲爬虫類の骨格フィギュアのほとんどは首長竜。印象的なその姿が模型映えするのでしょうか。海洋堂ガレージキット(秘宝館Vol.31)、白木の恐竜(秘宝館Vol.11)、食玩(秘宝館Vol.44やチョコラザウルス)、科博のガチャポン、ペーパークラフトから消しゴムまで多方面で繁栄しています。以前はフェバリットの頭骨シリーズにも名を連ねていました。

 

ジュラシック・ワールド出演や、NHKの番組に最強として取り上げられたこともあり人気上昇、今や海棲爬虫類フィギュア生態系の頂点捕食者の座を狙うモササウルス類でさえ骨格フィギュアとなると寂しいもので我が家にあるのはなんと4体のみ。

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(画像3)最強モササウルスにかろうじて数で勝利した魚竜骨格フィギュア、左上はBBCウォーキング・ウィズ・ダイナソーのオフタルモサウルスでバーガーキングのおまけ (新秘宝館Vol.8)、他はイクチオで中段は童友社「骨格ミュージアム」、手前は嬉しい出来のジオワールドの発掘キット「海のモンスターシリーズ」。このシリーズには他にエラスモサウルスとモササウルス(新秘宝館Vol.42)もありいずれも大味ではありますが良い出来です。右の小さな物は伝説の消しゴム(秘宝館Vol.53)。右上に張り付いているのは最近ヤフオクで手に入れたアンフィ合同会社というメーカーの11cm程のレリーフ。このメーカーは3Dデータを基にプリンターで模型を作っている様でこのイクチオもそうなのでしょう。縮小されてはいますが、フィギュアと言うよりはレプリカと呼ぶべきか。

 

魚竜化石レプリカ&実物化石

 

レプリカや実物化石の数では、少なくとも我が家では、魚竜は首長竜やモサ類を圧倒しています。それはひとえに恐竜はもちろん他の海棲爬虫類に比べても「お手頃価格」だからです。(ひと山いくらのモロッコ産モササウルスの歯は別ですが)

 

クビナガやモサの骨格は大型の物が多く、博物館の展示も立体的に組上げられ、市販のレプリカもそれに準じているので、ちょっとした頭骨レプリカでも10万では買えません。そこへ行くと魚竜の化石はレリーフ状の物が殆どなのでレプリカ製作のコストもかからず低価格、おまけに小型の個体も多いので飾りやすい、と衝動買いできる条件が揃っているのでいつのまにかこんなに集まってしまったのです。実物化石も椎骨などはモロッコ産モサ歯に次ぐ安さ、そして極たまに、ほれぼれするような化石が手の出る価格で売っているのに遭遇するのです。

 

*魚竜のレリーフ状全身骨格化石がこんなに多いのは何故なのかは判りませんが(体形のせい?)、見事な化石がヨーロッパ辺りで大量に発掘、販売されているようで、日本の津々浦々の博物館にもいきわたっているほどです。私は以前、蓼科高原で偶然見つけた私設博物館で、額に入ったご利益がありそうな魚竜化石を拝んだ記憶があります。(秘宝館Vol.46

 

 

我家のコレクションを種類別に紹介します。

まずはイクチオサウルス

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(画像4)上段の全身骨格は80年代、まだ化石レプリカが珍しかった時代、東急ハンズ辺りで見つけ嬉々として購入したもの。我が家のレプリカコレクションの最初期の物です。60cm程で6、7千円程度だったと思います。なんと木の板をベースにしています。

頭骨2種は「セカイモン」オークションで手に入れたもので左のライムリージス産のものは良くできています。どちらも数千円の物です。

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(画像5)こちらもセカイモンからで、ライムリージス産の口吻が短いイクチオサウルス・ブレヴィケプス(I. brevicepsの全身骨格。約120cmあります。階段の壁に飾っているので正面から写真が撮れず、下の写真は3枚の写真からの合成です。こんな飾り映えするレプリカが、イギリスからの送料も含めてたったの8万円弱。

ちなみにミクロラプトルのレプは、あんなに小さくて立体感も無く羽毛など描いてあるだけなのにミネラルショーで12万円もしてとても買えませんでした…比べるのもなんですが。
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(画像6)これもライムリージスのイクチオですが、どうやら台湾で制作されたようです。約70cm。ミネラルショーで購入。立体的で生々しい見事な産状レプリカです。これで4万円程とは嬉しい!。

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(画像7)イクチオサウルス実物化石。椎骨の右二つはライムリージス、残りの椎骨と歯はロシア産です。下段の見事に関節した尾椎と基後頭骨と呼ばれる頸椎とつながる骨はライムリージス産。どれも一見高価そうですが、尾椎はヤフオクで多分2万円弱、それ以外はミネラルショーで3千円から7千円くらいだったと思います。

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(画像8)ドイツのホルツマーデン産イクチオサウルスの鎖骨・鳥口骨(?)・上腕骨。プレートの表裏です。数年前のミネラルショーで発見。見事な物ですが同時に購入したもっと凄いものが…後程紹介します。

 

中国の魚竜

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(画像9)これはトレンドな魚竜です。カードにはキンボスポンディルス・アジアティクスと記されていましたが、これは現在ではGuizhouichthyosaurus貴州イクチオサウルス)のシノニムとされています。そしてこの貴州イクチオサウルスこそ、昨年話題になった、タラットサウルスを飲み込み損ねて死んで化石となったあの“凶暴”魚竜なのです。

 

・ログミー

https://logmi.jp/business/articles/323258 (所々誤り有り)

AFPBB

https://www.afpbb.com/articles/-/3300321

 

この頭骨は70cmほどですから、見つかった化石よりはひとまわり小さい個体でしょうか。

 

このような事が判ったのも、今回魚竜特集の為にいろいろと調べた成果です。ちょっと得した気分です。それにどうでもよい事ですが、貴州竜=ケイチョウサウルスなのでてっきり貴州はケイチョウかと思っていたら、Guizhou(ギューザオみたいに聞こえます)でした。ひとつ物知りになりました。ではケイチョウは何なんだという疑問は残りましたが。

 

そしてこれに関連してもう一つ大発見が!

餌になったタラット(タラト)サウルスです。タラットスクス(海ワニ)、タラットアルコン(巨大魚竜)は知っていましたがタラットサウルスはかすかに聞き覚えがある程度、何の知識も無かったので即検索です。(ちなみにThalatto は「海の」という意味だそうです) 

https://ja.wikinew.wiki/wiki/Thalattosaur

http://palaeos.com/vertebrates/diapsida/thalattosauria.html

英語版の直訳の様でよく判りませんでしたが、他も検索した結果、どうやら主竜形類の様です。異論もあるみたいですが。さらにこのような画像が

https://www.wikiwand.com/en/Gunakadeit

https://www.semanticscholar.org/paper/A-juvenile-specimen-of-Anshunsaurus-LIU-%2C-1999-(-%3A/3d1d959b5280d496ede19334dfd0503a2b2432c3

…ビックリしました。

これと似ていると思いませんか?(画像10)

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これは15年位前、ヤフオクでケイチョウサウルスの群れに紛れて出品されていたのを見つけ落札した物。当時はミクソサウルスだと思って頭骨辺りを少しほじくったりしたところ、歯など様子が違うのでおかしいとは思ったのですが、そのままになっていました。もしこれがタラットサウルスだったら我が家にあってはいけない代物なので、興味のある研究者の方がいらっしゃいましたらご一報ください。研究材料として提供いたします。

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(画像11)ミクソサウルス・レプリカ

廊下の左右に飾ってあるもの。大きい方で85cm程あります。実際の色はもっと黒くケイチョウサウルスと同様の「貴州色」です。これらもミネラルショーで4万円ほど。

 

さて最後にとっておきの魚竜化石をご覧ください。

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(画像12)ホルツマーデン産ステノプテリギウス

(画像8)と一緒に購入した物です。頭骨の一部ですが、右上に立派な強膜輪が残っています。一目見てびっくり、さらに値札を見て2度ビックリ!なんと、たったの5万円。周りに先を越されないよう慌てて買いました。こういう掘り出し物を見つけるのがミネラルショーの醍醐味なのです。

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(画像13)これはコロナ直前、一昨年のミネラルショーでゲットしたミクソサウルスの実物頭骨です。下顎が折れ、上顎が無くなっているほかは素晴らしい保存状態で惚れ惚れするほど美しい化石です。7万円ほどしましたが、とてもいい買い物でした。

コロナが蔓延して以来、外国のディーラーが集まる本格的なミネラルショーは開催されていません。あのワクワクする数日間が戻ってくることを願うばかりです。

 

明るい話題もあります。今年は2年ぶりに首都圏で夏の恐竜展が開催されたので喜び勇んで行ってきました。やはり恐竜骨格に囲まれるあの空気は良いものですね。東京ドームシティの「恐竜展2021」は小規模で目新しい展示もありませんでしたが、久しぶりに見るアクロカントサウルス全身骨格の大きさに改めて感動したりして楽しみました。後発のパシフィコ横浜の「恐竜科学展」は展示、演出ともに見ごたえがあるとても上質な展示会でした。「レイン」や他の骨格標本も「影絵」も「シアター」も大満足です。ただオフィシャルグッズで欲しいものが無かったのが残念。仕方なくダコタラプトルのヌイグルミだけ買って帰りました。

190ページもある非常に濃い内容のガイドブックを読んでビックリ!巻末で、この展示会のプロデュースと監修を務めるあの「恐竜くん」が13歳の時に参加した恐竜ツアーの思い出を語っているのですが、実はその「恐竜学最前線・北米ツアー」には私も参加していたのです。当時のアルバムを開いてみたら集合写真で少年恐竜くんと並んで写っていました。

 

考えてみれば私は恐竜くんをはじめ今恐竜界の最前線にいる人たち、カナダで活躍する宮下哲人さん、中国で研究生活を送る黒須球子さん、城西大学博物館の宮田信也さんなどの少年少女時代にお会いしているわけで、もちろん何らかの影響を与えているわけはありませんが、彼らに「こんなヤバイ恐竜ヲタクにはなりたくない」と思われ恐竜熱を冷ます結果にならなかったことは自己評価できます。

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(画像14)夏の恐竜展で仕方なく買ったお土産。

恐竜展2021のオフィシャルでも何でもないモササウルス・3Dペーパーパズル(我家4体目のモサ骨格フィギュアとなった)と恐竜科学展の意外と馴染んできたダコタラプトルです。


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田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。