Vol.57 おうちで「翼竜展」
まずはお詫び。前回の最後、ひどい勘違いをしてしまいました。科学読売の表紙の「科博ティラノ」、表紙にあんなに大きく1958年3月と記されてあるのに、何をとち狂ったか53年生まれで私と双子とか言い出す始末。確かにこのところ視力の衰えが激しいのですがそれにしても…お恥ずかしい限りです。
かくして私の恐竜人生運命説はあっけなく退けられ、この話題は無かった事にする筈だったのですが、何という偶然。つい先日何気なく見たNHKの朝のニュースに紛れもないあの「科博ティラノ」が映っていたのです。仰天しました。1970年に科博から佐賀県立博物館に寄贈され現在に至っているとの事。現存していたのは嬉しい限りですが、このタイミングで現れるなんて…。
ネット検索したところ、なんと、この秘宝館にも度々登場していただいている「恐竜おもちゃの博物館」の館長さんの現地ルポがありました。https://dtmkancho.blog.fc2.com/blog-entry-3673.html
見逃していました。不覚です。
これはもう佐賀まで行ってティラノの前で写真を撮り、7歳の時の写真(新秘宝館Vol.10)と並べるっきゃない。同じポーズなのは言うまでもありません。想像しただけで感動的ではありませんか。いつになるか判りませんが、これで秘宝館最終回のテーマは決まりです。
さて本題。11月の始めの良く晴れた日曜日、恐竜倶楽部の仲間と群馬県立自然史博物館で開催中の翼竜展「空に挑んだ勇者たち」に行ってきました。さすが、映画「飛んで埼玉」で、県境を超えるとプテラノドンが飛んでいたと報告された秘境群馬だけあって、天はどこまでも高く澄み渡り紅葉は眼に鮮やか、とせっかくの自然に眼をやったのは博物館の庭で昼食をとったほんのひととき。後は10時半から3時近くまで暗い博物館の中でひたすら化石見学と、正に恐竜倶楽部の面目躍如でした。(コロナで入場制限があり見学時間も1時間30分と決められていたのですが、招待券も利用して、午前と午後、館内を2巡したのです)
画像1は館内の様子、と言っても主に我が家から出向いているレプリカ達の写真です。前にも書きましたが、普段部屋で埃にまみれているコレクションも、こうして博物館に展示されていると立派なものに見え嬉しいものです。
*写真上中の三畳紀の滑空爬虫類シャロヴィプテリクスは私のものではりませんが、同じ形状をしたタイフーン戦闘機のプラモデル(見事に造りこまれています!)と並べられているのがツボにはまったので紹介します。
で、今回の秘宝館は、群馬の翼竜展に便乗(もっともこの記事がアップされる頃にはおそらく終わっていますが)して我が家の翼竜コレクションを集めた「おうちで翼竜展」です。
本家同様、私の部屋も天井から沢山の翼竜がぶら下がっています。カイトやらヌイグルミやらはばたく物やら骨格模型と様々ですが、何故かプテラノドンばかりです。(画像2)
*今回紹介する翼竜たちは、これまでの秘宝館に脇役として登場しているものも多いのでそちらも併せてご覧ください。また取り上げられなかった小さな物、例えば食玩とか消しゴムとかの類は無数にありますが、探し出すのさえ困難なのであきらめた次第です。ちなみに海洋堂ダイノテイルズ・シリーズだけでも、アンハングエラ・タペジャラ・プテラノドン・ケツァルコアトルスの4種(プテラノドンはJP3の物も入れると3バージョン)があります。
食玩に関してはこちらが詳しいです。
●「ネイチャーフィギュアのページ」
http://ninjaaquarium.web.fc2.com/index.html
●もちろん「恐竜おもちゃの博物館」にも沢山の翼竜がいます。
こちらから探すのがいいでしょう。
http://www.dinotoymuseum.com/name/nametop.html
*秘宝館でははるか昔、Vol.13でも翼竜特集をしています。
*フェバリットにも各種、プテラノドンとケツァルコアトルスがいます。こちらのHPでご覧ください。個人的にはプテラノドンスクランブルミニモデルがおすすめ。2匹のプテラノドンが争う図は、ありそうでありません。
(画像3)50年代~80年代の古いフィギュア
左の金属製の2体は40~50年代のアメリカSRG製( 秘宝館Vol.1 / Vol.5 )
このメーカーの恐竜は、通常は同じ種類でラージサイズとスタンダードサイズがあるのですが、翼竜だけは嬉しいことにプテラノドンとプテロダクティルスに分かれています。
その横は再三登場のフランスのSTARLUX(70年代・ 秘宝館Vol.6 / 新秘宝館Vol.8 )。蝙蝠スタイルで羽を休めるプテロダクティルスはかっての図鑑ではしばしばお目にかかりましたが今となってはただただ懐かしい…。
その下はMARX(50年代・ 秘宝館Vol.5 )AJAX(60年代)。
右上は大英自然史博物館(80年代・ 秘宝館Vol.41 )のものと、これは初お目見えかもしれないSAFARIの1988年モノ(後で登場する同社の現在の物と比べてみて下さい)。そしてクローバー( 秘宝館Vol,38 )
右下は食玩で、NABISCO(アメリカ50年代・秘宝館Vol.55)、SHREDDIES(イギリス50年代・ 新秘宝館Vol.8 )、コビト(60年代?)
(画像4)海洋堂ガレージキット(秘宝館 Vol.61 ~ Vol.63)
上段は荒木一成さん、下段は松村しのぶさんの作品。秘宝館初登場の荒木さんのプテラノドン(A、Bとして別個に売られていた)とその右の翼竜セットはいずれも1/35で、ベースは自作しています。翼竜セットには、よく見るとタミヤのニクトサウルス(パラサウロロフス情景セットに付いていた)が混ざっています。ディモルフォドンはミニシリーズのもの。
松村さんのケツァルコアトルスは完成品の100mmモデルシリーズ(90年代初期)http://ninjaaquarium.web.fc2.com/kaiyodo_Kit_Prepaint/dinoland/100mm_model/
のもの。ケツァルコアトルスは当時のトレンドで、ルネッサンスの影響で直立姿勢です。もしかしたらケツァルコアトルスフィギュア第一号かも知れません。そして名作ランフォリンクスと2000年代のコールドキャスト完成品プテラノドン。
(画像5)その他のガレージキットとプラモデル
上の2羽のプテラノドンはいずれもワンフェスが晴海の国際見本市会場で開催されていた90年代前半に購入したものでメーカーは不明。左は翼長80cm、右の物も70cm強と巨大で、レジン製なのでかなり重く、30年近くの間、支柱一本でよくもったものです。左下のプテラノドンとケツァルコアトルスは「ゴブリンファクトリー」(1996年・ 秘宝館Vol.64 )、その下は「えんどるふぃん」のケツァルコアトルス。アステカの神殿の石段から今まさに飛び立たんとする瞬間でしょうか。当時「エンドルフィン」に所属していた徳川広和さんの作品かも知れません。その右のプテラノドン3体はプラモデルで、タミヤ1/35( 秘宝館Vol.58 )、ハセガワJPシリーズ( 秘宝館Vol.61 )、エアフィックス( 秘宝館Vol.58 )。タペジャラは「博物ふぇす2017」で手に入れた完成品です( 新秘宝館Vol.37 )
(画像6)オーロラ風味のプテラノドンを作る
このところ何回かやっている「未組立キット在庫一掃シリーズ」、今回は 秘宝館Vol.57 でティラノを作って以来そのまま放置していた、新オーロラの恐竜三部作の一つのプテラノドンです。オーロラについては Vol.57 を見ていただくとして、結果、こんなおどろおどろしい代物が出来あがってしまいました。
確かに、かってオーロラの製品、特にミリタリーモデルなどは、リアルさを追求するスケールモデラ―からはゲテモノ的扱いをされていましたが、下段の本家オーロラのプテラノドンや Vol.57 の写真をご覧になれば判るように、古生物(モンスターも)の造形は実に見事で、キッチュさを強調したような新プテラノドンとはまるで違います。これはオーロラに対して失礼だと、つい憤ってしまいました。
人が入っているとしか思えない体形とか、右の写真のように上から見下ろさないと成り立たないジオラマとか、困ってしまうキットで、しかも巨大過ぎて(全高43cm!)飾る場所が無いなど、作った事を後悔したくもなりますが、岩場を塗っている時など結構楽しかったのも事実。海と岩場の土台、それに首長竜の体はパッケージに印刷されていた絵なのです。立体と絵の境界の塗り分けなどなかなかうまくいったかなと。
右下は超レア物、オーロラ、ジャングル・スワンプに入っているランフォリンクス。次回の模型製作は、いよいよジャングル・スワンプかなあ…。
(画像7)ジュラシック・パーク・シリーズの翼竜アクションフィギュア
JP関連では、ここで紹介するいわゆるアクションフィギュア以外にも、ミニモデルや食玩など数えきれないほどのフィギュアシリーズがあるのですが(近年ではタカラのアニアまで…)、そちらは新秘宝館 Vol.24 、 Vol25 、 Vol.26 、 Vol.42 、 Vol.43 をご覧ください。
上段はジュラシック・パーク三部作のもの。もっとも最初のJPの時に発売された翼竜は中央の水色のケナー製の物だけ。JP2ロストワールドの時は翼竜は発売されず、他はハスプロ製のJP3のグッズ。JP3では歯の生えたプテラノドンの巨大ケージが印象的でした。タペジャラは映画には出てきませんが、それは言いっこなし。
下段左のディモルフォドンとプテラノドンはジュラシック・ワールドの物。どちらも映画で活躍していました。それ以外はJW炎の王国と、それ以降無限に増殖するフィギュアシリーズの一部で、メーカーはマテルに変わっています。最近では「サバイバル・キャンプ」というTVのCGアニメシリーズのキャラも発売されていて、もはやお手上げ状態。再来年のJW3公開時が恐怖です。
(画像8)セラミック翼竜
一匹を除いて全てプテラノドン!よほどマニアな恐竜シリーズでもない限り、シリーズに加えられる翼竜はまずはプテラノドン。翼竜模型界においては、初期にはランフォリンクスが、現在ではケツァルコアトルスがわずかに健闘はしていますが、やはりプテラノドンが圧倒的シェアを占めているのです。
セラミック翼竜の詳細は新秘宝館 Vol.18 、 Vol.19 で。
(画像9)2000年以降の外国メーカーの翼竜たち
左上:左向きの派手なプテラノドン(BULLYLAND)以外は、今やどこの玩具売場でも見掛けるようになったシュライヒ(SCHLEICH)のもの。なんと3体がケツァルコアトルスで、左から2008年、2000年、2002年の発売です。プテラノドンは2000年発売。今でこそ水色のアンハングエラのように玩具売場にふさわしいたたずまいのシュライヒですが、かっては渋いリアル志向だったのです。
右上:シュライヒとは逆にこのところリアルさを増して嬉しくなるサファリ(SAFARI)。ラインナップも充実しています。
*1988年のプテラノドンと見比べてください。
左下:正に我が道を行くPAPO。魅力的ですが割高なのが難点。
右下:左端のハツェゴプテリクス(知りませんでした…)、隣のケツァルコアトルス(竜脚類の子供をくわえている!)と上空のオルニトケイルスはコレクタ(COLLECTA)。マニアック路線が売り?のコレクタには、大きなサイズの無名の翼竜が何種類かあり、群馬の翼竜展にも飾ってあったのですが、いまいち購入に踏み切れません。となりで群れを成して飛んでいるのはBBCの「プライミーバル」のフィギュアで、シーズン1第5話で、群れを成して人を襲う悪役のアヌログナトゥス。
その下は最近いい仕事をしている中国のメーカーのもの。VITAEのチェージャンゴプテルスとPNSOの小スケールのニクトサウルスです。ニクトサウルスは90年代のタミヤの情景セット(挿入写真)のころは普通の翼竜でしたが、いつの頃からかとんでもない頭になっているので調べたところ、2003年に長い棒状のとさかが発見されたのだそうです。
(画像10)高級翼竜と蛍光翼竜
フィギュアの高級ブランド、サイドショウ(もはやフィギュアではなくスタチューと呼ばれています)のダイナソーリア・シリーズからのトゥプクスアラ。ダイナソーリアの中では小さくお値段も手ごろ(1万円は超えましたが)でした。納得のいく出来栄えです。バックは我が家にあるトゥプクスアラの頭骨レプリカ。なかなかいい絵になったかなと。
もう一つ、思いのほかキレイに撮れたのでお見せることにしたプテラノ骨格蛍光モデル。前々回のステゴサウルスよりも光っています。この模型、メーカーは不明なのですが、腕と脚の関節を差し替えることによって飛行姿勢をとることができるスグレモノで、翼を広げると1.3mにもなります。
(画像11)アート系翼竜
以前載せたものですが、翼竜特集とあれば外すわけにはいきません。切り紙翼竜と新聞紙翼竜。詳細は新秘宝館Vol.21/Vol.26/Vol.31/Vol.37/Vol.51をご覧ください。
(画像12)駄菓子屋系翼竜
ある意味、これが一番秘宝らしいかも。以前、始祖鳥を紹介したことがある「空飛ぶ恐竜ヒコーキ」の翼竜たちです。いつ頃の物かは判りませんが、ケザルコートルスの表記はケツァルコアトルスの和名が定着する前に使われていたものだし、種小名も一緒くたに書かれているソルデスが日本に紹介されたのは70年代後半。ということは昭和の駄菓子屋さん系なのでしょうか。
*ネットにこんなマニアな記事を見つけました。
http://blog.livedoor.jp/divajoanne/archives/1067602711.html
当初の予定では、翼竜本や翼竜映画(かなりのキワモノぞろいで楽しいです。例えばゼロ戦と空中戦なんて話とか、翼竜ではないケツァルコアトルスがニューヨークで大暴れとか)等も紹介するはずだったのですが、余裕が無くなってしまいました。年をまたいでしまいますが、紹介せずにはいられないので次回に回したいと思います。「初笑い!翼竜映画(仮)」です。
今年一年お付き合いしていただき、ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。
最後は久々に登場の19世紀のドイツの版画と、戦前の日本の絵葉書シリーズ「奇々怪々前世界動物」からの一枚です。(画像13)
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田村 博 Hiroshi Tamura
ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。